【 花野side 】
ほんの、
ほんの些細な事だった。
五条「お前が花野家の令嬢?……ふーんドジだな。」
花野「な”っ!?」
失礼だと思うと同時に
初めて私自身の事を見てくれる人を見つけて心底嬉しかった。
ねぇ、時透さん、五条さんにお会いしたのは私の方が先なのよ?
でも、
五条「お前と俺が婚約?ぜってぇヤダ。」
花野「な、なんでですか!?」
五条「お前ってドジだろ?俺の隣歩く時転んだろカッコ悪いだろうが。」
あれから、私は花野家の女として、
五条さんの隣に立つ為に
作法を習い、磨いた。
常に上品で、些細な事にも気づけるような、
そんな大人の女性になれるように。
けれど、五条さんには許嫁ができた。
時透宵という時透家のご令嬢。
私と立場はさほどかわりないはずなのに、
2人の婚約は結ばれた。
よっぽど上品でお淑やかな女性なのだろうと思っていた。
けれど、それから6年して
婚約が破棄されたことを聞いた。
東京の街中を
買い物がてら歩いている時、
五条さんを見かけた。
高専の制服がよく似合っていた。
和服姿もすごく素敵ですけどね。
声をかけようかと思ったが、
思考が一変した。
隣には私と同じくらいの女の子がいた。
可愛らしくて、五条さんの白髪と対になる深い黒髪。
時透宵、その人だった。
彼女は私の想像と違って
上品でお淑やかな女性ではなく、
無邪気で元気な女の子だった。
時透さんが躓いたら、五条さんが支える、
そんな光景を目の当たりにした。
いつしかの貴方は、
「お前ってドジだろ?俺の隣歩く時に転んだら、カッコ悪いだろうが。」
と、私におっしゃったのに……
五条「お前なーもっと前見ろ。」
時透「仕方ないでしょ?あんなとこに段差がある方が悪い。」
五条「いやだから前見ろって。」
花野「……………。」
五条さんは私に気づかず前を通り過ぎて行ってしまったけれど、
そんなことより、私はただ呆然としていた。
彼女が私の思い描いたような完璧な女性だったのなら、
まだ諦めがついたのに。
上品 → ✖︎ 食べ歩き
お淑やか → ✖︎ たくさん頬張る
女性 → ▲ どちらかというと幼い女の子
花野「全部ちがう、どうして、?」
物語によくいる悲劇のヒロインでは満足できない。
悲劇じゃ、ダメなんです。
だって、私はあの時から努力して
今のようになったのに、
貴女はなにもせずに五条さんの隣に立っている。
熱い視線を送られている。
【 憎い 】と。そう思っていたのに_______
花野「……私ってこんなに小皿でしたのね。」
花が育つわけがない。
自分がした事を無かった事にしたくない。
私にとって別の意味で分岐点となったから。
だから誠心誠意謝らせていただきます。
花野「すみませんでした。」
時透「え?どうしたの。」
時透「頭上げてよ〜わ、私なんかした!?」
花野「え。」
お気づきで、ない!?
時透「そういえば大丈夫?花瓶割れてたから。」
時透「あ、制服は着替えたんだね。よかった〜」
花野「………………。」
器が広くて、
皆さんからの信頼が深くて、
太陽みたいな、温かい人。
花野「う”ぅ、。」
【 憎い 】
いいえ、きっと私は羨ましかった。
貴女のような人になりたかった。
五条さんはきっと、
初めは女性としてではなかったのでしょう。
時透「え、大丈夫?もしかして、、お腹空いた?」
あんな事をしたのに、
気にも留めず、というか、気づかないくらい、
大きな器に、
種を植えたくなったのでしょう。
温かなこの人に
きっと、
惚れてしまったのでしょう。
花野「ごめんなさい…」
時透「本当になにがあったの?」
時透「もしかしてプリン食べた?」
時透「初プリンだったら許すけど。」
花野「プリン?」
時透「プリン知らない!?」
花野「あ、はい。」
時透「そっか。そういえば私も知らなかったなぁ〜」
時透「ね、花野ちゃん、もしよかったら今度2人で出掛けようよ。」
時透「街中にはね、美味しいものがいっぱいあるんだよ。」
時透「ゲームセンターにも連れて行きたいなぁ〜」
花野「ゲーム、、センター?」
時透「なんか大っきくて遊ぶところ!」
花野「遊ぶ、、」
時透「うん!よかったらだけど」
花野「……それは、なんだかお友達みたいですわ。」
彼女はきょとんとしてから
笑みを浮かべてこう言った。
時透「なに言ってるの、友達でしょ!」
そして、きっと、
私も温かなこの人に
惹かれるのだろう。
花野尊 17歳 お友達ができました。
太陽のような、無邪気で元気な女の子です。
花野ちゃんが持っていた
黄色の薔薇の花言葉
【嫉妬】
【愛情の薄らぎ】
【友情】
コメント
5件
うわぁー切ない…でもなんかお友達として仲良くなってほしい!花野ちゃん、報われてくれ。
花野ちゃん根良すぎて、もはや尊い。 なんか、あの、伏線?回収?がすごくてビックリ