テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第一話:『月下の侵入者』
二十一世紀、欲望が渦巻く東京。その中心部にありながら、外界の喧騒を拒絶するように鎮座する「九条邸」。高い塀に囲まれたその敷地は、最新の赤外線センサーと、古来より伝わる「鳴子」の如き物理トラップが融合した、現代の迷宮であった。
「……ふう」
深夜二時。月光を背に、屋敷の瓦屋根を滑る影があった。現代の忍び、「楓(かえで)」。
漆黒のタクティカル・スーツは、彼女のしなやかで引き締まった肢体を露骨に浮き彫りにしている。腰には家宝の小太刀を帯び、その琥珀色の瞳は、獲物を狙う猛禽類のように鋭く、冷徹に光っていた。
今回の任務は、政財界のフィクサー・九条宗次郎が隠し持つ「裏帳簿」の奪還。里の存亡を賭けた、極秘の指令である。楓は音もなく中庭へ舞い降りると、重力を無視したような跳躍で防犯レーザーの網を潜り抜けた。彼女にとって、警備員や監視カメラなど、止まっている景色も同然だった。
「簡単なものね。入ったら二度と出られないと言われた九条の館も、この程度なのね……」
本館の最深部、重厚なマホガニーの扉を解錠し、楓は書斎へと滑り込んだ。
デスクに置かれた漆黒の端末。彼女は慣れた手つきでハッキングデバイスを接続した。進捗を示すプログレスバーが、静寂の中で淡い青光を放ち、データの吸い出しが始まる。
だが、その時――。
カチリ、という微かな金属音が、静寂を切り裂いた。
「客人が来るとは聞いていたが。よもや、これほど美しい『雌猫』が紛れ込むとはな」
楓の背筋に、氷の柱を叩き込まれたような戦慄が走る。
気配がなかった。超人的な聴覚を持つはずの自分が、背後を獲られるまでその存在に気づかなかった。
楓は即座に振り返り、腰の小太刀を抜き放とうとした。だが、その指先が柄に触れるよりも早く、部屋の四隅に設置された小さなノズルから、「シュウ……」という微かな噴射音が響き渡る。
「……!? 煙幕……?」
「いや、もっと性質の悪いものだよ。現代科学の粋を集めた神経作用剤と、古来の淫薬を掛け合わせた特製の媚薬ガスだ。無味無臭だが、君の強靭な自制心を内側から溶かすには、十分すぎる量だよ」
九条宗次郎が、暗がりのソファからゆっくりと立ち上がった。仕立ての良い三つ揃えのスーツを纏い、手にはブランデーグラス。その双眸は、獲物をいたぶる愉悦に満ちている。
「なっ……くっ……!」
楓は咄嗟に呼吸を止めたが、手遅れだった。ガスは皮膚の粘膜からも吸収され、瞬時に血流に乗って脳を焼く。
視界が急激に歪み、心臓の鼓動が耳元で爆音のように鳴り響く。下腹部から突き上げるような熱い疼きに、楓は膝をついた。
九条が指先を鳴らす。その瞬間、天井の梁から、ジャラリ……と冷ややかな金属音が降り注いだ。
「なっ……!?」
楓が上を向いた時には遅かった。特殊超合金で作られた、細くも強靭なチェーンが、まるで意志を持つ蛇のように彼女の身体に襲いかかった。それは単に重いのではなく、関節の一つ一つ、指の一本一本を狙い澄ましたかのように、複雑な螺旋を描いて絡みつく。
「くっ、あ……っ! 離れ……なさいっ!」
楓は身を捩って逃れようとするが、それが罠だった。この鎖は、対象が動けば動くほど、その反動を利用して締め付けを強める「自動捕縛機構」を備えていたのだ。右腕が背後に回され、左足が不自然に跳ね上げられる。数秒のうちに、楓は書斎の床の上で、M字に近い屈辱的な姿勢で完全に固定されてしまった。
「……熱い、身体が……溶ける……」
ガスの影響で、肺から吸い込んだ熱が下腹部へと集まっていく。意識が朦朧とする中で、超合金のチェーンが肌に食い込む冷たさだけが、異様に鮮明な刺激として脳に伝わる。鎖が関節を圧迫するたび、火照った肌には耐え難いほど甘美な痺れが走り、彼女の忍びとしての理性を削り取っていく。
「ふむ……。効果が出るのが、予想以上に早いな」
九条が悠然と歩み寄り、床に転がされた楓を見下ろした。
楓の呼吸は荒く、漆黒のタクティカル・スーツの下で、彼女の身体は異常なほどの熱を帯びていた。
「……っ、あ……やめ……」
楓が顔を背け、身悶えするたびに、鎖がギチリと音を立てて彼女を締め上げる。
九条の視線が、楓の股間付近へと注がれた。
漆黒のスーツの、股の合わせ目の部分。そこが、内側から溢れ出した愛液によって、無残なほどに色濃く濡れ染まっていた。媚薬によって強制的に暴走させられた雌としての本能が、忍びの防護服さえも凌駕し、隠しようのない「屈服の証」を表面に浮きだたせていたのである。
「ほう。口では威勢のいいことを言っても、身体は正直なものだ。スーツを汚すほどに潤うとは……よほど、私の『歓迎』が気に入ったと見える」
「ちが……これは……ガス、の……せい……」
楓は必死に否定しようとしたが、九条がその濡れたシミを革靴の先で軽く圧迫した瞬間、彼女の背筋は弓なりに反り、喉の奥から獣のような嬌声が漏れた。
「無駄だ。その鎖は君の筋力や動きを計算し、常に最適な強度で君の『自由』を奪い続ける。もがけばもがくほど、その細い肢体は自分自身の手で縛り上げられ、愛液を絞り出すことになるのだよ」
九条は跪き、鎖の間から覗く楓の白いうなじに、冷たい指先を滑らせた。ガスの効果で過敏になった神経に、わずかな接触が電流のような衝撃となって駆け抜ける。
「あ……ぁ、やめ……逃がし……て……」
「逃がさない。君は今日から、私の飼い猫だ」
九条は、身動きの取れない楓を、鎖ごと強引に引きずり寄せた。現代の闇を駆ける一輪の楓は、絡みつく銀色の蛇と、逃れられぬ欲情の渦へと、深く、深く引きずり込まれていった。
地下の調教室へと運び込まれた楓。密閉された空間で、ついにタクティカル・スーツが切り裂かれ、彼女の露わになった素肌を九条の冷徹な手技が責め立てる。鎖に繋がれたまま、彼女の誇りは快楽の濁流に呑まれていく。
次回、第二話:『綻びる理性』