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「なぁ!竜馬!ミリーと別れるのか? お前が最近冷たいって彼女泣いてたぜ 」
上半身裸で鏡に向かって髭を剃っているジャスティンが、口の周りを泡でモコモコにして竜馬に聞いた
竜馬は読んでいたカジノでジャスティンが「拝借」してきた、今アメリカで人気の雑誌(ピープル)を パンッと閉じて隣に置いた・・・
ジャスティンの部屋の赤いコカ・コーラ―の ベンチに座り、シカゴに来てから10センチ伸びた足を開いて、両手をポケットに入れ・・・ズズズッと前にずり落ちた
ジャスティンに言われたことは図星だった・・・実際今の竜馬はミリーと別れることを何度も考えていた、しかし初めてつきあった女の子はミリーだったし、学校で彼女(ステディ)がいると言う安心感が好きだった
二人は会うたびにセックスをしていたが、それは冷めた料理を食べる様なもので、温め直しても出来たてほど美味しくは感じられなかった・・・
ミリーは二人っきりになったら、絶対キスしてきたりイチャイチャしたがるので、やはりそのまま流されて必ずセックスをしてしまう・・・おかげでセックスには耐久心と彼女をイカすのは上手くなったが・・・いくら肌を重ねても、 初めてのあの感覚はなぜか取り戻せなかった
―自分の方が悪いのかもしれない・・・―
竜馬はミリーに魅力を感じないことに、罪悪感を覚えていた
「なんだ?ミリーに冷めちまったのか?」
「ミリーを嫌いになるヤツなんていないよ・・・」
実際ミリーはとても良い子だった、竜馬に親切にしてくれるし、家族にも会わせてくれた、頭はよかったがガリ勉ではなく、笑顔が素敵だったけどジェニほどではなかった
ジェニのようなミンクのような、艶やかな髪の毛でもなかった・・・彼女の髪は茶色でいつも髪に何か塗っていたり、スプレーでガチガチに固めていたので、髪を触ると手がべたべたするのが嫌だったし、いつもカラーコンタクトをしていてジェニの様に瞳の中の輝く光彩があるような活力もなかった
しかし、その他の点で彼女達は良く似ていた、彼女は自分の二人の姉や医者の両親にも竜馬を紹介してくれた、その時に竜馬をとても褒めてくれたし、ロッカーのラブレターは一通も来なくなって助かっていた
一緒に学校の廊下を歩き、二人でランチを食べて、ルート66のサーティーワンでジャスティン達とアイスクリームを食べた、しかしデートを重ねるたびに・・・少しずつ二人の間に亀裂が入って行った・・・ミリーは風で髪型が崩れるのを嫌がって竜馬の中古のハーレーの後ろには、乗りたがらなかった
ミリーのために車を購入することも検討したが・・・あの女優のレディルビーからもらった時計は ジャスティンのアドバイスで大金に変えて 銀行の金庫に預けてある
あのお金は大学費用に大切に使いたかったので、やっぱり車の購入は却下した、もちろん竜馬の住むアル中カルロスの家に彼女を呼べるわけもなく・・・なのでいつもデートはミリーの家だった、二人が唇と唇を重ねてベッドに倒れ込んでも、いつミリーの姉さんや家族が部屋にやってくるかわからないので、服も脱がずに局部だけを露にして結合した
そしてこれは外国人あるあるで・・・日本人ほど体を洗う習慣のないアメリカ人の体臭を消すために、誰もが香水をつけていた、竜馬は一日一回カルロスが酔っ払って寝付いた頃にしかシャワーは使えず、昼間ミリーとセックスした後は、夜になってシャワーを浴びるまで、ミリーの香水のまじった体臭が自分にいつまでも、まとわりつくのが嫌だった・・・
最近ではミリーとセックスをするのも嫌になり・・・元々スキンシップの習慣のない日本人の竜馬は学校でもどこでもベタベタしたがるミリーを疎ましく思ってしまっていた
そしてそう思う自分にも罪悪感がこみ上げてきていた、そんな竜馬をジャスティンは 悟ったかのように言った
「ふ~ん・・・まぁ・・・別れてもいいんじゃないか?」
「本当にそう思う?」
「しょうがないだろ!こればっかりは、ミリーに(ビビビッ)と来なくなったんだろう?」
「・・・(ビビビッ)って・・・それにミリーはカジノのバイトを 辞めて欲しいって言うんだ・・・ 」
ミリーは医者の両親に大切に育てられ、シカゴの裕福層特有の何も苦労せず、何でも手に入れられる特権意識をすでに持っていた
お金に困ったことなどなく、そこそこの頭で高い大学に両親のお金で入れるし、適当に両親の病院で働いて、適当の年齢で結婚し、数年後に子供を産み、そして子供にも同じ道を歩ませる・・・やはり貧乏学生で毎日働かないといけない竜馬とは、しょせん住む世界の違うお嬢様なのだ・・・
