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憂海歌
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心
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告白しようと決めたのは、特別な出来事があった日ではなかった。
達宣が誰かと楽しそうに話していたからでもない。
誰かに嫉妬したからでもない。
ただ、いつものように二人で話していた。
達宣は今日あったことを楽しそうに話し、祐希はそれを聞いていた。
話が途切れるたび、達宣は何かを思い出したようにまた話し始める。
祐希は、その横顔を見ていた。
この人といると、時間が早い。
もう少し話したいと思う。
明日も会いたいと思う。
何気ない一日を、達宣と共有できることがうれしい。
そして、いつからか。
達宣が自分以外の誰かと過ごす時間を、当たり前のこととして受け止めながらも、自分がその隣にいたいと思うようになっていた。
ずっと、そうだった。
ただ、認めてしまえば、今までと同じではいられなくなる気がしていた。
「祐希さん?」
達宣がこちらをのぞき込む。
「どうしました?」
「……大塚」
「はい?」
祐希は、少しだけ視線を落とした。
言うなら、今しかないと思った。
このまま何も言わずにいたら、きっと明日も同じように笑ってしまう。
達宣が隣にいてくれることに満足したふりをして、もっと近くにいたい気持ちを隠し続ける。
それができなくなったのは、達宣と過ごす時間が、あまりにも幸せだったからだ。
「俺、大塚のことが好きなんだ」
達宣の表情が止まった。
「……え?」
「後輩だからとかじゃなくて。ひとりの人として、好き」
祐希は達宣を見た。
いつものように落ち着いた顔をしていたかった。
でも、声は少しだけ緊張していた。
「一緒にいると楽しいし、もっと話したいと思う。……できるなら、これからも、今より近くにいたい」
達宣は何も言わなかった。
驚いているのか、困っているのか。
祐希にはわからなかった。
だから、これ以上は続けなかった。
「急にごめん。今すぐ返事がほしいわけじゃないから」
「……祐希さん」
「うん」
「俺……」
達宣は何かを言いかけて、口を閉じた。
頭の中が、うまくまとまらなかった。
祐希が好き。
それは間違いない。
一緒にいると楽しいし、話せるとうれしい。会えないと少し物足りなくて、祐希に覚えていてもらえることがうれしい。
でも、それが祐希の言う「好き」と同じなのか。
自分には、まだわからなかった。
「……ごめんなさい。ちょっと、びっくりして」
「うん。そうだよね」
祐希は小さく頷いた。
「ゆっくり考えてくれたらいいよ」
その声は、いつもと同じだった。
達宣を困らせないように。
今まで築いてきた関係まで、失わせないように。
祐希は、自分の気持ちを伝えたあとも、達宣を急かさなかった。
「今日はもう帰ろうか」
「……はい」
並んで歩く。
いつもなら自然に続く会話が、今日はなかなか出てこなかった。
別れ際、達宣は何度も祐希の顔を見た。
祐希はいつも通りに「またね」と言って、笑ってくれた。
その笑顔を見た瞬間、達宣の胸がぎゅっとなった。
――祐希さんは、明日もこうやって笑ってくれるんだろうか。
そんなことを考えている自分に、達宣はまだ気づいていなかった。
コメント
2件
初コメ失礼します‼️ 01~06まで毎度更新を楽しみに待っていました🙏🏻🙏🏻次も楽しみにしてます💓💓