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――コホンッ! とテオの咳払い。


「そろそろ、うちのお嬢様の手を離していただけますか?」


テオの一言にハッとしたユベールは、慌ててリーゼロッテの手を離した。


「た、大変失礼いたしました!」


「いえ、大丈夫ですよ」


教会に居るとつい、うら若き令嬢である事を忘れてしまう。手を握られたのにドキドキもせず、握手的な感覚だった。


(最近、イケメンの耐性が出来てきたのかしら? 周りが美形だらけだから……)


「リーゼロッテ様。その御力の事を、領主様はご存知なのでしょうか?」


静かに三人のやり取りを見ていたラシャド司祭が、口を開いた。


(……来た!)


「いいえ、お父様は……義理の父ですから。あまり、お話しすることが無いのです。これから先も、この力について話すつもりは……ありません」


瑠璃色の目を伏せながら、リーゼロッテは少し悲しげに答える。


「……そうですか。それは、お寂しい……。いつでも、此方にいらっしゃってください。皆、お嬢様が来てくださると喜びます」


「ラシャド司祭、ありがとう存じます」


親身になって話すラシャドに、少々の罪悪感を覚えたが――これは、ルイスと決めた作戦だ。

領主だけが知らされ守っている、魔玻璃や結界についてを、リーゼロッテが知っていると教会側に悟られないようにする為に。


それから孤児院を出ると、ユベールに案内され病人の居る家を訪問してまわった。


「本当にリーゼロッテお嬢様は、素晴らしい御力をお持ちなのですね」


キラキラした瞳で、ユベールは言う。

次々に、病に侵された者達が元気になっていく姿を目の当たりにして、リーゼロッテの神々しい力にユベールは心酔した。


「そうでしょうか? 王都にいらっしゃる、国を守る聖女様には到底及びませんわ」


「……ああ、あの聖女様ですね」


ユベールの声のトーンが低くなる。返事は簡素というか、興味が無さそうだった。


(あれ? 反応薄っ!)


リーゼロッテは首を傾げる。すると――。


「ユベール助祭、本日はこのくらいで。リーゼロッテお嬢様はだいぶお疲れのご様子です」


取り分け急ぎの重病人の癒やしは終わったので、これ以上の訪問にテオがストップをかけた。


全くと言っていいほど、リーゼロッテの魔力は消費していなかったが、それを知られては不味い。あくまでも、聖女と呼ばれる人よりも、ちょっとだけ凄い……くらいで良いのだ。


教会へと戻ると、目を覚したミラとラルフがリーゼロッテを待っていた。


ミラは、帰ってきたリーゼロッテを見つけ、パアァッと顔を綻ばせると、テトテトと歩いてやって来る。

ポフンッと、リーゼロッテのスカートに抱きつくと、嬉しそうな笑顔で見上げた。


(ふあぁぁぁ……て、天使ぃ!!)


「ミラのやつ、ずっと待ってたんだ。目が覚めてから、お嬢様が帰ってくるのをさっ。たぶん、お礼を言いたかったんだ」


ラルフの言葉に思わずウルウルしてしまう。リーゼロッテは、ミラを抱き上げぎゅーっとする。


「ありがとう、ミラ。元気になって良かったね!」


そんな姿を、皆微笑ましそうに見ていた。


ただ、テオだけは冷静な瞳で、ラシャドとユベールを観察していた。




◇◇◇




「これで、近いうちに教会のお偉いさんがやって来ると思います」


「そうか……。くれぐれも用心するんだよ」


邸宅に帰ったリーゼロッテとテオは、いつもの様にルイスに教会での出来事を報告していた。

今日はミラの事があり、いかに天使のように可愛かったかを、延々と話した後での報告になったのだが。


「テオは、どうだったかな?」


「そうだな。リーゼロッテが今は話した内容が殆どだが……。あの、ユベールと言う助祭が気になった」


「どういう事だ?」


ルイスは怪訝そうにテオを見た。

思い当たることがないリーゼロッテは驚く。しいて言うなら――。


「ラシャド司祭ではなくてユベール? もしかして、私の手を握ったから?」


「……手を、握った?」


チラッと、ルイスはリーゼロッテを見る。


「そ、それは、癒しを見て感動したから……ついって感じでした」


慌てて付け加える。


「そうではない。ユベールのリーゼロッテを見る目が気になったのだ。崇拝……少々危ない感じがした」とテオ。


「崇拝なら、害は無いのでは?」


「狂信的なものでなければな。主人、奴には気をつけよ」


「……そうね、テオがそう言うなら。油断しないようにするわ」


リーゼロッテは、テオの魔獣としての勘を信じている。


「それから、リーゼロッテ。フランツの例もある。そのミラが利用されないよう、何か手を打った方が良いかもしれない」


ルイスの言葉に、リーゼロッテは暫く考え……ニッコリと笑みを浮かべた。


「はい。早速、手を打っておきます」


報告を終えて執務室を出ようとすると、ルイスに呼び止められた。

ツカツカとやって来たルイスは、リーゼロッテの手を取り、形の良い薄い唇を付けた。


(――えっ!?)


手から唇を離したルイスは「消毒だよ」と、美しく微笑んだ。


ボッと、リーゼロッテは顔が熱くなるのが分かった。


(……うぐぐ。全くイケメン耐性できて無かったみたい)


テオは、またか……と呆れ気味に肩を竦めた。

転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜

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