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私が昔、住んでいたマンションがある。
割と大きなマンションで、二棟に分かれていた。その間に中庭があり、そこでは毎日、私も含めた大勢の子どもたちが遊んでいた。
よく遊んだのが、かくれんぼか鬼ごっこ。
鬼ごっこが終わったらかくれんぼ。なんて日もあったほど、その二つばかりだった。
けれど、不思議と飽きずにずっと続いていた。その日も、かくれていた。
「もういぃかぁい…?」
「もーいーよー!」
鬼は佳世ちゃんだった。いつも早くみんなを見つけている子。明るくて、優しい子。でも…その日はなんだか変だった。近くに隠れていた聡君が、
「ねぇ、なんだか佳世ちゃん、変じゃない?」「確かにそうかも…元気ないよね」
「……隠れん墓じゃ、ない…よねぇ?」
「……隠れん墓?」
初めて聞く言葉。隠れん墓…隠れる、墓?全く知らない言葉だった。聡君は、少し…顔を青くした。
「隠れん墓っていうのは…かくれんぼをする時に、すごい不満を持った人がかくれんぼの鬼になると、本物の鬼がその人に降りてきて、 隠れん墓になるんだよ」
ヒソヒソと、震える声で言った聡君。眼鏡の冴えない子と思っていたけれど…『そういうこと』を信じてるとは思わなかった。
…不満を持った人がかくれんぼの鬼になると、鬼が降りる……オカルトとか、怪談とか…全く信じていなかった私。
しかし…言われてみれば、その日はドンヨリした雲空で、朝、遠くでは雷の音がした。…それに、いつもは笑顔で探している佳世ちゃんの、顔が見えなかった。隠れているせいか分からないけれど、聡君と私には、真っ黒に見えた。
「もし隠れん墓だったら…どうすればいいの?」
少し怖くなってきて、ヒソヒソと聡君に聞く。
「鬼が居なくなるまで、隠れてるんだ。鬼に見つかったら、殺されちゃう」
と、真っ青な顔で、言った。『殺される』と
私も顔を青くして、腕を抱えて縮こまる。
肌は鳥肌が立ち、背中からは冷たい汗が流れる。
「大丈夫…ここなら見つからないよ。佳世ちゃんに見つかったことないから」
と、私の肩を優しくさすった聡君。彼の手も、震えていた。
……………向こうから、
『みぃつぅけぇたぁ……!!』
と、佳世ちゃんの声には似ても似つかない声が聞こえた。次には、
「見つか………」
鈍い音がして、声が途切れた。次には、ズルズルと音がして、何も聞こえなくなった。
「今の声って……桜ちゃんの……」
と、呟く。佳世ちゃんと一番仲がいい女の子。
「桜ちゃんが居なくなった…?じゃあ…あと、誰が残ってるんだろう…」
聡君が指折り数える。一、二、三、四、五、六………………
「後………六…人…」
六…不吉な数字。それだけなのに、なぜかゾッとした。私と聡君を含めて六人…私と聡君は、早く大人が来ないかと願っていた。
ガサガサと音がして、聡君が思わず、頭を上げた。
『こんなところにぃ…いたのぉ……!』
次には、上から真っ赤な絵の具が振ってきた。
沢山の、真っ赤な……鉄臭い絵の具が。
ーそこからは記憶がない。気づけば大人に囲まれていて、私以外の子どもはどこに行ったのか聞かれたけれど……全て、わからなかった。
「聡君…?桜ちゃん…?……佳世ちゃん?」
誰も、覚えていなかった。
今私は、マンション跡地の前にいる。時折、聞こえる子どもの笑い声。近くの公園からだろうか…。
今も思う。あの時、もし私が……佳世ちゃんを押していなければ……あんなことにはならなかったのかと。