今夜はきっと、やっぱりあんな馬鹿げた事は、やめようと言われるに違いない
そして・・・・そうなったら、とても残念だと考えている自分にまたしても驚かされた
私はいても立ってもいられなくなり、一目彼の顔を見たくて、彼のいるジムに向かった
ジムの正面玄関からひょっこり顔を出して、中を覗いてみる
わおっ!彼がリングに立っていた
しかし、入り口にいる私を見かけると、ぴょんッとリングのロープの間をくぐって降りて来てくれた
笑顔を振りまきながら、こちらに駆け寄ってきてくれる
思わず心臓がキュンッとなる
「やぁ!鈴ちゃん!僕に会いに来てくれたの嬉しいよ!」
またしても私の顔は真っ赤になった、うまくここに来た言い訳が見つからない
「今日は特に綺麗だ 」
それは私のセリフよ!彼の笑顔は眩しすぎるぐらいだ
「夕べよく眠れた?」
私は目をみはり小さくうなずいた
「あ・・・あの・・・いきなり押しかけてごめんなさい・・えっと・・・特に用事はなかったのだけど」
「迎えに来てくれてとっても嬉しいんだけど、でもあいにく今から大事なスパークリングなんだ、ちょっと関係者以外は立ち入り禁止で・・・入れてあげたいんだけど・・・ごめんね 」
柚彦君が申し訳なさそうに、私の目の前で両手を合わせた
私ったら!彼は遊びにきてるんじゃないのよ!それにジムに顔を出すなら、差し入れの一つも持ってこないで、どれだけ浮かれてるのよ
「そっ・・・そうよね!私っ・・・帰るわ!ごめんなさいお仕事の邪魔しちゃって・・・お花屋さんに寄ったら今日はあなたはこっちだって言われたものだからフラフラ来ちゃって・・・本当に私ったら・・・そ・・・それじゃ・・・」
ホホホホと笑って手を振って帰ろうとする、その腕を柚彦君がグッと掴んだ
私の腕をつかむその手は温かいが力強く、優しいが決して離そうとしない
彼をじっと見つめ、胸を激しく高鳴らせたまま、私は彼と熱く見つめ合った
しばらく待っていた柚彦君がやがて、親指で私の肌をそっとなぞり始めた
思わず息が止まりそうになる、彼の目が私の目を覗き込み、それから唇へと移った
「みんながいるからキスは出来ないな・・・」
「うん・・・・ 」
「今夜連絡するから・・・」
「待ってる・・・・・・ 」
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