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週明けのオフィスは、まだ先週の社内イベントの余韻に包まれていた。山下葵はデスクに座りながらも、ふとした瞬間に風滝涼の笑顔が頭をよぎるのを感じていた。彼との距離が近づいたことで、仕事中の集中力も少し変わったようだった。
その日は朝から会議が立て続けにあり、葵は資料作成やプレゼン準備で頭がいっぱいだった。だが、そんな中でも風滝は時折彼女の席まで足を運び、進捗を気にかけてくれた。
「山下さん、大丈夫?無理してない?」
彼の気遣いに葵はわずかに笑みを返す。
「ありがとう、大丈夫です。ただ、締め切りが迫っているので少し焦ってます。」
「手伝えることがあれば言ってね。二人でやれば早く終わると思うから。」
その言葉に、葵は心が少し軽くなった。風滝の存在が、ただの同僚以上の安心感をもたらしていた。
昼休みになり、オフィスのカフェスペースで一人ランチをしていると、風滝が声をかけてきた。
「山下さん、今度の土曜日、時間ある?ちょっと話したいことがあって。」
葵は驚いたが、すぐに微笑み返した。
「土曜日ですか?予定は空いていますよ。」
「ありがとう。実は、もっとお互いのことを知りたいなと思って。仕事だけじゃなくて、普段のこととか。」
その言葉に葵の胸が少し高鳴った。普段は冷静で堅実な彼の、こうした素直な気持ちを聞けるのは新鮮だった。
「私もそう思っていました。ぜひ。」
二人は小さな約束を交わし、その日からお互いに少しずつ心の扉を開き始めていた。
土曜日の午後、約束のカフェは静かで落ち着いた雰囲気だった。店内には心地よいジャズが流れ、窓の外には穏やかな秋の陽射しが差し込んでいる。
風間は少し緊張した面持ちで葵を見つめ、言葉を選びながら話し始めた。
「山下さんは、趣味とかある?」
葵は少し考えてから答えた。
「読書と映画鑑賞ですね。特にミステリーが好きです。事件の謎を追いかける感覚がたまらなくて。」
風滝もにこっと笑った。
「いいね。僕はアクション映画が好きで、休日はよくDVDを借りて観てる。特に古い作品が好きでさ。」
二人はそれぞれの好きな作品の話で盛り上がり、自然と距離が縮まっていった。
話題は徐々に広がり、子どもの頃の思い出や、将来の夢にも及んだ。
「風滝さんは、将来どんなことをしたいんですか?」
葵の問いに風滝は少し考えて答えた。
「うーん、営業としてもっと信頼される存在になりたいね。あと、いつかは自分で事業を立ち上げるのも夢だよ。」
葵は感心しながら言った。
「すごいですね。私も自分の技術で誰かの役に立てたら嬉しいです。」
話しているうちに、二人は時間を忘れていた。ふと気づくと、店内の照明が少し落ちて、夕暮れが近づいていた。
帰り際、風滝がぽつりと言った。
「これからも、こうやってゆっくり話せたら嬉しいな。」
葵は自然と笑顔になり、静かに答えた。
「はい。私も。」
その日、二人の間には確かな絆が結ばれたのだった。