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ごきげんよう、因縁のある女と対峙中のシャーリィ=アーキハクトです。

ナインハルト第二皇子殿下の婚約者でありマンダイン公爵令嬢のフェルーシア=マンダイン。十年ぶりの再会になりますね。

金糸のような美しい髪を腰まで流し、背も高く抜群のプロポーションを誇る身体を黒いドレスで包んだ出で立ち。同姓の私からみても、見た目だけは極上であることが分かります。

ですが、その性格の悪さが滲み出ているように見えるのは私だけでしょうか?おそらく内面は狐のまま、いやそれ以上に質が悪くなっているのは想像に固くありません。

何かと黒い噂も耳にしますし、マンダイン公爵家の圧政に堪えかねた流民も黄昏に居ますからね。彼等から得られる情報を精査するに、相変わらず民を蔑ろにするクソッタレな女であることが分かります。

令嬢だから圧政には関係無い?そんなことはありません。マンダイン公爵は良くも悪くも俗物ですからね。政務の実権はこの女が握っているのは明らかです。

そう考えると、こんな毒女を婚約者にしている第二皇子殿下には同情しますね。するだけですが。

さて、この女が来た以上一悶着あるのは避けられません。ただ、マンダイン公爵家を牛耳るだけあってその情報網は侮れません。上手くやれば十年前の情報が手に入るかもしれませんからね。

「シャーロット嬢だったかしら。これまで貴女を見たことがないのだけれど?」

早速来ましたね。

「レンゲン公爵家と所縁があるとは言え、遠戚に過ぎません。しかし、この度のパーティはジョゼ姉様にとっても大事な場でございますし、歳の近い私がお付きとして公爵閣下に抜擢された次第でございます」

「へぇ、女傑等と呼ばれる公爵閣下も人の親と言うことですのねぇ」

遠回しにお姉様を愚弄するような発言ですが、この程度で噛み付いては相手の思う壺。ジョゼも緊張しているみたいですし、私が相手をしましょう。

「はい、閣下のジョゼ姉様に対する愛はとても深いのです。此度も大切な場と言うことで私を同行させましたから」

「ただの話し相手……と?」

「もちろん姉様をお支えする役目も受けてございますが」

「あらあら、レンゲン公爵家は人が足りないご様子ですわねぇ。こんな無名の少女をご令嬢のお付きにしなければならないなんて」

「無名ではありますが、務めを完遂する覚悟です」

「あら、ごめんなさいね?貴女を悪く言うつもりは無いのよ。ただ、十年前の事件が起きてから腹心を失って大変ねと思っただけよ。そう、アーキハクト伯爵家の悲劇ですわ」

この女、こんな場でその話題を出しますか。いや、周囲には誰も居ない。人払いをしたか。

そしてナインハルト殿下は素知らぬ顔。なるほど、相変わらず用意周到だこと。

「はい、貴族にとって歴史に残る悲劇となりました」

「悲劇?私としては少し認識が違いますわね」

「と仰いますと?」

「当時のアーキハクト伯爵家は、レンゲン公爵家からの寵愛を良いことにやりたい放題しておりましたのよ?その振る舞いをよく思わない貴族も少なくありませんでしたわ」

……我慢。

「その様なことは。アーキハクト伯爵家は忠義の家として知られてございますが」

「ああ、そう言う事になっているのね。まあ、仕方無いわ。レンゲン公爵家にとっては大切な懐刀ですものね」

「失礼ながら、何を仰りたいのか……」

「あら、分からないの?私としては、貴女がこんなことも分からないくらい愚かだとは思いたくは無いのだけれど?」

この女……私の正体に気付いていますね。不愉快極まりありませんが、私か分かると言うことはあちらも分かると言うことですか。大した執念の持ち主ですね、反吐がでます。

「ふむ、どうやら二人には込み入った話があるみたいだ。ジョセフィーヌ嬢、少し離れようか」

「え?あの……」

ナインハルト殿下の誘いを断らせるのは不味い。

「ジョゼ姉様、直ぐに参りますので少しだけお待ちを」

「……分かりました」

ジョゼは不安そうにしながらもナインハルト殿下と少し離れた。妙な真似をするとは思えませんが、出来るだけ手短に済ませる必要がありますね。

「ジョゼ姉様のお付きがありますので、どうか手短にお願いします」

「いつまで猫を被っているのかしらね。その憎たらしい顔を私が忘れると思って?」

「……ええ、忘れるはずもありませんよ、相変わらず性格の悪いようで安心しました。十年ぶりの再会だなんて反吐が出ますが」

「あらあら、下品な言葉ね。シェルドハーフェンに居るらしいじゃない。どうやって生き延びたのかは知らないけれど、あんなごみ溜めになんて……貴女に相応しい場所ねぇ?」

こいつ……。

「実に開放的な港町ですよ。人を化かすのが大好きで、それ以外には何も出来ない貴女には縁の無い場所ですよ」

少なくとも貴族の権力闘争より遥かに楽しい場所です。まあ、何度も命を狙われるスリル満点な毎日は少しだけ刺激が強すぎますが。

「相変わらず減らず口を……まあ良いわ。こうやって貴女が生き延びていることが分かったのだから。今すぐに跪いて、私の足を舐めなさい。十年前の無礼を許してあげるかもしれないわよ?」

「止めてくださいよ、吐き気を我慢するのも大変なんですよ?」

「なぁに?色々取り上げられてもまだ分からないのかしら?思ったよりも頭が悪いのねぇ?」

「は?取り上げた?」

ちょっと待て、今この女何と言いました?

「ふふふっ……安心しなさい。今度こそ確実に息の根を止めてあげる。無駄に頑張って積み上げたものを全て奪い去ってから、ね?」

私の耳元でそう囁いた。その瞬間、私は全てを理解しました。

何の証拠もありませんがっ!

「……お前かぁ……!」

「あらやだ、怖い顔。その顔を情けなく歪めて、涙を流しながら無様に命乞いをする時が楽しみだわ。そう思わない?シャーリィ」

コイツだ!私から何もかも全てを奪ったのは、この女だ!あの日、裏で糸を引いていたのはフェルーシア=マンダインっ!

ようやく見つけた!私が復讐すべき相手を!

シャーリィ=アーキハクト十九歳冬の日。奇しくも彼女が十年前に全てを奪われた日付け。

彼女は自身から全てを奪った相手を見付けた。それは途方もなく強大な存在であった。

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