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俺の彼女は嘘つきだ。
「おい!誰だよここの書類捨てたやつ!大切なものだと言っただろ!話聞いてなかったのか!」
「……すいません!俺です。○○さんともう一度やり直します。ごめんな、○○さん」
「え、あ、いえ、、すいませんありがとうございます、、!」
ほらな、また嘘をついた。何事にも慎重に行動する俺の彼女が社内メールに目を通さないわけが無いやろ。すぐそうやって人を庇う。
「はぁ」
俺は今日何度目なのかも分からないため息を着くと、モンスター片手に奮闘する彼女達の元へ向かった。
「大変そうやね、兄貴?」
「あ、まろ、、」
嘘をついたと気づかれているのがわかったのか、悠佑は俺と目を合わせてくれない。俺は優しい彼に苦笑いしながら言った。
「しょうがないんだから。もう、、、手伝うで」
「だから!!!兄貴は人を庇いすぎなの!!!」定時などとっくにすぎた時間。俺は悠佑と2人で住んでいる家へと帰っていた。俺の愛しい彼女は肩を竦めながらも言った。……上目遣い可愛いかっての。
「だってさー。あの子困ってたやん。この間風邪で休んどったから社内メールも分からんかったんやろ?かわいそうやん」
「だからって兄貴が庇う必要は無いやろ!事情を説明すればよかったんやし」
「あの上司人の話聞いてくれへんのやもん」
ああいえばこういうとはこのことだ。俺の彼女はすっかり自分の心配なんか忘れているようだ。俺は元々握っていた手をもう1度強く握った。
「まろがやなの!彼女が嫌な目にあって嬉しいわけないやろ!!」
「…/////」
はいかわいい。耳真っ赤になって目をそらすなんて、、もう一周まわって誘ってるやろ?
俺はそらされた彼の顔を手で無理やり俺の方へ向けた。少し驚きながらもそっと目を合わせてくる。
チュッ
軽いリップ音が誰もいない道に響いた。少し時間を置いてから顔を離すと、かわいいかわいい俺の彼女は耳だけじゃなく顔全体を真っ赤にさせながら物足りなそうに自分の唇をチロっと舐めていた。その姿があまりにも妖艶で、もう一度したくなったがここはひとまず我慢。
「……兄貴が嘘をつくことが悪いってわけじゃないんよ。俺が言いたいのはそういうことじゃなくて、兄貴にもっと自分を大切にしてもらいたいんよ」
彼はまだ赤い顔を俯きがちにして言った。
「心配かけて、、ごめんな?」
あぁ、ほら。こんなことを言われるから、いや、言われなくたってきっと俺は何度でも彼を許してしまうのだろう。
「自分を大事にね。俺の大切な彼女なんやから」
あれから、、、3ヶ月たった。兄貴は相変わらず自分が傷ついてしまうような嘘をついている。だから俺は今日このときをずっと待っていた。嘘をついても良い、この日を!!
「兄貴!今日は休みやね!」
「おはよ、まろ。まろが嬉しそうで俺も嬉しいわ」
眼福すぎる、、、!朝からゆっくり兄貴の微笑みを見ることが出来るなんて、、、、!!……って違う違うそうじゃなくて…
「今日は!なんの日でしょーか!」
兄貴は首を傾げると壁にある子犬柄のカレンダーを見た。
「4月1日、、やから、、、エイプリールフールか?」
「そう!そうなんよ!やからな!」
俺は不思議そうに首を傾げる兄貴をぎゅっと抱き締めた。
「やからな、今日は兄貴、優しい嘘はつかんで欲しいんや。せっかく休日やし。俺と兄貴だけやしさ。なんなら俺を騙して欲しいな、なんて」
兄貴は突然の抱擁に顔を赤らめながらも俺に聞いた。
「いや、でも、、俺そういう嘘苦手やねん。だからさ、、教えてや」
俺は抱き締めた兄貴の顔をよく見た。恥ずかしそうに、でもしっかり俺を見ていた。悠佑にとっての悪い嘘はきっと俺にとって嬉しい宝物のような言葉に聞こえるのだろう。だって彼が傷つきやしない、最高の言葉なんやから!
だから俺はにっこり微笑みながら言った。
「もちろん!」