ー左吉ー
「左吉!」
目を覚ますと、潮江先輩の嬉しそうな、ホッとしたような声が耳に入った。
「潮江先輩!」
驚きながらも体を起こすと、隣に一平と彦四郎が布団から体を起こして座っていた。
「左吉、良かった起きて。」
彦四郎がホッとした表情で笑う。
一平も安心した顔で左吉を見ている。
「先輩。伝七は?」
「まだ意識が戻ってない。背中と腹の傷が深くてな。」
潮江先輩が伝七の状況を教えてくれた。が、その言葉に固まる。
「せっ先輩。なんですか?お腹の傷って、」
彦四郎が今にも倒れそうな青ざめた顔で尋ねる。
潮江先輩は僕達が眠ったあとのことを教えてくれた。
「そんなことが‥‥」
「‥‥伝七がそんなことするなんて、」
彦四郎と一平が眉を寄せる。
「不安だったんだよ。きっと。」
僕の声が部屋中に響く。
「え?」
「山賊に襲われて、怪我して、雨も降って、唯一の話し相手の僕たちも気絶して、いっぱいいっぱいだったんだと思うんだ。」
僕の言葉に皆黙る。
「‥‥気絶する前の話があれだったし。」
「‥‥‥碓かに。」
「何を話してたんだい?」
鉢屋先輩が問う。
「‥‥実は、」
僕達が話をすると、先輩達は僕たちを抱きしめてくれた。
「このバカタレが。そんなことするわけ無いだろう。」
「そうだぞ。お前は俺の大切な後輩だからな。」
「もう二度とそんなこと考えるなよ。」
先輩達に抱きしめられてようやく、僕達は涙を流した。
ー伝七ー
「ん‥‥‥。」
目を開けると、見慣れた天井が目に入った。
周りを見渡すと作りかけの薬や包帯が置かれていた。
「保健室、」
部屋には誰もいなく、少し開いた障子からは月明かりが入ってきている。
「っ!」
体を起こそうとすると、全身に激痛がはしった。
山賊に斬られた背中も苦無を刺した腹も痛い。動いた衝撃で傷が開いたようだ。
「ゴホッ」
おまけに血まで吐いてしまい布団は血塗れになってしまった。
最悪だ。
スッ
そんなことを考えてると、障子が開いた。
何とか首を動かして障子を見ると、そこには水が入っているであろう桶を持った立花先輩がいた。
先輩は固まったまま動かない。
「せ、んぱ‥ゴホッ」
先輩と呼ぼうとするが、再び血を吐いてしまい布団を汚してしまった。
「伝七!」
我に返った立花先輩は桶をおき枕元に座り込んだ。
「‥‥布団が血まみれだ。伊作を呼んでくる。」
先輩はそう言うと、部屋から出て言ってしまった。
しばらくぼーっとしていると頭がくらくらするのを感じる。
「血、流しすぎた‥‥‥‥。」
意識がとおくなるのを感じながら僕は目を閉じた。
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