…夢を見た。
あの後、俺は「夜も遅いから」と帰ろうとしたら、なぜかマイキーに「泊まって」とねだられた。
だから、久しぶりに一夜を関東卍會のアジトで越したのだ。
そんな時に、久しぶりに見た、夢。
…最悪の夢。
…俺に、どうしろって言うんだ…。
降り立った場所は、どこもかしこも真っ黒な箱の中のようだった。
そして、ものすごく寒い。
まるで、吹雪の中で滝行しているようだった。
確実に、生きている者が感じられる温度ではないことは確かだ。
そんな時だった。
目の前にフッと額縁が現れた。
その縁は真っ黒で、黒いリボンで少しだけ装飾してあった。
俺は直感で感じる。
…これ、葬式の場とかにある…。
その外側に、数枚の写真が出てきた。
その写真は、どれも顔が黒く塗られていて、自分で推測するしか方法は無いように感じた。
しかし、段々と光が入る。
俺はその顔を見て絶句した。
…どの顔も、全部友達だ…。
マイキーはもちろん、千冬も、ドラケンくんも、三ツ谷くんも、溝中メンバーも。
みんな、みんな。
俺は、この中からとか絶対に選べない。
その時、額縁に目が行った。
そうだ、俺があそこに入れば…。
そう思って額縁に手をかけた時、急に力が入らなくなった。
そこで、俺の視界は暗転した。
その時に、鎌を持った何者かが―――
「っっ!!!!はぁ、はぁ…。」
俺は焦りと恐怖で目が覚めた。
隣ではマイキーが寝ている。
…彼にとって睡眠は貴重だろう。
俺は起こさないようにベッドから降りて、早朝だが大広間に向かった。
俺がそこへ行くと、もうすでに誰かが起きているようだった。
向こうから何か音がする。いや、食器の音か?
昨日の片付けかな…。
俺はそう思って手伝いに行こうとそこへと向かった。
「あのー、手伝うよ?」
俺がそう言うと、その人…
「お、タケミチ起きたか、おはよ。」
…カクちゃんだったか。
「うん、ちょっと…いや、なんでもない。」
俺は夢のことを言おうとしたが、言うべきではないなと思い、すぐに取り繕った。
「俺も手伝う。」と言って俺はカクちゃんの手伝いを始める。
「でも、カクちゃん、炊事系できるんだね。できないかと思い込んでた。」
「は!?それひどくね!?一応イザナの朝飯作ってたんだけど!!」
「ごめんって、意外だったから言っただけで…。」
「…それはよく言われる。」
そう言うと、カクちゃんは「なんで意外って言うのかなぁ…。」と一人うなっていた。
「…なんか見た目から不器用そうだからじゃ?」
俺はそう言う。
…悪気は半分ある。
「見た目からってひどすぎな?」
カクちゃんは案の定の反応をしてくれた。
でも、こうして過ごす朝もいいな…。
「なんでだ?」
カクちゃんがいきなり言う。
「え?声に出てた?」
「うん。」
…穴が無くても潜りたい。
俺は顔を両手で覆った。
「…w、ほら、さっさと済ませてお茶でも飲もうぜ?久しぶりに二人で話そう。」
それを聞いて、俺はすぐに立ち直り「がんばる!」と意気込んだ。
…カクちゃんはそれを見て、「豹変しすぎだろ…」と引いていたが。
「食器の量多すぎる…過労死しそうだわ…。」
「お疲れ様だね、お互い。」
俺らは食器を片付けた後、自分たちの分のお茶を淹れて、隣同士で座っていた。
「そうだ、お前さ、何言いかけてたの?」
「…悪い夢見たってだけ。」
俺はそう言うと、お茶へと目を落とした。
その時だった。
「いや、なんかあった。大体さ、分かりやすすぎるんだよ、タケミチは。」
そう言うと、カクちゃんは俺のことを抱き締めて、優しく言ってくれた。
「なんでもいいから、話してくれてもいいんだぜ?」
その時に、何かの線が切れた気がした。
全部、カクちゃんに話した。
カクちゃんは、ただただ静かに聞いてくれた。
俺が泣いても、収まるまで待ってくれた。
全部話し終わったとき、カクちゃんは「ちょっとそいつブッ飛ばしてくる」と言っていた。
俺はというと…ボロ泣きだ。
その時、マイキーが部屋へと入ってきて、俺の顔を見てカクちゃんをひたすらに疑って、俺が弁明して…。
もう、てんやわんやだった。
いろいろ誤解を解き終わった後…。
「そういう時は起こしていいんだぞ?」
と、マイキーが若干の怒気を込めて言った。
「いや、別に起こしたくないわけじゃなくて、マイキーも寝たいだろうな~って。」
俺がそう説明すると、マイキーは「そ。」とそっぽを向いた。
…あとでどら焼きとたい焼き買ってあげよう。
「これは旗付きオムライス作んなきゃかもな。」
カクちゃんは俺にだけに聞こえる声でそう言って苦笑いした。
…今日も、アジト内は平和だ。
マイキー殺害まで あと 17日
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