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ヒョンビンのスマホには、力の最新シングルの歌詞を韓国語に翻訳したメモがびっしりメモされていた
力の豪邸に忍び込む前に「リキのシャンプーを持ち帰る」というミッションを自分に課していたが、音々にバレたので計画はグチャグチャになった事を日記に書き込みながら言う
「なにか事件があったんじゃない?」
「ねぇ・・・ひょっとして私達かな?やばくない?」
とソアがオロオロし出す
三人が音々を連れ出したのは、決して悪意からではなかったが、突然、部屋のドアがドンドンドン!と荒々しく叩かれた
「警察だ! 鈴木音々ちゃん誘拐未遂事件でお前達を署まで連行する!」
刑事の声が、ホテルの薄い壁を突き抜ける、ホテルが用意した合鍵で部屋はあっという間に開かれ、大勢の大人が怒涛の様に押し入って来た
「警察だ!全員手を頭の上で組め!」
「若いぞ!」
「なんと、未成年だ!」
「音々ちゃんっっ!!」
その時、沙羅が音々に向かって突進してきた、沙羅の顔は涙でぐしゃぐしゃで瞬時に音々を抱え上げた
「あっ! ママー!」
「大丈夫? 痛いところない? 血出てない!?あの子達に何かされた?どこか連れて行かれた?ママに正直に話して!」
「大丈夫」
うわぁぁぁぁん「ああっ!音々ちゃん!音々ちゃん!無事でよかった!」
沙羅は音々をキツク抱きしめ、泣きじゃくりながら音々の全身を触ってまくしたてる、そこに力も駆けつけ、音々を抱きしめ、沙羅ごと抱きしめた、警察が慌てて毛布を持参し、音々をグルグル巻きにする
「ママ、暑いよ!」
と音々が抗議するが沙羅も力も聞く耳を持たず、とにかくそれぞれが何か叫びながら音々を抱きしめたまま離さない、今は救急隊員に血圧を測られている音々が沙羅に言う
「あのお姉ちゃん達おうちに忍び込んでたよ」
警察に囲まれて部屋の隅で縮こまっているサセン三人組に全員が怒りの視線を向けた
「お前らみたいな迷惑ファンはファンじゃねえっ!(怒)」
「君達!よくも私の大切な孫を!これは犯罪なんだよっ!!ええいっ!早く韓国語に訳してくれ!!」
あまりの怒りにいつものおちゃめなベーシストのイメージをかなぐり捨てて拓哉が吠える、その横で健一も顔を真っ赤にして怒っていて、自分の言葉を韓国語で早く伝えろとジフンに詰め寄る
「うわ~・・・もう廃盤になっているグッズもある・・・」
「うん・・・これ懐かしいね・・・」
誠と海斗は部屋中にあるブラックロックの公式グッズを眺め回している
「お前ら、リキの人生に何の権利があんだよ!」
さらに拓哉が吼える
「わ・・・私達・・・力のこと愛してるだけなのよ・・・」
ガタガタ震えながら勇敢にもユンジンが拓哉に口答えをした
「ファン心理の暴走ってヤツか・・・理解できねぇ~」
ハァ~と海斗がため息をつく
「力のファンは頭が逝ってるヤツが多い事がこれで証明されたな」
「日本まで追いかけて来るなんて・・・」
誠もジフンも腕を組んで肩をすくめてあきれる
「君達を逮捕する、未成年だからといってこれは犯罪なんだよ、逃亡する恐れがあるなら手錠をかけるよ」
「立ちなさい!署まで連行する!」
刑事に言われ三人がうなだれて大人しく刑事に付き添われて部屋の外へ出ようとする
「リキ!信じて!私達、誓ってその子には何もしてないわ!」
ユンジンが最後の抵抗の様に刑事に腕をつかまれながら叫ぶ
うっうっ・・・「リキ・・・愛しているの・・・」
ヒック・・・「あいしてるぅ~・・・」
