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って、あれアルトリア「さん」?もしかして「覚えてない?」浮かれててつい無視しちゃってたけど。「じゃあ、一限目の準備をしましょう。」

へーいと男子の方からやる気のない声が

上がった。これで自由時間になった。立香に少し聞いてみよう。

「あの、立香さん、私のことって覚えてる?」

「え、あー、記憶力に自身はある方だとは思うんだけど、、ごめんね。」

それだけで十分だった。彼女は妖精國での記憶がなくても彼女は確かに彼女だ。それは変わらない。なら私の気持ちは一つに纏まった。

「私、貴女と友達になりたい!」

一一一

「うぅ、疲れたー」

「お疲れ、アルトリア」

今日一日で私は立香とかなり仲良くなれた。オベロンとは一言も全く話していない。いや嫌いという理由ではなく、単純にオベロンの席の近くにやけに女子が多かったからだ。これでは込み入った話もできない、と休み時間はずっと立香と話していた。(ちなみに立香とアルトリアが仲良く話す、という光景を眺めていた男子は新しい扉に目醒め、百合の間に挟まってはいけないと自重をしていた。)

「そういえば、立香ってどこに住んでるの?」

なんとなく気になり聞いてみた。

「あー、少し前にできた小川マンションの3階だよ」

小川マンションって全国展開してる不動産だよね。私の家から3分くらいの激近の場所だった気がする。確か格安で広々とした部屋を提供みたいなのがキャッチフレーズだった気が…まあ何でもいいか

「じゃあさ、私たちがもっと仲良くなって、友達から親友くらいになったらくらいでいいからさ、立香の家に遊びにいってもいいかな」

瞬間、彼女の顔が僅かに引きつった気がした。

「あ、えーと…」

「あ、ごめんね、私の我儘で!気を悪くさせるつもりは…!」

急いで弁明をしようとしたがその言葉を立香が遮った。

「いや全然そういう訳じゃなくて、ただ…」

立香の言葉が途中で止まった。

「ただ、うちの親が勉強しかやらせてくれないから、来てもあんま楽しくないかも!」

偽りの笑顔を造り、彼女は言った。

「そっか、じゃあ今はこれ以上は詮索しないよ」

私も笑顔を造り、彼女に言った。勉学に厳しい、一言で言ってもかなりの種類がある。正直相談をしてほしい。だが、私は妖精國でも記憶があって立香の人間性が分かるが、彼女にはその記憶はないので私がどのような人間かわからないということだ。信頼できるかできないかでいえばできないだろう。なら、今はまだこれ以上聞くべきではない。

「ありがとう」

彼女は本物の笑顔を作った。

「じゃあさ、明日から〜」

今さっきも会話をなかったことにし、また雑談を始めた。


立香side

この高校に転校してきた理由は家族の事情などではなく、過激ないじめが原因だった

一回想

もともと、そんな直接的にイジメはなかった。ただ、クラスのマドンナであり、隠れぶりっこ(A)の彼氏が私に手を出してきたことが原因で主にクラスの女子からイジメを受けるようになった。手を出してきた、といっても精々ナンパだ。「何カップ?」とか「このあと一緒にホテル行かない〜?」とか、、それをAが誇張し、「彼女がいると知っているのに、男に色目を使う正確が悪い女」に仕立て上げられたわけだ。まあよくある様にイジメはエスカレートしていき、必要な書類を渡さずに捨てたり、足をかけてきたり、逆に足をかけた犯人にしたり、あえて聞こえるように悪口を言ったりと様々だった。進学校だったので教師の見えるところで暴力を振るったりはなかったが、そんなに甘くないと言わんばかりに色目で堕とした男を連れて路地裏で蹴られ殴られは日常だった。そんな暮らしをしていたからだろう、もう自分の命に頓着はなくなった。死んだほうがマシだと思ったことなんて数え切れなかった。だが、何かの存在が、未練が、私を現世に繋ぎ止めていた。


「藤丸立香さん、入ってきてください!」

深呼吸をして扉を開く。教室の扉は重く感じられた。

「藤丸立香です。両親の都合で地方から転校してきました。よろしくお願いします。」

一礼をして顔を上げた。

「アルト…リア?」

席に座ってこちらを見ている金髪の少女が目に留まった。その声は周りの騒音で掻き消された。アルトリア、知らない名前だが、心が覚えている。ただ、思い出せない。顔も声も思い出も。大切なことは分かるのに。そんなことを思っていた矢先

「じゃあ立香さんは、、アルトリアさんの隣で」

そんな声が聞こえた。その声の直後バッと誰かが席を立った。なんとなくだれか分かったが。反射で思わずそちらを見る。するとそこには、今日、いや、さっき見たばっかりなのに、なぜか見慣れたアルトリアさんがいた。ただ私を現世に繋ぎ止めていてくれたのは彼女だろうと、そんな気がした。

一回想終了

(アルトリア、なぜあの子にあんなにも惹かれるのだろう)

勉強をしながら、ふとそんなことが気になった。あの子と過ごす時間は心の底から本気で笑っていられた。今までなかったのに。ただ、この気持ちは心の中の靄がかかっている部分を紐解かない限りこの気持ちは晴れないだろうと思った。

「あーあ、バレバレだったな、あの嘘。」

今日の下校中の彼女との会話を思い出した。(そっか、じゃあ今はこれ以上は詮索しないよ。)大人の対応だった。いつかは打ち明けるつもりではいるが、果たしていつになるのか検討もつかない。でもこれだけが分かる。アルトリアはきっと私のことを前から知っている。この靄の記憶の正体も。だがこの靄は自分で思い出さなければ。

「って、何考えてんだか。勉強しないとまた殴られる。」

今までの思考を消して、勉強に身をうつした。


希望いだく楽園の星と忘却の春宵

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