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「テレビ越しの結婚宣言」
「次は日本代表のセッター、宮侑選手にお話を伺います!」
テレビから聞き慣れた声が流れてくる。
🌸はクッションを抱えたまま、何気なくチャンネルを変えただけだった。
でも、画面の中に立つ侑を見た瞬間、姿勢がぴしっと固まる。
汗で少し髪が額に張りついていて、でも笑顔は相変わらず挑発的。
記者たちに囲まれ、堂々としたあの態度。
“日本代表の選手”になっても空気を支配する感じは変わらない。
(相変わらずやな…)
そんなこと思いながら見ていたら――
記者の質問が飛ぶ。
「宮選手、個人的な目標ってありますか?」
侑は一瞬だけ笑って、マイクにぐっと顔を寄せた。
「個人的な目標?」
「……結婚、かな」
「…………は?」
数秒、頭が真っ白。
テレビの音だけが部屋に響く。「
記者がざわつく。
ざわめきの中、侑はさらに続けた。
「まあ、相手は決まってんねんけどな。
後は向こうが“はい”言うだけや」
満足げで、挑発的な笑み。
その笑みは完全に“あてつけ”みたいで、画面越しのくせにものすごい支配力を放っていた。
「ちょ、ちょっと待って……え、え? わたし…………?」
耳まで熱くなる。
体がふわっと浮くような感覚。
頭の中がぐるぐる回る。
テレビの侑はまだ喋っている。
「まあ、逃げられる思ってへんけど。
俺から逃げるんは不可能やし。
……ほら、カメラ越しでも聞いとるやろ?」
「えっ!? わ、わたしに言ってる……?」
完全に彼女に向けたトーンだった。
全国放送の真ん中で“逃がす気ゼロ宣言”。
挑発的なのに、一途なのが丸見えだ。
記者が慌てて質問を重ねる。
「えっ、あ、あの……お相手の方は芸能関係の方ですか?」
「ちゃうちゃう。一般の子や。
ただ……俺のもんやから、そこらのやつとはちゃうで」
「……っ……!」
心臓の音がテレビのボリュームより大きい気がする。
侑は最後に、あの意地悪な笑い方をした。
「まあ本人がテレビ見とるんは知っとるからな。
帰ったら……ちゃんと返事、聞かせてもらうわ」
テレビが別のニュースに切り替わる。
部屋に静けさだけが残った。
「……待って、無理……心臓もたないて……」
顔は真っ赤、手は震えて、吐息がふわっと漏れる。
恥ずかしくて、嬉しくて、でも怖くて――全部が一気に押し寄せてくる。
そこへ、スマホの通知。
《見とったやろ。返事、逃げんな》
《もうすぐ帰る。覚悟しとき》
「………………無理。ほんとに無理。
けど、胸の奥はしっかりと“幸せ”で満たされていた。