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その後母が仕事に行く時間になり、家には私1人だけとなった。普段は姉弟達が騒いでいてうるさい家の中も今は静かで、まるで自分の家が家じゃないかのように思えてしまう。

孤独が嫌い。

人といるも嫌い。

静か過ぎるのは嫌い。

うるさすぎるのも嫌い。

それでも、1番嫌いなのは矛盾ばかりの私。

結局私はなにがしたいのだろだろう。

何の為に生まれてきたんだろう。

そんな事がひとつひとつ私の胸の奥深い場所に落ちて、重くなる。

泥のように重く汚い悩みは、いつか私を飲み込んで大きくなり、私も泥になって白菊鈴音わたしを消し去るのかもしれないと。

そんな不安が日々募っていく。


戻りたい。

人の悪をを見ていない、知らない……誰とでも仲良くできて友達とただただ一喜一憂していた白菊鈴音ワタシ成りたい。

きっとそう思ってしまうのは、私が悪を知って変わったから。

醜い人間になったから。


休んだ日は、いつも私はお昼になるまで漫画を見たり、絵を描いたりなどの趣味をして時間を潰している。

勉強をしようと思って勉強机に行ったけど、前に勉強をしようとしたら視界がグワングワンしてきたり、吐き気が出てきたりで出来ない。

それに、あの日のことを強く思い出してしまったことが何度もあってから、それを出来ずにいる。

私は静かな部屋に1人、黙々と絵を描いていた。

絵の中の子はキラキラな笑顔で笑う。

私もこんな風になりたいとよく思ってしまう。

でも、この子達にはなれないことなんて分かりきっているから、その子に少し嫉妬しながら完成させる。

絵の中の子に嫉妬するなんて聞いたことないけど、絵を描いてる間は時間や現状を一時的に忘れられるから。

苦しくても、辛くても、描き続けてしまう自分がいる。

好きってほんとに恐ろしいとつくづく思う。


ジリジリジリジリ──────────


12時を知らせるタイマーの音が部屋中に聞こえる。

私は絵を描く間、時間を忘れて作業するので1時間ごとに水分補給の為にタイマーをつけている。

タイマーと言っても、使わなくなった目覚まし時計だけどね。

そして今の時間は先程も言った通り12時。

母はいつもお昼休みの時は家に帰ってくる。

その連絡は毎回12時過ぎにかかってくる。

だからこの時間はどうしても少し身構えてしまう。

だって──────────


プルルルルッ、プルルルルッ


その音が部屋中に鳴り響き、私はすぐに鳴っている家の電話を取る。

少し張り詰めた空気の中、電話の主である母の「もしもし、鈴音?」という声聞こえてきた。

そして、その時の母が少し暗い声であること、今機嫌が少し悪いことを瞬時に理解した。

母は看護師で、少しした失敗をすることがたまにあるらしい。

そうゆう時は大体声がいつもよりも暗いことが多く、 虫の居所が悪いので、私は母の怒りに触れぬよう心掛けている。

「もしもし、お母さん。どうしたの?」

そう丁寧に聞き返すと、「お母さん、今から帰るからね」と少し柔らかい声を意識して言っているのがわかった。

イライラしてるようだけど、それを抑え込んで言っているのが声ですぐにわかった。

でもそのお陰で、今日は比較的マシな方なのだと理解できた。


母は怒るとすぐにヒステリックになり、当然のように暴言を吐いたり大声で怒鳴り、暴れ始める。

その時の姿や雰囲気は普段とは全くの別人で、一度スイッチが入るとわがままで自己中で自分の思い通りにならないと気が済まないという感じの人間だった。

怒りでいっぱいな母に優しさなんてものはなく、偶に子供みたいに騒ぎ立てる母が親だとは思えない程に。

全て自分の価値観で判断し、周りの意見も全く聞き入れず、只々私や兄弟の小さな失敗を指摘して、それを燃料として暴れる。

とてもじゃないが、耐えられなかった。

