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「浮かばれない魂なんて、そこら辺にごまんといるんだよ。そんな魂は魑魅魍魎となるんさ。あんたも気をつけな。あんまり下ばかり向いていると、いつか足を引っ張られるさね」
昔、おばあちゃんが言っていたっけ。
俺は後ろと下を見ないで、境内の玉砂利の上を歩いた。
掴まったら喰われてしまう。
だから、逃げるか隠れたりするのが一番だったりするんだ。
「さて、どこにあるんだ?」
俺は地獄への入り口を探した。
あ! 確かバスガイドさんは鏡がどうとかいっていたな。
鏡を探そう。
多分、本殿の中にあるはずだ。
こじんまりとした神社だ。
本殿の中に入れば、すぐにわかった。
鏡は神社の中央に上を向いて設置されていたので、俺は自分自身を映すために向きをこっちへ変えた。
妙に外からの風の音が大きくなって、本殿の中も寒くなって来るが、俺はその鏡の前に立ってみた。
途端に、外から雷鳴が激しくなり響き、俺を映し出す鏡面がぐにゃりと歪んだ。
だが、俺は見間違いだとは思わなかった。
ああ、鏡が歪んだんだなあとしか思わなかった……。
あれ?
鏡が歪んだわけじゃないや。
俺の姿が歪んだようだった……。
本当に俺の身体が歪んでいる。
けれども、痛みはまったくない。
ぐにゃり、ぐにゃり、ぐにゃり。
「ああ、そうか!」
俺は合点した。
身体を極度に歪ましているのは……そう、俺を鏡に入りやすくするためなんだ!
激しい雷鳴と共に、鏡が輝き出した。
落雷が近くへ落ちた轟音がする。
俺は鏡面が仄暗い洞窟を映しているのを見て、いよいよだなと思った。
キュー――ン。という、過度な吸引音と共に俺は鏡の中へと勢いよく吸い込まれていった。
…………
「うん?? 痛ってーーー!!」
俺は気がつくと頭を抑えた。
頭部がズキズキと鈍い痛みを発している。
めげずに辺りを見回すと、そこは仄暗い洞窟の中だった。
さっき、鏡面に映っていたところだな。
轟々と風の音が奥から聞こえてきた。
気温は不思議と寒くはない。そして、熱くもなかった。
痛みを発した頭を撫でながら、俺は強い風が吹いている洞窟の奥へと歩くことにした。
ピタッ。ピタンッと、水滴の音がたまにするのと、激しい風の音以外はしない洞窟の中で、俺は今日の夕食をとっていないことを思い出す。
昼から何も食ってなかった。
途端に、グゥ―と腹の虫が鳴った。