ハンバーグを食べ終えて、店の外へ出る。
「ますみん、受け取って」
「いいから」
「私が良くない!」
「分かった、じゃあ次払ってもらうから」
「わかった!次どこいく?」
彼の言葉に頷いて見上げながら問うと優しく目を細めてくれる。
「商店街行くか?食べ歩き」
「いいの?!」
「うん、行こう」
ますみんは私がたくさん食べることを察しているのかもしれない。私から言ったことはないんだけど、コンビニ寄る?とかスイーツの店行く? とか食べることに関する提案をしてくれることが多い。
それでも、’もっと食べたいんだろ’とか’食べたいなら言って’とかそういうことは言ってこない。同級生ながらやることが本当にスマートだ。
商店街にやってくるとGWということもあって結構人が多かった。
「うわ、いつもより多いね」
「賑やかだな」
隣り合って歩いてるけど、向かい側からやってくる人を避けると何度も真住に指先や肩がぶつかってしまって申し訳ない。
「あ、ごめんね」
「気にしなくていい」
「人が多いから避けるの大変」
「あんま余所見するなよ?はぐれるぞ」
「気をつける」
背が低いから当たり前なんだけど、私より背の高い人ばかりで、はぐれたら合流するのが大変そうだ
ん?チーズハットグあるじゃん!
と、意識が他に向かってしまった瞬間、手をギュッと握られて反射的にそちらへと目を向ける。
「余所見禁止って言ったばっかだろ」
その目はいつもの優しいものじゃなくて、ちょっと男の人だって意識してしまうような目でドキッとする
「…バレた?」
「もかっぺは気になるもの見つけるとすぐ足が止まる」
「そうなんだ?」
「んで、何見つけた?」
「あれ」
素直に自分の意識がとられてしまったものを指差すと手を繋いだまま、そちらの方へと歩き進む
「チーズハットグでいい?」
「うん、それがいい」
私が次は払うよと言ったのに結局ますみんが払ってしまった
「ますみん…!」
「ほら、早く食わないと冷めるぞ」
「っ!冷めちゃう!」
熱そうなそれに口をつけるとサクッと音がして中のチーズが伸びる。千切れる前に口に再び運ぶ
「んっ、はむっ」
「すんげぇ伸びるな、それ」
「ん!美味しい!これはリピ確定だわ」
「ひと口でリピ確定か」
「美味しいもん!ますみんも食べる?」
「…いいの?」
「うん!美味しいよ!」
自分が食べて美味しいと思ったそれを彼の口元へと運ぶ。少し迷ったような様子を見せた後に彼はそれにかぶりついた。
私よりもひと口が大きくて、ますみんもやっぱ男の子なんだなぁ…なんて思う
「どう?」
「ん、チーズ濃厚」
「ね!思ってたよりチーズすごいよね」
「うん、美味い」
美味しいものを共有できるのは嬉しい。美味しいもの食べると幸せになるから同じ幸せを共有出来ているような気持ちになる。
食べ終わって次は何を食べようかと商店街を見回していると再び手を握られる。私よりも分厚さがあって指も太くて男の子の手だなって感じるけど、彼の手は優しくて安心感があった。
「迷子防止ってことで」
「うん」
「次、適当に歩いて探すか」
「そうする!」
2人で人混みを掻き分けながら商店街を進んでいく。
「うーん、何食べようかな」
「たこ焼きとかあるぞ」
「えー、どうしよう。あっちに唐揚げもあるんだよね」
「両方食べるとか?」
「うーん…甘いのも食べたいからなぁ」
2人で何を食べるか相談しながら色んな店を回り、色んな物を食べて食べ歩きを満喫した。
「もかっぺが元気になって安心したよ」
「気を遣わせちゃったね」
「そうやって自然と笑ってる方がいい」
「いつも自然と笑ってるでしょ?」
「まぁいつもはな」
当たり前のように私の家まで送り届けてくれる。とても紳士的で彼と付き合える女の子はきっと幸せ者になれるだろうな。
「今日はありがとうね」
「俺の方こそ、ありがとう」
「それに家まで送ってくれて」
「女の子を1人で歩かせれないだろ」
「ますみん、紳士!」
ふふっと笑っていたら
「もかっぺ、手出して」
そんなことを言われて手を出すと真住が自分のバックから小さな袋を取り出し私の手に乗せる
夢の国の袋だ…
「これって」
「もう1個、お土産」
袋の中を見てみるとシェリー○イのぬいぐるみバッジが入っていた
「シェリー○イ!!」
「会いたがってたから」
「え!これ、貰っていいの?」
「お土産なんだから 受け取って」
「ありがとう!」
シェリー○イちゃん可愛い!!めちゃくちゃ嬉しい!!
絶対今顔がゆるっゆるだよ
「喜んでもらえたなら嬉しいよ」
「ほんっとにありがとう!お家に飾る!大切にする!」
「おう」
そう言って腕時計を確認するとますみんは私と距離をとった。
「じゃあ、また学校でな」
「うん!ありがとうね!」
バイバイ、と手を振るとますみんも笑って手を振り返してくれた。
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