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仲間を連れた僕たちは、天使の国王城に足を踏み入れていた。
天使族の人たちで賑わっていると思っていたが、村にも城にも人の気配は全くなかった。
「この方向で合ってるのか……? その、バベルの封印場所ってのは……」
そう、僕たちはバベルを復活させに来たのだ。
アゲル……いや、大天使ミカエルを救う為には、彼の力を借りるしかない。
そして、僕には何故か、初めて来た場所なのに、その場所が分かるような気がしていた。
ミカエルが残してくれた記憶なのか、想いの道標なのかは分からないが、頭の片隅が道案内をしてくれた。
「多分……ここの扉の奥だと思う……」
僕たちは、王城の最奥にある、大きな扉の前へと辿り着いた。
遂に、唯一神バベルに会うのだ……。
「ヤマトくん、無事だったようですね」
そこに現れたのは、先程別れたカエンさん率いる皆さんだった。
「おや……四方守神も一緒とは……。ふふふ、転機はこちらに傾いているのかも知れませんね……」
やっぱり、カエンさんも四方守神のことを知っている。
この四人は……一体何者なんだろう……。
しかし、僕たちには難題が残されていた。
「この扉……鍵穴がなくなってますね……」
バベルを封印したのはカエンさんのはずだが、カエンさんの話では、この扉には鍵穴があったらしい。
しかし、鍵はおろか、その扉には取手すら付いてはいなかった。
「封印を厳重にする為、ミカエルに何かされたのか……。はたまた……」
みんなが唸り声を上げる中、僕は何をしたらいいのか、なんとなく分かっていた。
最初に魔法を使った時の感覚、最初から知っていたかのような感覚に陥っていた。
「ヤ、ヤマトくん……?」
「風魔法 フラッシュ!!」
バゴン!! と、僕はその扉を吹き飛ばした。
「ヤマトくん!? 分からないからって壊しちゃダメでしょ!? バベルが封印されてるんだよ!?」
「待って。ルーク、よく見てみなさい。この大切な封印の扉が簡単に壊れるはずがない。この扉は、『風魔法に反応して』吹き飛んだのです」
扉の先にあったものは、
「洞窟……? この奥に居るのかな……?」
岩に覆われた洞窟が真っ直ぐに広がっていた。
「炎魔法 ラグマ!!」
僕は、装着していた甲の鎧で地面をラグマで破壊した。
すると、メキメキと地面は裂かれていく。
「どう……なってるんだ……?」
すると、次は地面にマグマのような獄炎が現れた。
「や、やっぱ違うんだよ! 仕掛けだよコレ絶対!」
「ルーク、ヤマトくんを信じてみましょう」
「水魔法 アクアガン!!」
獄炎の中に、僕はアクアガンを放出。
すると、ゴロゴロと獄炎は流れ落ち、次第に光の玉が無数にふわふわと浮かび上がってきた。
「岩魔法 ブレイク!!」
上空に岩盤を出現させ影を作ると、光の玉は一つだけになった。
「他の玉はフェイクだったってこと……?」
「どうやら、七属性を持ったヤマトくんにしか通れない仕掛けに改造されているようですね……」
「雷魔法 サンランド!!」
僕は光の玉を雷の拘束魔法で捕らえる。
「闇魔法 グラヴド!!」
そして、闇魔法の重力変化で光の玉を落とした。
ふわふわ浮いていた光の玉は、卵のようにパックリと割れ、中からは鍵が出現した。
「本当に鍵が出てきた……」
「行きましょう」
僕は、率先してマグマのあった道を突き進み、落とした鍵を拾って更に奥へと突き進んだ。
「また……扉だ……」
そして、最悪にはまたしても扉が出現した。
その扉には、鍵穴と、大きな縦穴が空いていた。
「その鍵をここに使うのは分かるけど、こっちの縦穴は何を入れればいいんだ……?」
