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揺れる心情 凛視点
夜の街を、凛は無我夢中で走っていた。息が苦しいのは全力で走ったせいか、それとも胸の奥のざわめきのせいか。
(兄貴が……俺を、好き?)
信じられない。
いや、信じたくない。
兄弟で、ずっとライバルで……追いかけ続けた存在なのに。
頭の中で何度も冴の声が蘇る。
「弟として見られない。ずっと、好きだった」
心臓がうるさく鳴る。
嫌悪ではない。
かといって肯定できるはずもない。
(どうして俺、あんなに動揺したんだ)
冴の手が頬に触れた瞬間――あの感覚を、今も忘れられない。
拒んだはずなのに、胸の奥では熱が広がって離れなかった。
「……っくそ」
凛は頭を抱え、道端にうずくまる。
冴のことが嫌いなわけじゃない。
むしろ、誰よりも意識している。
追いかけたい、並びたい、認められたい。
その気持ちが、全部“兄弟だから”で片付けられると思っていた。
でも、冴が言葉にした瞬間、違う感情が顔を出した。
拒絶と同時に、妙な安堵。
そして、胸の奥に残った甘い痛み。
(俺……どうしたらいいんだよ)
凛の心は揺れていた。
逃げたはずなのに、頭から冴が離れない。
サッカーのライバルとして以上の何かが、確かに芽生えてしまっている。
俺は弟なのに…