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教えられた大学病院へ駆けつけて、受付で彼の名前を告げると、最上階にある特別個室を案内された。
身元を確認するための証明書の提示が求められ、折り返しの連絡が来た後に、ようやく入室が許される。セキュリティー万全で、これもマスコミ対策なのかなと感じる。
実際、あの記事の文面もそうだったけれど、真中さんの一件が落ち着いても尚、いつまでもあらを突っついて、噂好きな野次馬の目を引こうとするようなゴシップネタも少なくなかった。
「……貴仁さん、大丈夫ですか?」
室内に入り、ベッドに横たわる彼に近づく。
「ああ、大丈夫だ。心配をかけたな」
「いいえ」と、首を横に振って答える。
「……あの、どこか悪くされていて?」
白いローブを纏った姿が、痛々しく映る。
「いや、ただの過労のようだ。仕事終わりに倒れて、大事を取って入院することになっただけだから」
彼は淡々とこともなげに言うけれど、倒れただなんて、とても聞き流せなかった。
「……ずっと無理をされていたんですよね? だから、倒れられて……」
点滴が繋がる剥き出しの彼の腕を見るにつけ、胸が傷んだ。
「真中さんのことも、だいぶ骨を折られたんじゃないかって……」
あの涙の会見が浮かぶと、彼がそのために尽力したんだろうことは、明らかに思えた。
「……君のおかげだ。君に教えてもらわなければ、私は真中のことに、きっと心を砕けなかった……」
「私なんて、なんにもしてなくて。実際に力を尽くされたのは、貴仁さん自身なんですから」
……どうして、この人はいつだって少しも慢心をしなくてと思う。あれほどの巨大企業を統べながら、エゴをまるで感じられなくて……。
「……真中とは、一対一で話し合ったんだ。周りからは非生産的だと止められたが、そうして良かったと私は思っている……」
けれど、その話し合いでさえも、忙しい時間を割いてまで作ったんだろうことを思うと、周囲のように何も産み出さないからとまでは言い及ばなくても、彼自身にかかる負担を考えたら、恐らく自分も制止する側に回るようにも感じた……。