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ノブレス・オブリージュ美術館の入館料は金貨18枚にも匹敵して、とてもじゃないが普通の仕事では毎日美術品を観て回るといった贅沢はできなかった。着飾った人々はホワイトシティでも裕福層の人々。つまりは貴族の人たちだった。

そんな貴族の人々をヘレンはいつも多大な神経を使って接待している。

モートは母の絵をしばらく見つめていた。

「母さん……今はまだ何も思い出せないけれど、きっとあの時……ぼくと同じく……死んだんだね」

モートはその時、黒い魂の居場所に目がいった。

このサロンの13枚の絵の中央に位置した絵画の向こう。

ここノブレス・オブリージュ美術館から遥か南の方のヒルズタウンにある建物に、黒い魂を持つものが一人いた。

モートは何故か懐かしさを覚え。口に出した。

「ギルズ……」

ギルズは強欲の書で、グリーンピース・アンド・スコーンの組織を牛耳るボスの名で、オーゼムが逃がしてしまった男だ。

モートは何か胸騒ぎがして、奇妙な感覚を覚えた。

「きっと、憤怒の書があるな。……ギルズがあの猿の集団を召喚していたんだ! オーゼムはまだこないけど、すぐにぼくが行かないと……。後のグリモワールは怠惰と傲慢だ。このどちらかあるいは両方も警戒しないといけないが、怖いけど行くしかない」

モートは一枚の絵画からずっしりとした銀の大鎌を持ち出し、瑞々しい花の飾られた大扉を通り抜け、外へと向かった。

真夜中の天空には顔馴染の白い月がでていた。昔のことだ。いつだったか、農作物を夜中まで運んでいた頃に、白い月とは友達になったかのようだった。姉さんは夜が明かりがないからきっと足元を照らしてくれているのよ。と言っていたっけ。

不思議と親近感が湧く。

ぼくには意外なほど不思議な力が小さい頃から備わりすぎていて、あの殺戮の日にも夜空に白い月が浮かんでいた。

そう、ぼくの母は有名な古代の魔女だった。

ヒルズタウンまでモートは凍て付いた道路を一直線に走り抜けていく。

雪を被った自動車や路面バスを幾度も通り抜け、通行人のど真ん中を駆けて行った。

「うん? もう一つ? 知っている黒い魂だ! 確かパラバラム・クラブで出会っている! あの女性もいた!」

ヒルズタウンまで後、3ブロックというところで、モートは突然立ち止まった。

「ああ……ぼくは……」

ギルズの黒い魂が傲慢のグリモワールを使う。

パラバラム・クラブでの女性の黒い魂が怠惰のグリモワールを使う。

街の空気が一斉にざわめきだした。

モートは震えていた。

「すごく怖いんだね……」

爆発音が至る所で鳴りだし、激しい空気の振動と共に、体長3メートルの巨大な大熊が一匹、一匹と現れ。ここヒルズタウンの高級レストラン街の一角を埋め尽くした。大熊の大軍は両手を振り上げホワイトシティを襲った。それと同時に一つの高級レストランのドアから出て来た蝙蝠のような羽のある男たちが空を舞った。


辺りから悲鳴が鳴り響く中。

おびただし数の天空には蝙蝠男。地上は大熊が暴れ出す。

だが、モートはどうしていいかわからなかった。

夜を狩るもの 終末のディストピア

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