テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#デジタルイラスト
る あ 。 @低浮
209
る あ 。 @低浮
3
#クロスオーバー
紫蘭
5,220
スタートーー!
夜九時。
帝丹高校の近くにある新聞部の部室だけが、まだ明かりを灯していた。
窓の外では細い月が雲の間から顔をのぞかせ、街はゆっくりと夜の静けさに包まれていく。
机の上には、美月のフィルムカメラが置かれていた。
蒼真蓮は白い手袋をはめ、小さな精密ドライバーを手にする。
「本当に開けるの?」
美月は少し不安そうに尋ねた。
「もし壊れたら……。」
蒼真は穏やかに笑う。
「大丈夫。」
「作った人は、いつか誰かがこの秘密に気づくことを想定していたはずだから。」
慎重にネジを一本ずつ外していく。
静かな部屋に、金属が小さく触れ合う音だけが響いた。
⸻
隠し部屋
カメラの底板を外した瞬間。
「……あった。」
蒼真が小さく息をのむ。
内部には、通常の機構とは別に、小さな真ちゅう製の引き出しが隠されていた。
「こんな場所に……。」
美月も目を見開く。
引き出しをそっと開くと、中から二つのものが現れた。
一枚のガラス乾板。
そして、星形をした銀色の小さな鍵。
乾板には、夜空の星々が精密に写し出されている。
しかし、それだけではない。
星の並びの中に、肉眼では見えないほど細かな線が刻まれていた。
「星座じゃない……。」
蒼真がルーペをのぞき込む。
「これは地図だ。」
⸻
月影写真館へ
翌朝、美月と蒼真は再び月影写真館を訪れた。
店主はガラス乾板を見るなり、静かに目を細める。
「……やはり残っていたか。」
「知っているんですか?」
老人は頷いた。
「これは普通の写真じゃない。」
「百年以上前に使われていた天体撮影用の乾板だ。」
彼は棚から古い天体望遠鏡の資料を取り出す。
「神崎蒼介は写真家だったが、天文学にも深い興味を持っていた。」
「倉橋俊介と協力して、星の配置を暗号に使っていたんだ。」
美月は乾板を光にかざす。
すると、窓から差し込む朝日がガラスを通り抜け、壁に淡い光の模様を映し出した。
「……!」
星々が一本の線で結ばれ、校章にも似た模様が浮かび上がる。
蒼真はすぐにノートへ書き写した。
「これが最初の手がかりだ。」
⸻
新たな影
その頃、市内の高層ビル。
最上階の一室では、一人の男が大きな窓から街を見下ろしていた。
黒いスーツ。
銀色のネクタイピン。
鋭い眼差し。
「乾板は見つかったようです。」
部下が静かに報告する。
男は口元だけで笑った。
「予想どおりだ。」
机の上には、新聞記事が広げられている。
見出しは、
『怪盗ファントム、再び予告状』
「怪盗が動くなら、我々も動く。」
男は立ち上がる。
「ルミナス・スターも、星図も。」
「すべて手に入れる。」
その男の名は――
黒崎レオン。
国際美術品オークションの主催者として知られる一方、裏社会では”失われた財宝”を集める収集家として恐れられていた。
⸻
ファントムからの贈り物
その日の夕方。
美月が家へ帰ると、玄関の郵便受けに小さな箱が入っていた。
送り主の名前はない。
中を開けると、一枚のフィルムと白いカード。
カードには美しい文字で書かれていた。
「乾板だけでは夜空は完成しません。
フィルムを月光にかざしてください。
──怪盗ファントム」
「また……。」
美月は少し笑ってしまう。
「本当に謎ばかり。」
その夜。
ベランダで満月に近づく月の光へフィルムをかざす。
すると、透明だったフィルムに銀色の線が浮かび上がった。
「地図……!」
乾板の星図とぴたりと重なる。
蒼真に連絡すると、彼は驚いた声を上げた。
「それで一枚になるんだ!」
⸻
襲撃
その直後だった。
家の明かりが一斉に消えた。
「停電?」
美月は懐中電灯を探す。
外ではタイヤの止まる音。
黒いワゴン車が家の前に止まっていた。
ドアが開く。
黒い服を着た三人の男が静かに塀を乗り越えてくる。
「カメラを回収しろ。」
低い声。
美月は思わずカメラを抱きしめた。
「誰!?」
窓ガラスが割られる。
男たちが部屋へ踏み込もうとした、その瞬間――。
パァン!
眩しい閃光が夜を白く染めた。
「なっ!?」
男たちが目を押さえる。
屋根の上から白いカードが舞い落ちる。
そして、月明かりの中に一人の人影。
黒いロングコート。
白いマント。
銀色の仮面。
怪盗ファントムだった。
「約束しましたよね。」
静かな声が夜風に乗る。
「あなたのカメラは、私が守ると。」
ファントムはワイヤーを放ち、男たちの足元へ正確に絡ませる。
三人は体勢を崩して転倒した。
その隙に、美月の前へ軽やかに着地する。
「大丈夫ですか?」
「……うん。」
美月は驚きながら頷く。
ファントムは一瞬だけ安心したように微笑み、すぐに真剣な表情へ戻る。
「彼らは始まりにすぎません。」
「これから先、もっと危険になります。」
「だから――。」
彼は美月へ小さな星形のペンダントを手渡した。
「肌身離さず持っていてください。」
「これは?」
「あなたを守る鍵です。」
そう言い残し、ファントムは夜空へワイヤーを放つ。
月を背に、白いマントが大きく広がる。
美月が見上げる中、その姿は静かに闇へ溶けていった。
⸻
ラストシーン
逃げ去るワゴン車。
その車内で黒崎レオンは静かにつぶやく。
「怪盗ファントム……。」
「やはり君も、その秘密を知っているのか。」
彼は机の上にもう一枚の星図を広げる。
そこには、美月の乾板とまったく同じ印が描かれていた。
「ならば、勝負だ。」
窓の外では、満月まであと一日となった月が静かに輝いていた。
そして、本当の争奪戦が始まろうとしていた。
⸻
――第3章 終――
次回・第4章「星図の謎」
乾板とフィルムを重ねることで現れた「星図」が指し示す場所は、街外れの古い天文台だった。美月と蒼真、そして怪盗ファントムは、それぞれの目的を胸に天文台へ向かう。しかし、黒崎レオン一味もまた、その場所へ近づいていた。満月の夜、三つの思惑がついに交錯する――。
コメント
3件
いぬ🐶さん、第5話もすごく面白かったです!カメラの中から現れたガラス乾板と星形の鍵、そして星図が地図になるっていう仕掛けにワクワクしました。怪盗ファントムが美月を守るために現れるシーン、めちゃくちゃかっこよかったです!「あなたを守る鍵です」ってペンダント渡すところ、痺れました。黒崎レオンもいい敵キャラですね。次回の天文台での対決、楽しみにしてます🔥