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#···などなど!!
びーえる中毒民
34
#ある意味ホラー
一年が過ぎた。
春。
校門へ続く坂道には、新しい制服を着た生徒たちが歩いている。
ヴァルは高校二年生になっていた。
「やっぱり高校って、中学より広いなぁ……。」
そんなことを呟きながら、放課後になると自然と足はパソコン部へ向かう。
中学の頃から変わらない。
放課後は部室。
パソコンを開いて、何かを作る。
その時間が好きだった。
けれど、一つだけ違うことがある。
隣の席は、いつも空いていた。
「……セトなら、ここ座ってたな。」
ぽつりと漏らした言葉に、自分で少し笑う。
卒業してから一度も会っていない。
ゲームは完成しただろうか。
元気にしているだろうか。
そんなことを考える日も増えていた。
その日の放課後。
ヴァルは部室へ向かう途中、ふと廊下の先にある掲示板へ目を向ける。
そこには、新入部員募集の紙が貼られていた。
「そういえば一年生入る時期か。」
何気なく呟き、そのまま部室の扉を開ける。
ガラッ。
静かな部屋。
夕日が窓から差し込み、机を橙色に染めている。
そして。
部屋の一番奥。
見覚えのある黒髪が目に入った。
カタ、カタ、カタ……
静かにキーボードを打つ音。
少し長めのウルフカット。
横に編まれた細い三つ編み。
その後ろ姿を見た瞬間、ヴァルの時間が止まった。
「……え。」
思わず声が漏れる。
その声に反応して、黒髪の少年がゆっくり振り返った。
「……こんにちは。」
落ち着いた声。
見間違えるはずがなかった。
「……セト?」
「……はい。」
「えぇぇぇぇぇっ!?!?」
静かな部室にヴァルの声だけが響いた。
セトは一度だけ瞬きをする。
「……久しぶりです。」
「なんでいるの!?」
「入学しました。」
「それは知ってる!」
「なんで同じ部活なの!?」
「……入りたかったので。」
「また!?」
「……はい。」
あまりにも普通に答えるので、ヴァルは頭を抱える。
「いや、連絡くれよ!」
「驚かせようかと。」
「お前そういうことするタイプだった!?」
セトは少しだけ口元を緩めた。
「……少しだけ。」
「笑ったな!」
「……。」
「今笑った!」
「……気のせいです。」
「その返し懐かしい!」
ヴァルは思わず笑った。
一年ぶりなのに、不思議だった。
昨日まで一緒に部活をしていたような感覚。
気まずさなんて、どこにもない。
ただ、隣にセトがいる。
それだけで部室が少しだけ懐かしく感じた。
ヴァルはセトの隣の椅子へ腰掛ける。
「結局また隣じゃん。」
「……そうですね。」
「狙った?」
「偶然です。」
「絶対嘘。」
「……。」
セトは何も言わない。
ただ、小さく笑うだけだった。
その笑顔を見て、ヴァルも笑う。
部室には久しぶりに、二人の笑い声が響いた。
それからの日々は、中学の頃とほとんど変わらなかった。
放課後になると、二人は自然と同じ席へ座る。
ヴァルは思いついたことを口にし、セトは静かに聞く。
「セト。」
「……はい。」
「昼飯ちゃんと食った?」
「……食べました。」
「ほんとか?」
「……パン一つ。」
「少なっ!」
翌日。
「今日暑いな。」
「……そうですね。」
「アイス食う?」
「……いいですね。」
「即答!?」
また別の日。
「ゲーム完成した?」
その質問に、セトはリュックの中を探る。
取り出したのは、あの日ヴァルから受け取ったUSBメモリだった。
「……持ち歩いてたの?」
「はい。」
「完成は。」
「……まだです。」
少しだけ申し訳なさそうに俯く。
「でも。」
「少しずつ進めています。」
ヴァルはUSBを見つめる。
「そっか。」
そして優しく笑った。
「ゆっくりでいい。」
「完成するまで待つ。」
セトは小さく頷く。
「……はい。」
その返事は、中学の頃より少しだけ柔らかかった。
放課後。
窓の外では夕焼けが校庭を赤く染めている。
部室の中には、またキーボードの音が響く。
カタ、カタ、カタ……
あの頃と同じ音。
あの頃と同じ席。
違うのは、一つだけ。
以前は「先輩と後輩」だった二人が、今ではお互いを自然に笑い合える存在になっていたこと。
言葉は多くない。
それでも分かる。
この静かな時間が、お互いにとって心地いいものだということを。
ヴァルは画面から目を離し、隣を見た。
真剣な表情でキーボードを打つセト。
その姿は中学の頃と何も変わらない。
変わったのは、一つだけ。
「セト。」
「……はい。」
「また一緒にゲーム作ろう。」
セトは一瞬だけ手を止める。
そして、小さく微笑んだ。
「……はい、先輩。」
その呼び方は、一年前と変わらない。
けれど、その一言には以前よりずっと自然な温かさが込められていた。
窓の外では、春風が桜を揺らしている。
静かな部室で始まった二人の青春は、まだ終わっていなかった。
コメント
1件
セトが1年ぶりに現れた瞬間、静かな部室にヴァルの叫び声が響くシーン、めちゃくちゃ笑った。「気のせいです」とか「……少しだけ」って笑うところ、全部セトっぽくて大好き。昼飯の話とかアイスの流れも、自然な距離感に戻れてる感じがしてじんわりくる。最後の「……はい、先輩。」に、以前より温かさが乗ってるのがよかった。また隣でゲーム作る日々、これからも応援してるよ🔥