テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
139
#博士
#カオス
荒于
1,855
放去の彼方に第5話
りんごちゃんからの請求金額に驚き、慌てふためきうろたえていたら、
ガチャ キー
先ほどまでいた部屋から、キミコ様(北川景子)が現れた。
そして、占いの清算金額に戸惑う自分のもとに近づき、「お客様、お客様のご依頼の悩みに対する私からのご説明が足りなかったようで、ご迷惑をおかけしているのでは」と足元まで近づき、吐息さえ感じるほど顔を寄せて微笑んだかと思うと、俺の耳元で、「あなたの悩みは私が身を持って責任を取りますよ」と吐息混じりにささやいた。
その言葉が、水滴が水面に落ちて波紋のように広がるかのように、俺の耳から全身に浸透し、「身を持って責任をとる」「身体で責任を取る」「私を好きにして」など、自分の勝手な解釈を交えた言葉とともに、心臓の鼓動とシンクロして全身に広がっていった。
そして未知なる信号を耳元でキャッチし、呆然と立ち尽くす俺は、人類初の多次元への旅立ちのカウントダウンへと入ろうとしていた。その時、北川景子は追い討ちをかけるように、俺の両肩を手のひらで軽く数回揉みながら、「もう十分、私のご説明はご理解いただけましたね。カード以外にもPayPay、モバイル決済、PayPalなど対応いたしますのでお申し付けください。」
その言葉が、人間の声帯から発せられたとは思えない衝撃波となり、言葉を発するたびに俺の脳を直撃する。正面からの強烈なストレートの連打にフックも加わり、フットワーク軽やかに狙ったようなカウンターでKOされるような感覚を覚え、俺の意識も妄想も打ちのめされた。
薄れゆく意識の中、両肩に感じた北川景子の柔らかい手のひらの感触と温もりが全身を包み込み、遠のく意識を呼び戻す。心地よい母胎の中にいるような多幸感に包まれながら、何も深く考えられず、言われるがままカードを財布から取り出してりんごちゃんに渡した。
りんごちゃんの図太い声で「毎度あり〜」と聞こえ、その声を最後に意識は薄れ、気づいたら両手で大事に壺を抱え、新宿駅へ向かってトコトコ歩いていた。来た時に絡まれた交番には遠回りし、占い師キミコ様(有名人の北川景子似の魔性の女)としての姿を思い出した。
彼女はあらゆる奇術や妖術を操り、人を操り人形にしてしまう恐るべき魔女とも思える自称占い師だ。帰りの電車の中、自宅への道の途中、そのようなことばかりを考え、キミコ様=北川景子への脅威を感じつつ、支払った15万8千円のことは忘れ、自宅に大切に持ち帰った開運ジャーをその日の夜手に取り裏に刻印されたメイドインチャイナを見るまで忘却していた。
コメント
1件
おお…読んでて思わず笑ってしまいました。主人公の「身を持って責任を取る」という甘美な響きに一瞬で妄想を膨らませるところ、めちゃくちゃ共感できるというかあるあるです(笑)。そこからの現実のPayPay・モバイル決済対応のギャップがたまらない。そして最後のメイドインチャイナの刻印…世界観が一気に現実に引き戻されるオチが秀逸。キミコ様=北川景子のキャラも、脅威なのにどこか愛おしく感じてしまう絶妙なバランスでした。次回も楽しみです!