おしとやかな令嬢ですが、実は私だけ無限にスキルを取得できるので、裏では最強冒険者として暗躍しています

そろそろ洞窟の最深部だ。

この一帯のモンスターのレベルはLV10～15くらいが多い印象だった。

大ネズミ、ダークバット、洞窟オオカミなどどこでも見かける弱いモンスターが中心。

この程度であれば、城下町に被害を与えることはない。

だが、依頼では変異したモンスターが住み着いているという。

その気配を、ついに私の『敵意把握』がつかんだ。

「……この先に、他とは違うモンスターがいる」

私はアルレアにそう伝えた。

「驚いたな。それは『敵意把握』のスキルかい？　適正が出る人間が少ないスキルだ。他にも何かスキルを持っていたりするのか？」

「手の内は教えない。今回は協力しているけど、もしかしたら何かの依頼では敵になるかもしれないから」

「それもそうか。冒険者の行動が予期しない形で王国の利益と対立することはたまにあるからね」

アルレアは頷いて納得したようだった。

冒険者たちが邪魔になることがあるのなら、ギルドを潰せばいいと考える人間もいる。

しかし、王国の利益と王国民の利益はときに一致せず、冒険者が王国民にとっての正義となることも少なくないのだ。

そういった経緯から平等性を保つため、アガル王国の国王は冒険者ギルドを独立した機関として認めている。

国王は聡明な方だ。他の国であれば、冒険者ギルドの独立を認めたかどうか怪しい。

「こっちの『敵意把握』のスキルを開示することで事前に敵を察知できた。見返りにあなたのスキルを一つ教えてもらってもいいんじゃない？」

私はそんな風に訊ねてみる。もちろん却下されるだろうと思っていた提案だが、アルレアは素直に頷いた。

「そうだね。珍しいスキルだと、僕は『幻惑防御Ⅱ』を持っているよ」

『幻惑防御』……だから、赤フードの効果が少し鈍っていたのだとわかった。

私がなぜ赤フードの効果が薄まったのか、疑問に思っていることに気づいたからこそ、アルレアは『幻惑防御』のことを明かしたのだろう。

だが『幻惑防御Ⅱ』程度であれば、完全に姿がバレたわけではないはずだ。比較的弱いスキルである。

「『幻惑防御』はあまり気に入っていないんだ。手持ちのスキル枠が一つ埋まってしまうからね……本当は戦闘系のスキルがもっと欲しかったんだけど、適正があるものが他になくてね」

アルレアはそう言った。

そうなのだ。

実は、一人の人間が保持できるスキルには枠数がある。

通常の人間なら5枠。強いスキル、弱いスキル、適正がないスキルなどもあり、取捨選択をすると、5枠は大体似通ってしまう。

そもそも、5枠分のスキル適正が出ない人間も多い。

だが、私はその点が他の人と違った。

私が最初に適正を得たスキル、それはほとんどの人間が適正のない伝説のスキル、『スキル枠無限』だったのだ。