ジャスティンにそう言われて、今まで真剣にミリーと別れることを考えていなかったが、いざ別れようと思うと、竜馬は予想外に心が軽くなった
―そうだ・・・ 別れてもいいんだ・・・―
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てっかまき
33
321
#莉犬くん
みく
27
ミリーは自分の都合のいいように竜馬を変えようとしていたし、竜馬も心からミリーに尽くそうとは思っていなかった・・・
いつか二人の間に、心が通い合う何かがやってくるのを竜馬は待っていたが、ジェニとの間に存在していたような、強い結びつきは、そう簡単に見つかるものではないんだと・・・あらためて思うようになっていた
「・・・どんなふうに話したらいいかな?・・」
そこでジャスティンがディーラーのシャツを着こみ、制汗スプレーを脇に噴きながら、鏡越しに竜馬に言った
「俺達、やっぱりうまく行かないみたいだと正直に言うんだな、どちらのせいでもない・・・ただ・・・自分が望んでいた関係とは違う・・・ってね 」
「うん・・・・分かった・・・ 」
このままではミリーに申し訳ないと真剣に考えてのことだった
竜馬は勇気を出してミリーに別れを告げようと決心した
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「ごめんなさい・・・竜馬、私達・・・やっぱり上手くいかないみたい・・・ 一緒に過ごした時間はとても楽しかったわ・・・ ただ・・・ 私が望んでいた関係とは違うの・・・」
数日後、ミリーに校舎の裏に呼び出され、竜馬は別れ話を切り出された、あまりにも突然で目をパチクリした、今やミリーは両目に涙をいっぱい溜めて、悲劇の主人公気を気取ってハンカチで目尻を押さえている
「う・・・うん・・・わかった 」
竜馬はバカみたいにその場に突っ立って、自分が言おうと考えていたその言葉を、そっくりそのままミリーから受けていた
ヒック・・・「ごめんなさい・・・竜馬・・・ あなたが悪いんじゃないのよ 私のせいなのよ・・・私がいけないの・・・・」
大粒の涙を流すミリーは、どこか芝居くさいなと感じながらも、竜馬は慎重にミリーの別れの言葉に耳を傾けた、ミリーも自分達の間には何かが欠けていると感じて悩んでいたのだろうか・・・
竜馬は彼女の言う事を素直に聞き入れ、 一言も反論しなかった、なぜなら内心ホッとしていたからだ、竜馬はミリーの背中を優しく撫でてグスグス泣く彼女を、校門まで送っていった
そこで立ち止まって見つめ合った・・・いつもならすぐ抱きついてくるのに、ミリーがさよならのキスをする気がないのを、ありがたく思った
「え~と・・・元気でね・・・」
今の気持ちをどう表現すればいいかわからなかったので、ありきたりな言葉しか出なかった
「さようなら・・・竜馬・・・・ あなたは私の青春だったわ・・・」
風が吹き・・・ミリーの瞳も涙に濡れていた、ハンカチで鼻を押さえてミリーは去って行った
ミリーが走り去った先には、シルバーのセダンが止まっていた、ミリーは顔を押さえてそのセダンの助手席に乗り込んだ、運転席の男が泣くミリーの肩を抱き慰めていた
―あれは・・・・たしか・・・・ミリーと同じクラスのフットボールの選手のエドワードだ・・・―
竜馬はエドワードと話したことはなかったが、彼の存在は知っていた
「・・・そういうことか・・・」
なぜか自分がフラれたような感じになっているが、ちっとも嫌な気持ちはせず、むしろ笑い出したい気持ちだった、なので本当に声を出して笑ってしまった、ここ数日間、重い気持ちで色々別れの言葉を考えて彼女を傷つける自分を責めていた
「あははははっ!・・・あ~あ・・・」
竜馬は久しぶりに晴れやかな気持ちでハーレーを運転した
これからは何をするにもミリーの事を考えなくていいし、ドラッグストアの店員のおばさんにジロジロ睨まれながらコンドームを恥ずかしい思いをして、買わなくてもいいんだ
自分のしたいようにすればいいんだ
ハーレを疾走し、全身に風を受けて、竜馬は独り者の自由を存分に楽しんだ
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コメント
1件
うわあ、ミリーの方から別れを切り出されて、しかも竜馬が内心ホッとしてるのが伝わってくる…。言おうと思ってたセリフをそのまま返されるの、皮肉だけどリアルだな。最後にハーレーで風を切って走るシーン、すごく解放感があって、読んでるこっちまで息がしやすくなった気がした。ミリーの芝居がかった涙とエドワードの存在も、なるほどなって伏線の効かせ方上手いね。