「大丈夫ですよ、ルークさん。もう、仕組みは分かりましたから」
そして、僕は、目を瞑る。
うん、感じる……このエネルギーだ。
「光魔法 スルース」
僕はその手に、光剣を翻した。
「それは……光剣……! そう言うことか!!」
ミカエルは、僕に『どんな魔法が発現するかは僕の願い次第』なんて言っていたけど、思い返してみれば、正義の国で雷魔法を使う時に、ミカエルは僕に発現する魔法が、どんな魔法か分かっていた。
最初から、僕に発現する魔法を知っていたんだ。
僕はザクッと、その穴に光剣を突き刺した。
「眩しっ……!」
ピカッ! と神々しく光り、大きな扉が開かれた。
「すごいな……本当に開いた! この世界の創造主に会えるんだ! 早速……」
大興奮のルークを、静かにカエンさんは静止した。
「カエンさん……?」
「ここは、彼らに任せよう」
僕と、カナン、セーカ、アズマ、ホクトの五人は、その扉の奥へと突き進んだ。
ここは……ただただ真っ白な空間……。
記憶の中で、バベルが最初に目覚めた場所だ……。
「お、おい……バベルはここにいるんだよな……?」
「どこにも姿なんか見えないじゃない……」
二人も動揺を示している。
「ヤマト! こっち! こっち!」
すると、カナンは僕の服を引っ張った。
「カナン……場所が分かるのか……?」
「よち!」
そして、久しぶりに聞いたカナンの “予知” 。
カナンに引かれて着いて行くと、そこには……
「なんだこれ……脳……?」
茶色い椅子の上には、脳が置かれていた。
模型のように見えて、あまり気持ち悪くは感じない。
「さ、触っていいのかな……」
バチっ!!
脳に触ろうとしても、何かが邪魔して触れなかった。
「それは光の結界。恐らくはミカエルのもの。ミカエルの光魔法でなければ解くことは出来ない」
「はは、そうか。だから……なるほど……」
僕は、一人でに笑ってしまった。
アゲル……いや、ミカエルは本当にニクイ奴だ。
“光神魔法 エイレス”
「光神魔法!? いつの間に光の神に会ったんだ!?」
「最初だよ。僕の旅の一番最初に、光の神の想いを託されていたんだ。エイレス……全ての結界を解く魔法か」
そして、遂にその時が訪れる。
「バベルを……復活させるぞ……!」
「お、おう……。どんな奴が出てくるんだろうな……」
僕は知っている。
白髪を靡かせた、白装束の男……。
少しだけ緊張するな……。
でも、僕の旅はこれで終わりじゃない……。
ミカエルを助け出すんだ……!
そして僕は、結界を解いたその脳に手を触れた。
!!!!
僕の眼前にブワッと光が収束して行く。
そして、様々な情報が脳裏に絶え間なく巡った。
「嘘……だろ…………」
「ヤマト……お前……」
アズマが言わんとしていることは分かっている。
「なんで……髪が白くなってるんだ……?」
もう、全てを思い出してしまったから。
「僕が、唯一神バベル、本人だったんだ」
記憶が戻ったのだ。あまり驚きはしない。
ヤマトとして過ごした記憶もある。
この四人のことも、思い出した。
「アズマは、記憶喪失って言ってたよね」
「そ、そうだけど……」
「セーカも、ドレイクに改ざんされた記憶以外はない。つまりはアズマと同じ記憶がないと言える」
「ま、まあ……あまり気にしないようにしてたけど……」
僕は、オドオドしている二人と向き合う。
「二人の記憶を消したのは僕だ」
「な、なんでヤマトが……そんなこと……!」
「それを、二人が望んだからだ」
「だ、だったら、思い出させてくれよ!! バベルに消されたっつー記憶、消した本人がヤマトだって言うなら、蘇らせられるだろ!!」
動揺するアズマに、少し息を溢し、手を掲げる。
「覚悟はいいかな」
二人は、ゴクリと唾液を飲み込んだ。