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一一次の日昨日帰るときに立香と約束をした通り小川マンションの駐車場へ向かう。2、3分程待ったところで立香が階段を降りるところが見えた。気づいてもらえるかと不安になり手を振ったところ、こちらに気づき、笑顔で振り返してくれた。
「本当、眩しいな」
彼女の笑顔を見ると、こちらの心が明るくなる。そんな考えをしていたのが顔に出ていたのか、
「ごめん、遅れて!ってアルトリア、何かいいことあったの?にやけてるよ?」
と到着した立香に言われてしまった。無自覚天使め。天然たらしとは立香のことだ。
私と立香が登校している途中、見覚えのある人が目に入った。そうオベロンだ。
「げ、オベロン…!」
つい本音が出てしまった。
「げって何だよ。はぁ、で、立香、覚えてないんだ?」
そんなことを口にした。その口振りから察するに、オベロンは妖精國での出来事を覚えているようである。
「あなたも、私を知っている人?アルトリアと同じ」
あやふやな答えだが、判断材料はそれだけで十分だったようだ。
「あぁ、そうさ。かの國で共に旅をした仲間、それでいて宿敵だ」
宿敵?はあ?何言ってんの?途中退場したくせに
「オベロン、宿敵って、何言ってんの?」
「あぁ、君は知らないか、あのあと、ケルヌンノスの神核をマシュと立香がブラックバレルで粉々にして、そのあと」
溜めて溜めて、にっこりと笑顔を造り、
「裏ボスが出てきたんだ。」
いと楽しそうに笑った。
オベロン・ボーティガーンの奈落への誘い、厄災と化したメリュジーヌがその奈落を外側から破壊し、出ることができたと。そして
「サーヴァントの、私?」
気になった単語を反復した。妖精國でのケルヌンノスとの戦いで座に登録され、英霊となった未来の私。オベロンはカルデアに召喚されたアルトリア・キャスターは私ではなく未来の私が昔の私をエミュレートしたものと言っていた。
「そうだ、奈落でもカルデアでもあの魔猪には酷い目に遭わされたもんだ。」
「魔猪じゃな…って、え?立香、なんで泣いてるの!?」
彼女の明るい瞳から大粒の雫が幾数も流れていた。
嗚咽を我慢し、空を仰いで涙は見せまいと目を瞑っていた。
嗚咽を我慢し、空を仰いで涙は見せまいと目を瞑っていた。
「え、なんでだろう、なぜか、すごい懐かしくて」
懐かしいとは、私とオベロンの口喧嘩だろうか、それとも、彼女がカルデアに努めていたころの単語が出てきたから思い出の片鱗が見えたのだろうか。
「り、立香、大丈夫?」
「ぐすっ、うん、ごめんね、迷惑かけて。オベロンも…っていない…」
嗚咽を混じえながら謝ってきた。
「いや、全っ然迷惑なんかじゃないよ!にしても、オベロン逃げ足だけは速いんだから」
とりあえず立香の謝罪の言葉に返答をし、オベロンの愚痴を言った。言葉ではああ言ったが、その速さは彼の主の涙は見まい、という紳士的な気遣いの可能性もある、いやオベロンに血も涙もないだろうけど。
なんとか涙を飲み込んだ立香は少し気丈に振る舞って、
「ふぅ、ごめんね止めちゃって、じゃ、行こうか!」
と言った。
一一学校
「あの、立香さんてどこから来たの?」
教室の扉を開けた途端、男子からそんな言葉が聞こえた。どうやら受取人は私ではないらしいのでそそくさと立香の後ろに退散し、立香を前に少し押した。
「え、えっと、地方の進学校だよ。」
どこかぎこちない笑顔でそう答え、自分の席に座ろうとすると、
「えー!進学校てすごい!!ねぇねぇ、なんて学校?」
次はその隣にいた女子から質問されてた。
「えーと、◯◯学校だよ」
またまたぎこちない笑顔で答えながら、私の方に視線を送った。ごめんよ友よ、私も人混みを苦手なのだ。視線でそう言って隙間から抜けて自分の席に座った。
罪悪感で立香の方をちらと見るとまだ質問攻めされているらしく、まだ一歩も動けていない
そんな彼女がやっと動けたのはHR直前だった。急いで席に着き、私に
「酷いよアルトリア、あの状況で無視なんて…」
少し頬を膨らまし、こちらに言ってきた。拗ねてる顔も可愛いって…
「ごめんって、私も人混み苦手なんだよ…」
雑談を始めたところで教師が教室に入ってくる。
「はーい、HR始めまーす!」
またいつもの日常が始まる。