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「おい、君、ひょっとしてサトルか? 上田悟か?」
俺はその他校生に声をかけてみた。そいつは一瞬びくっと震えあがったような仕草をしたが、俺の姿を見てほっとした表情を見せ、俺のそばに駆け寄って来た。
「雄二か? おまえ、遠野だよな?」
「おお、やっぱり悟か! いやあ、懐かしいな。二年半ぶりぐらいか?」
「よ、よかった……おまえは無事なんだな?」
「はあ? 何の事だ、やぶから棒に。それに突然俺の学校へ訪ねて来るなんて、どうしたんだ?」
「俺は雄二の今の住所知らないから……この中学に入った事はいつか電話で聞いてたから……」
横から絹子が遠慮がちに話に割って入る。
「雄二、知り合いなの?」
「ああ、悪い。こいつは上田悟。俺の小6の時のクラスメートだ」
「雄二!」
突然悟が切羽詰まった口調で言う。俺はあっけにとられてしまった。悟はポケットから折りたたんだ紙を取り出して俺の手に押しつけながら言った。
「今夜7時、ここに来てくれ。隆平も呼ぶつもりだ」
「隆平って……山崎のことか?」
俺は紙を広げて見る。インターネットからプリントアウトした地図があった。この辺から電車で駅五つ先の街の河原に赤ペンで印がつけてある。つまりその場所へ来いってことなんだろうが。
「ちょ、ちょっと待て。一体何の話だ? それに、おまえ、なんか様子が変だぞ」
悟は一瞬信じられないといった感じで俺の顔を見つめ、意味ありげに言う。
「おまえ……ひょっとして知らないのか? 例の中3連続殺人の事を……」
「いや、それは知ってるよ。今日もその件で緊急全校集会あったぐらいだから」
「あれは純の仕業なんだ!」
悟はそう叫び、俺は目を丸くした。
「ジュン……純って、まさか深見のことじゃないよな」
「そうだよ、深見純だよ、あの純だよ。おまえ、ほんとに何も知らないのかよ!」
最後の方は声が裏返っていた。変だ。悟のやつ、間違いなく何かにおびえている。でも、そんな馬鹿な。
「とにかく、雄二、その場所へ必ず来てくれよ! 絶対だぞ。俺は今から隆平を呼びに行くから」
一方的にまくし立てると悟は、もう俺の方を振り向きもせず、一目散に駅のある方向へ走り去って行った。
俺はしばらく呆然としてその場に立ち尽くしていた。一体何を言ってるんだ、あいつは? たまりかねた様に絹子が俺の肩をつついて訊く。
「な、なんなのよ、今の話? あんたの小学校の同級生、その純って子が連続殺人犯だってことなの?」
「いや、それは二百パーセントないよ」
俺は答えた。そして続けた。
「その深見純ってのはさ、もう死んでるんだ。小六の二学期だったかな、校舎の屋上から飛び降りて……自殺したんだ」