話す度に怖くて仕方がない。

またあの怒声を浴びてしまったら、暴力を振られてしまったら、私は今度こそ壊れてしまうのではないかと。

私だけじゃない。

姉弟の誰かが先に壊れてしまうのではと恐れていた。

そんな場所を目撃したくない、そうなって欲しくないという思いが日々の募っていくばかりで、動けなくなる。

身内から受ける呪い罵詈雑言や暴力ほど怖いものはない。


だからこそ、会話を終わらせるように「気をつけて帰ってきてね」と言おうとした次の瞬間、別の話題を提示され、言葉を遮られた。

このパターンは長いこと質問攻めされる感じだ。

私は「ご飯はもう食べた?」と母に聞かれたから素直に「ご飯はもう食べたよ」と言った。

その後も会話は続いた。

体調はどうなのかとか、先程は何をしていたのかというものばかり。

一見心配してるように見えるけど、小声で「あんたはいいよね、そうやって休めるんだから」と罵倒の言葉を織り成してくる。

何時まで続くのか、私は何時までこうしていればいいのだろうか。

母はいつ満足するのだろうか。

会話を切ろうと思っているが、話の途中でじゃあねと言う様な行動力は私にはなくて、早く終われと心の中で願うばかりだった。


「じゃあお母さんそろそろ家に帰るから。大人しくしてなさいよ」

「うん、じゃあね」

そう言って、10分近く続いた会話がやっと終わった。

息をとめて話していたようなものだから、どっと疲れがきた。

でも、時間は私のために止まってはくれない。

母はもうすぐ帰ってくる。

地獄が、息が詰まる時間がまた来る。

「嫌だなぁ…」

そんな言葉が口から零れ落ちる。

一人でいるのは嫌だけど、人といても辛いことばかり。

私はあの日から人の顔色ばかり伺って、自分の意見を素直に言えない。

そんな私だから姉からも「人に遠慮しすぎ」だと言われ続ける。

だって仕方ないじゃん。

怖いものは怖いもの。

自分の意見をはっきりと言って、もしそれが受け入れられなかったら?

受け入れられなくて他の人から突っぱねられるのは自分。

それなら最初から自分の意思など言わなければいい。

他の人の意見を尊重して、自分の意見も最初からそうだと塗り替えてしまえばいい。

そう思ってしまうのは、そんなに駄目なことなのだろうか。


ガチャン


玄関からそんな音が聞こえる。

そんなことを考えている内に時間は結構経っていたから母が帰ってきてしまった様だ。

お母さんの荷物を受け取るために、私は玄関へと急いで行く。

玄関に来ていなかったら「迎えにも来てくれないんだね。いいご身分だこと」とまた言われてしまうから。

そうなると、最悪滝のように無限に湧き出てくる罵詈雑言を浴びせられてしまうから。

私がいつものように「おかえり」と言うと、母は疲れた顔で「ただいま」と言いながら靴を脱ぎ捨て、私を見ること無く家に入った。

その後、お母さんのご飯を用意してご飯を食べてもらった。

作っている時も、食べている時も誰かの愚痴を零していた。

私はそんな母を肯定する言葉を並べる。

そうすると機嫌が少し治ったのか、そのまま居間で寛いだくつろ

その間に私はお母さんが食べたお皿を洗ったり、乾かしていたお皿を片付けたりとちょっとした家事を行った。

今やらないと忘れてしまうからという理由と、母と共にいる時間を少しでも減らしたいというせめてもの抵抗からきていた。

我ながら馬鹿だとは思うが、物理的にでも母といる時間を減らさねば自分の考えもあの人と同じになる気がして嫌だったから。

もう既に影響されているかもしれないが、同じようになりたくない。

血には抗えないと言うが、もしかしたら私はそうならないかもという願望に縋る他無かった。






あの夏の日、君は突然消えた。

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