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まぶたの裏に朝の光が滲む。それでもまだ眠っていると、頬に柔らかい感触が触れた。
何度か、つんっと軽く押される。
くすぐったさに目を開けると、すぐ近くに冬馬さんの顔があった。
「…冬馬さん?」
俺がそう言うと、冬馬さんはニコっと笑う。
「おはよう。春人」
「…おはようございます」
俺はそう言った後、欠伸をする。
「春人。まだ眠い?」
「いや。眠くないです」
「じゃあ、朝ごはん食べる?」
「そうですね。そうします」
俺がそう言うと、冬馬さんは起き上がる。そんな冬馬さんは服を着ていない。
「ちょっと待ってて」
冬馬さんはそう言ってどこかへ行く。しばらく待っていると、部屋着を着た冬馬さんが服を持ってこっちへ来る。
そして、手に持っていた服を俺に差し出す。
「シャワー浴びて来な。その間に朝ごはん作っとくから」
「朝ごはん作ってくれるんですか?」
「うん。聞かれる前に言うけど、俺の手料理食べさせるの、春人が初めてだから」
冬馬さんはそう言った後、急に恥ずかしくなったのか目を逸らす。
「それは嬉しいですね。ありがとうございます」
「ん…早くシャワー浴びて来な」
冬馬さんはそう言ってキッチンへ向かう。俺はそんな冬馬さんにふふっと笑った後、ベットから出た。
シャワーを浴びて、体を拭く。冬馬さんの部屋着を着ると、ほのかに冬馬さんの匂いがした。
(いい匂い…)
冬馬さんの匂いを感じていると、ふと、焼き魚の匂いが漂う。
(ご飯出来たのかな。すげぇいい匂い。早く食べたいな)
そう思った俺は肩にタオルを掛け、髪を乾かさないまま洗面所から出る。
「めっちゃいい匂いします」
俺がそう言って冬馬さんの元へ行くと、冬馬さんは俺の様子を見て俺に駆け寄る。
「ちょっと春人。すぐ髪乾かさないと風邪引いちゃうよ」
冬馬さんはそう言って俺の肩に掛かったタオルを手に取り、そのタオルで俺の髪を優しく拭く。
「すみません。すげぇいい匂いしたんで早く食べたくて」
「もう。俺が乾かしてあげるから、ね?」
「いいんですか?」
「うん。朝ごはん、もうほとんど出来てるし」
「じゃあ、お願いします」
「うん。そこ、座ってて」
冬馬さんはそう言ってニコっと笑った。
温かい風が髪を揺らす。後ろのソファーに座る冬馬さんの指が濡れた髪をゆっくり梳いていく。その感触がなんだか心地良い。
(なんか、好きかも)
しばらくすると、ドライヤーの音が消え、冬馬さんは俺の頭を撫でる。
「はい。終わり」
「ありがとうございます」
俺は振り向いてそう言った後、冬馬さんの頬にキスをする。
「うん…」
冬馬さんはそう言いながら頬を赤らめる。俺はそんな冬馬さんにふふっと笑った後、卵焼きと味噌汁が置かれた食卓のイスに座る。
「美味そう」
「美味しいといいけど」
「これは絶対美味いです」
「食べてみなきゃわかんないでしょ?」
「そうですね。早く食べましょう」
「今、魚取り出すね」
冬馬さんはそう言って魚焼きグリルから焼き魚を取り出し、食卓に並べる。ご飯もつぐと、冬馬さんはイスに座った。
「じゃあ食べよっか」
「はい。いただきます」
俺は卵焼きを箸で掴み、口へ運ぶ。
「ん〜!これ、だし巻きですか?」
「うん。白だしの」
「めっちゃ美味いです」
「ありがとう」
冬馬さんは照れたようにそう言った。
続けて、味噌汁を飲む。
「ん!美味いです!」
そして、焼き魚も口に運ぶ。
「ん〜、うまぁ〜」
「良かった。まぁ、それはただ焼いただけだけど」
「焼き加減最高です」
俺がそう言うと、冬馬さんは嬉しそうに笑う。
「春人は褒め上手だね」
「いや。全然。思ったこと言っただけです」
俺がそう言うと、冬馬さんの頬が赤く染まる。
「…いただきます」
そう言って食べ始める冬馬さんに俺は笑みがこぼれながらも再び卵焼きを口に運んだ。
