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「はーい!みんな〜集まって!」
 
 佐藤の一言で一斉にみんなが集まった。
 初めて生で見るメンバーに圧倒されて、佐藤に少し隠れるように立った。
 
 「さとちゃん急にどしたー?」
 
 「後ろに隠れてる子誰??」
 
 「そう!今日から新しくマネに入る子だよ!
ほら、自己紹介して」
 
 「…吉田仁人です。これからマネージャーとして、頑張らせて頂きます。よろしくお願いします…。」
 
 「ごめん、!人見知りなの笑仁人は昔から面倒見てた子でさ、凄く努力家でいい子だから、みんなよろしくね!」
 
 「…うぃ」
 
 「私もそろそろ歳だしさぁー笑」
 
 「いや、まだまだでしょ!」
 
 「さとちゃんいないと俺ら頑張れへんって!」
 
 「そうは言ってもなぁ…」
 
 『佐藤さーん!ちょっといいー?』
 
 「あ、はい!ってことだから、みんな仲良くしてあげてね」
 
 「え、ちょっ、、佐藤さん…」
 
 …空気が重い。
 
 「吉田さんだっけ?さとちゃんと昔から仲良いんだ〜… 」
 
 「あ…はい。息子みたいに接して下さって…」
 
 「さとちゃん、マネ辞めるみたいなこと言ってたんやけど、さとちゃんの位置奪いに来たん?」
 
 いきなりの攻めた質問に恐縮する。
 
 「いや、決してそういう訳では…」
 
 「ふ〜ん…」
 
 画面で観ていた人はどこにいるんだろうか…思っていた人とは全然違くて、緊張で動けない。
 
 「まぁ、これからよろしくな、吉田さん。 」
 
 「よ、よろしくお願い…します、、」
 
働き始めてから初のライブ。
 仕事はまだ一通りの内容を覚えるだけで、メイクなどは任されたこと無い。
 M!LKメンバーから歓迎されているかと言われたら、多分違うだろう。
 表ではにこにこしているが、俺に向ける視線はどう見ても敵を見るような目。
 特に佐藤さんがいるところではいい顔しているが、俺一人になると一気に空気が変わる。
 
 「吉田さ〜ん、これ捨てといて〜」
 
 「あっ、はい。」
 
 そういって向かうと、足を引っ掛けられ床に倒れた。
 
 「あ、ごめん笑見えなかったわ」
 
 「いえ、大丈夫です。」
 
 「なに?聞こえないんだけど」
 
 「あ、いえ…」
 
 
 そんな些細なからかいが多々あった。
 今のこの仕事は正直に言って楽しくは無い。
 子供たちの笑顔をみていたほうが何倍も楽しい。
 それでも、ファンの為に何時間も練習して、最高のパフォーマンスをするM!LKとそれに応えるかのように声援を送るファンの関係が好きだ。
 テレビで観たその景色も、生で見たその景色もやっぱり綺麗で、その色はまるで何にも染まらず光を放つ"白"だった。
 だから、この仕事につけたことは嬉しくて、最高のビジュアルでステージに立って欲しいと思ってる。
 だからこそ、このくらいのからかいは気にしなかった。
 けど、また最近体に力が入らなくなる時がある。
 過去の数々を奪っていった病気にまた奪われてしまうのだろうか。
 
 「…さーん」
 
 まだ今はそこまで重いわけでは無く、まだなんとか頑張れている。
 
 「…さーん、吉田さーん」
 
 「あ、はい!」
 
 「さっきっから呼んでんだけど。何回呼ばせんの?耳ある? 」
 
 「…すみません、 」
 
 「だから聞こえないんだけど」
 
 「…」
 
 「吉田さんさぁ、正直マネージャー向いてないよ。辞めたら?」
 
 「いや、、でも」
 
 「そうやで?」
 
 どんどん迫るように近付いてくる勇斗と舜太。
 後ろで無言の圧をかける柔太朗と太智。
 すると、勇斗の手が伸びてきて俺の顔を掴んだ。
 
 「てか、よくみたら、綺麗な顔してんじゃん笑」
 
 「確かに、色白やしなぁ笑」
 
 そう言うと舜太と勇斗は顔を見合わせ、不気味な笑みを浮かべた。
 すると、いきなり押さえつけられ、服がはだけていった…
 
 「え、、ちょっと、、やめてください」
 
 「黙れって」
 
 射抜くような視線にどうすることも出来ずにいた。
 触れられる体に落とされるキス、そして周りからの視線。
 徐々に蘇ってくる記憶に体が硬直して動かない。
 
 「なに、急に大人しくなんじゃん笑もしかして、そういう経験ある?笑」
 
 「いや…ぃゃ…」
 
 「おい、聞いてんの?」
 
 聞こえてはいるのに、体が言うことを聞かない。
 やばいと思った瞬間、身体の力が一気に抜け、意識と共に落ちていった。
 
 「は?え、なに」
 
 「え、ちょ、重いんやけど」
 
 「意識なくなってない?」
 
 「え、、」
 
 そこに会場準備を終えた佐藤が楽屋に入ってきた。
 
 「やっと終わったぁ〜、って…仁人、?」
 
 「あ、あ〜なんかいきなり倒れちゃって」
 
 「え…?仁人!仁人!」
 
 佐藤の反応にみんなが焦り始めた。
 
 「とりあえず舜太、そこのソファに運んで!」
 
 「え、あぁうん、」
 
 「倒れる前何かあった?」
 
 その質問に全員が口を噤んだ。
 こんなに焦っている佐藤を今まで見たことがなかった。
 
 「最近はなかったのに…なんで、、」
 
 「吉田さん、どうしたん…?」
 
 「そうだよね、みんなにもちゃんと話さないとだよね…」
 
 「話すって何を?」
 
 「みんなこっちに集まって座って。」