ヒョンビンもソアも初めてここで自分達が犯罪を犯して警察を巻き込んだ大騒動へと発展したことを自覚したらしく、サメザメと泣き出した
音々は、毛布にくるまれたまま、あそこにキッズスマホがあるから取ってくれと沙羅に指示している、今は子供の様に泣きじゃくっている沙羅が涙を拭いて言う通りにしたが、また大泣きしながらしがみついて感情の収集がつかない沙羅を音々がよしよし、している
拓哉達メンバーは呆れ顔、刑事はすかさず三人を連行した時、力が三人の前に立った
力が一人、一人、サセングループの顔を覚えるように見据えてキッパリ言った
「僕らは今まで君達のそういった迷惑行為に耐えて来た、それはファンでいてくれる君達に感謝していたし、愛していたから、でもたった今、君達と僕達の間柄は歌手でもファンでもなんでもない、ただの子供を誘拐された被害者とその加害者だ! 」
グスッ・・・「リキ・・・」
「リキ・・・」
「・・・ごめんなさい・・・」
泣きじゃくる三人にさらに力が言う
「本国へ帰ったら君達には厳しい法的処罰を会社から与えられる事になるから覚悟してくれ、二度と僕達の前に姿を現すな!これからも僕の大切な家族を傷つけようとするヤツはどんなヤツでも、この僕がただじゃおかない!」
決定的に力に一蹴された三人は、肩を落とし、うなだれてトボトボと警察に連行されていった
ホテルの窓の外では、パトカーの赤い赤色灯が回転し、ユンジン、ソア、ヒョンビンの感違いサセングループによる、ドタバタ誘拐劇はこれにて幕を閉めた
・:.。.・:.。.
長い事情聴取が終わり・・・
二人が沙羅の家に音々を連れて帰った時は、もう午前0時を回っていた、精魂果てて、疲れ切った二人は爆睡している音々をベッドに寝かせると、音々を挟んで両サイドに倒れ込んだ、そしてそのまま三人は同じベットで暫く死んだように眠った
朝方・・・力がムクりと起き上がって沙羅に言った
「トイレに行ってくる」
グスッ「やだ!行かないで!」
沙羅はとにかくこの二人と今は離れたくなかった
ついさっきまで沙羅が一番大切なものが引き裂かれようとしていた
そこには力も入っていた、こみあげる涙を拭いもせずに沙羅が力を見上げる、もう力も音々も沙羅の人生で無くてはならない存在だ、一人として欠けて欲しくない
「すぐに戻って来るよ、君もあともう少し眠った方がいい」
「あなたと一緒じゃないと眠らない!」
分かってるの?私達はさっき永遠に引き裂かれそうになっていたのよ?
もう一秒たりとも音々とあなたと離れたくない・・・沙羅の目はそう力に訴えていた
「二分で戻るよ・・・」
力は沙羅のおでこにキスをしてベッドを離れた、沙羅は力を見送った
沙羅の横で音々が大の字になって大口を開けて寝ている、フワフワの髪の毛を撫でる、今夜何度もそうしているがもう一度音々のおでこにキスをする、また涙が溢れて来る
トイレの水が流れる音がして、ドアが開くと廊下の明かりが寝室の天井まで明るい筋を作った
力が再びベッドに入ってきて音々を挟んで反対側に寝転がった
音々のお腹の上で沙羅の手を握ってくれると途端にバターがとろけるような安心感が心に広がった
「さっき愛してると言ったの聞こえたかな?」
「私が愛していると言ったのもちゃんと聞こえた?」
力が優しく沙羅に微笑んだ
「僕が先に言ったんだと思ったけど」
「私が先よ」
沙羅も笑みを返した、どちらでもいい、お互いの愛を今確かに感じるんだから
「愛してる」
「愛してる」
そう言って二人は眠る音々を挟んでそっとキスをした
・:.。.・:.。.