テラーノベル
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136
ひな💐💫
21
るあ☆ 🍑🌙💧
335
プロローグ
あの日のこと、彼との記憶。毎日がつまらなくて、泣いていたあの日。海のように輝いて、それでいて曇っている。
彼と出会って何かが変わった。確かな物じゃないとしても。
もう一度、会えたらいいな。
砂浜の上で空に向かって、軽く、手を合わせた。
1話
塩辛い海の匂い。ザザァ〜と波がひく音。照りつける太陽にサンダル越しでも熱い砂浜。帽子を被れば、すぐに飛んでいきそうなほど強い風。
そんな中、私は小さなカバンを持って一人で海を歩いていた。
これは、散歩とも言うかもしれないし、家出とも言える。
どっちでもいいけど、強いお酒の匂いと、たいして雨も降っていないのに湿っている家に籠るよりはずっと、ずっといい。
この広い海どこまで続いているんだろうか。この砂浜をずっと走っていけば隣県にまで行けるかな。
そんなことを思いながら太陽の光に反射される海の水面に、目を奪われるようにみていた。
カバンの中から一つのウサギのぬいぐるみを取り出す。
これは、私が小さい頃から使っていて、大好きだった親に買ってもらえた数少ないもののうちの一つだ。
もう、黒ずんでいたり、綿が飛び出ていたりと随分汚れているけれど、捨てる気にはなれなかった。近くの防波堤まで行って、木陰で休む。膝にそのぬいぐるみを乗っけた。
「あの海の中には何があると思う?宝石とか魚とか。それとも人の死体とか、埋まっていたりするのかな?」
ぬいぐるみに話しかける。みんなからキモがられたけれど、今の話し相手はこの子しかいない。話さないから嫌な気持ちにもならないし、誰の迷惑にもならない。
もしかしたら、私の気持ちを安らいでくれるから捨てられないのかもしれない。
話しかけていると、時々素に戻って何をやっているんだろう、と思うこともあるけれどそんな気持ちは無視して話しかける。
「あ、でも死体があったら魚が肉食べて骨は自然にかえるから残ってないか。ここで死んだら、誰にも迷惑はかからないよね……っと、ダメだダメだ。死んだらお母さんに怒られちゃう…」
「おーい、正弘〜。怒らないから隠れないで出ておいで〜」
思いに浸っていたら近くで誰かが誰かを探している声が聞こえた。何となく居心地が悪くなって、走ってその場から立ち去った。
家とは真反対の方向で、普段行かないところまできた。途中で誰かとすれ違ったけど、あれがさっきの正弘かな?
体力はある方だと自負していたけど、この暑い中長時間走るのは流石に疲れる。
木の近くで休もうと歩いていたら、倒れている人を見つけた。
危ない、と思った瞬間に体が動いていた。
「大丈夫ですか!」
額に手を当てると暑いのに、体から汗が出ていない。熱中症かな。
「ちょっと待っててください」
急いで階段を駆け上がり、なけなしのお小遣いでスポーツドリンクを、自販機で三本購入する。急いで倒れていた人のところに駆け寄り、ゆっくりと近くの日陰に連れていき、 首と手足に先ほどのドリンクを当てる。
うちわで風を仰ぐと少しは気分が良くなったのか、少しずつ目を開けた。
「あ、ありがとう…」
「いえいえ、慣れていたので」
そのまま、何も言わずただ、ずっとうちわを彼に向けて仰いでいた。知らない人だからか、幾分か話すことができた。
病院に行かせたいけどスマホも、近くに人もいない。ここから離れてもいけないので、とりあえずそっとしておくことにした。
しばらくすると彼が、むくりと立ち上がった。
「本当に、ありがとう。気づいたらここにいたんだけどこの暑さに負けて、目の前が真っ白になったんだ。ありがとう」
「いえいえ、とんでもない…」
お礼を言われるなんて何年振りだっけな。ちょっと恥ずかしい。
「いきなりは、危険なので、家まで送りますよ。冷房でもかけて涼んでください」
家、と言う単語を聞くと彼はひどく焦ったような顔になった。
「…家?僕の家は、…どこだっけ……」
額に手を当てて瞳孔が視界を定めていない。
…どうしよう。家がわからないのは想定外だ。だからといってうちは無理だし、でもこのまま外にいるのもあれだしな…
考えてたどり着いた先は
「一旦、公民館で休みましょうか」
あそこなら冷房も効いてるし、大丈夫だろう。それに、わけを話したら聞いてくれるんじゃ…
「え、でも…」
「いいから、いいから」
彼の返事を聞かずに腕を片方持って肩に乗せる。
ここから公民館まで数分で着く。なるべく、相手の速さに合わせて歩く。
「す、すみません…」
公民館につき、事務室で座っていたお婆さんに話しかける。
「はーい?」
「あ、あの、私の隣の男性が家がわからないそうで、証明する物も何も持っていないそうなので、ここで数日泊まってもいいですかね…?」
お婆さんの額にしわがよる。
「あ、すみません。やっぱり、無理、でしたよね。ごめんなさい…」
「いや、別に食事とか自分で用意するんだったらいいんだけどさ…」
「本当ですか!ありがとうございます」
「いや、うん…まぁ、あんたがいいんだったら…」
曖昧に答えながらも、奥の部屋だったら使っていいとのことでゆっくりと歩いて行った。
「どうしたの、あの子?」
「いや〜、何でも一緒にいる男性をここで数日泊まらせてくれって…」
「はぁ?暑くてあの子、幻覚でも見えてるのかね?一人で来てるのに…」
コメント
5件
めっちゃすごい! これからが気になるわ
うわ、この第1話、すごく引き込まれました……!まず海辺の情景描写が鮮やかで、風や砂の熱さまで感じられるようでした。主人公がぬいぐるみに話しかけるシーン、孤独がにじみ出ていて胸がぎゅっとなりましたね。そして倒れている男性を助ける流れから「家がわからない」っていう急展開——え、記憶喪失……?これからどうなるんだろう。公民館のおばあさんの反応も気になるし、続きがすごく読みたいです!