テラーノベル
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それから俺は、莉犬と呼ばれる警察官に連れられて、交番の奥の部屋で話を聞かれることになった。
莉犬 「俺は莉犬! よろしくね」
心音 「はい……」
莉犬 「また同じこと聞くことになっちゃうけど、名前と年齢、教えてくれる?」
心音 「はい……心音です。十六です」
莉犬 「おっけー、ありがと。……心音くん、なんであんな時間に、あそこにいたのか言えるかな?」
心音「……」
ギュッと自分の服の裾を握りしめ、俯く。どうしても、家のことは口にできなかった。
莉犬 「……そっか。無理に言わなくていいよ。話してくれてありがとう。ちょっと待っててね」
莉犬さんは責めるようなことは一切せず、ぽんぽんと優しく俺の肩を叩いて、部屋を出て行った。
【Side 莉犬】
ドアを閉め、廊下に出る。
(やっぱり、何も話してくれなかったか……)
無理もない。心音くんの体は驚くほど細かった。あまり無理に聞き出すのもよくない。俺はみんながいるデスクへと戻った。
莉犬 「ただいまー、聞いてきたよ〜」
ななもり 「ありがとう。どうだったかな?」
なーくんが心配そうに顔を上げる。
莉犬 「やっぱり、だめだったよ。何も話せないみたい」
らいと 「どうすると?」
さとみ 「今から名前で身元探しても時間かかるし、ころんのとこに預けるのが一番いいんじゃね?」
莉犬 「うーん……」
ななもり 「俺もそのほうがいいと思うよ。こんな時間だし、まずは休ませてあげよう」
莉犬 「なーくんとさとちゃんが言うなら。じゃあ、心音くんに伝えてくるね」
もう一度、奥の部屋のドアを開ける。
パイプ椅子にちょこんと座る心音くんの服の隙間から、青黒いアザが見えた。何度見ても胸が締め付けられる。
莉犬 「心音くん。俺たちの知り合いに、一時的に保護してくれる場所があるんだ。今日はそこで一晩過ごしてもらうことにしたよ」
心音 「……っ」
ビクッと体が強張る。やっぱり、どこへ連れていかれるのか怯えているみたいだ。
莉犬 「大丈夫だよ! そこの人たち、みんな本当に優しいから。朝になったらまたここに来てもらうことになるけど、どうかな?」
心音 「……わかりました」
莉犬 「よし! なら、行こっか」
部屋を出ると、なーくんが申し訳なさそうに微笑んだ。
ななもり 「俺も本当は一緒に行きたいんだけど、ここを空けるわけにはいかないから、らいとくんと残るね。ころちゃんには俺から説明しとくから、さとみくん、莉犬くん、よろしくね」
さとみ 「了解」
莉犬 「もちろん!」
心音くんが小さくぺこりと頭を下げる。
らいと 「またな、心音。気をつけていくとよ」
莉犬 「じゃあ、出発しよっか」
【Side 心音】
交番を出てから、どのくらい歩いたんだろう。
気づけば俺は、カフェのようでもあり、パン屋のようでもある、不思議な店の前に立っていた。
暗闇の中にぽつんと灯るオレンジ色の明かりが、すごく暖かい。
玄関のような場所の看板には、子ども向けのひらがなと、大人向けの漢字の文章が別々に並んで書かれていた。
『あそび べんきょう おしゃべり ゆっくりしていってね。』
『ようこそひなたびへ。お茶を飲むだけでも、本を読んだり……』
(ここ……『ひなたび』っていうんだ……)
さとみ 「入るぞ」
心音 「はい……」
ガチャ、と静かにドアを開ける。
中に入った瞬間、ふわりと温かい空気に包まれた。どこか香ばしくて優しい、おにぎりのような匂いがする。
「おかえり」
奥から、透き通るような水色の髪をした人が現れた。
さとみ 「ただいま。ころん、夜遅くにお疲れさん」
莉犬 「ただいま〜!」
ころんと呼ばれたその人は、俺の姿を見ると、目の高さを合わせるようにしてニコッと柔らかく微笑みかけてくれた。
ころん 「君が心音くんだね。おかえり」
――おかえり。
ただそれだけの言葉だった。
家に帰っても、誰も言ってくれなかった。ずっと、欲しくてたまらなかった言葉。
胸の奥がじわっと熱くなって、気づいた時には、ボロボロと目から涙が溢れていた。
ころん 「えぇっ!? 大丈夫!?」
莉犬 「あぁもう、泣かないで〜!」
焦った莉犬さんが、あわてて俺の頭をヨシヨシと撫でてくれる。
その手の温かさがまた嬉しくて、俺は子供みたいに声を上げて泣いてしまった。
♡30ありがとう
コメント
3件
もう、最初から胸が締め付けられるシーンの連続で……。莉犬さんの優しさに涙が出そうになったし、心音くんの細い体にあざがあった描写でグッときたよ。でも「おかえり」だけで心音くんの涙が止まらなくなったとこ、私も一緒に泣きそうになった。あの温かい灯りとおにぎりの匂いがすごく似合う場所で、心音くんが初めて「帰れる場所」を見つけた気がして、静かに嬉しかった。良かったね…😢💫
ゆうな
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#みじかめです、!
夢仁羽
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