朝食を食べ終え食器を片付けた後、冬馬さんが言う。
「俺、シャワー浴びてくるね。春人はゆっくりしてて」
「はい」
俺がそう返事をすると、冬馬さんは風呂場へ向かう。
その後ソファーでゆっくりしていると、洗面所から冬馬さんが出てくる。冬馬さんはタオルで髪を拭きながら、俺に近づく。
「次、春人の番」
そう言って冬馬さんは俺にドライヤーを差し出す。
「はい」
俺はそう言って冬馬さんからドライヤーを受け取った。
温かい風が冬馬さんの髪を揺らす。その髪を指で梳いていく。しばらくして乾かし終わると、ドライヤーの電源を切り、柔らかい髪をそっと撫でた。柔らかい髪を撫でていると、なんだか心地良くてずっと触っていたくなる。
「ねぇ春人」
冬馬さんはそう言いながら俺を見上げる。俺はそんな冬馬さんの顔を除き込んだ。
「なんですか?」
「今からデートしない?」
「デートですか?」
「うん。映画でもいいし、どこか買い物でもいいし。春人が好きなことしたいな」
「好きなこと…」
俺は少し考えた後、口を開く。
「じゃあ…」
——数時間後。
休日で賑わう動物園のゲート前。
チケット売り場の前には家族連れやカップルが並び、子どもたちのはしゃぐ声が響いている。
「よし、じゃあ入ろっか」
冬馬さんはそう言って歩き出す。俺はそんな冬馬さんのあとに続いた。
入場ゲートをくぐると、様々な動物が見える。
「あっ。見て、春人」
冬馬さんはそう言いながら歩き出す。冬馬さんが立ち止まり、檻の中を見る。俺もあとに続いて檻の中を見ると、そこにはライオンがいた。
「かっこいいですね。ライオン」
「そうだね。かっこいい」
そう言って冬馬さんは笑顔でライオンを見る。そんな冬馬さんを見ていると、冬馬さんは再び歩き出した。
「見て!レッサーパンダだって。可愛い!」
冬馬さんは楽しそうにそう言う。
「ホントですね。可愛い」
「あ!こっち来た!」
冬馬さんは嬉しそうにそう言う。俺はそんな冬馬さんを見て、スマホを取り出す。
カメラを起動した後、楽しそうにレッサーパンダを見る冬馬さんを映し、録画ボタンを押した。
ピコンという音で冬馬さんが気付き、スマホを見る。
「あっ。春人、動画撮ってる?」
「はい。可愛いんで」
「かわっ…それって、レッサーパンダの話?」
冬馬さんはわざとらしくそう聞く。
「え?なんです?言って欲しいんですか?可愛いのは冬馬さんだって」
俺がそう言うと、冬馬さんは頬を赤く染める。
「…レッサーパンダの方が可愛いし」
「いや。冬馬さんの方が可愛いです」
「春人のバカ」
冬馬さんはそう言って歩き出す。俺は録画停止ボタンを押し、冬馬さんの隣へ駆け出した。
「冬馬さん?」
「なに?」
「可愛いですね」
「もう!一回黙って!」
冬馬さんはそう言って立ち止まり、俺の口を両手で塞ぐ。俺は口を塞がれながらも「可愛い」と言ってみる。
すると、冬馬さんは諦めたように俺の口から両手を離し、頬を膨らませて言う。
「このギャップ萌えイケメンが」
(ギャップ萌えイケメン…?)
「なんて言いました?ギャップ萌え?イケメン?」
「可愛い顔して実は狼な春人くん」
「じゃあ、冬馬さんはイケメンだけど実は超可愛い猫ちゃんですね」
「何それ。やめてよ。俺カッコ悪いじゃん」
頬を膨らませてそう言う冬馬さんに俺はふふっと笑う。
「じゃあ、イケメンで襲い狼な冬馬さんで」
「それもなんかやだ。俺はイケメンってだけでいいの」
「分かりましたよ。イケメン冬馬さん」
「そう。それでいいの。可愛い春人くん」
冬馬さんはそう言ってニコっと笑い、再び歩き出した。
その後色んな動物を見ながら時々お互いの写真や動画を撮ったりする。
動物園を楽しんだ後、動物園と繋がっている遊園地の観覧車を見上げて冬馬さんが言う。
「最後に観覧車乗っていこうよ」
「いいですよ」
俺がそう言うと、冬馬さんは観覧車に向かって歩き出した。