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『匿名より俺を見て』
「……もう気にしなくてええんちゃう?」
缶チューハイのプルタブを引き抜くシュワッという音が、静かなリビングに響く。
ソファの端で画面を睨みつけ、指を高速で動かしている恋人の隣に腰を下ろした。
画面から漏れる光に照らされた表情は、あきらかに不機嫌そのもの。原因なんて聞かなくても分かってる。最近、俺へのネット上のアンチコメントが増えてるからだ。
「……だってさぁ!?なんでまろがこんなこと言われなきゃいけないの? まじ意味わかんねぇ」
ふうふうと息を荒げておこおこしている姿は、ぶっちゃけめちゃくちゃ可愛い。
俺自身、そういう心ない言葉に全く傷つかないわけじゃない。嫌なものは嫌だし、そりゃあ凹むことだってある。でも、この活動をしてる以上、ある程度は聞き流す術を身につけてきた。だから俺本人は「まあ、言わせておけば?」くらいに思ってるのだ。
それなのに、俺以上に怒って、俺のために本気でイライラしてくれている。
「はいはい、わかったから。一回スマホ置いて?」
「置けない! ほんとアイツら失礼すぎる! 俺らが黙ってたら調子乗るし、だいたいさぁ――」
社会人経験もあって、普段はメンバーや周りの大人とも上手に折り合いをつけて接してる男だ。本来なら、こういうネットのアンチなんて「スルーが一番」って分かってるはずなのに。
俺のことになると途端に冷静さを失って、余裕がなくなっちゃうんだから、本当困った恋人だ。
俺は呆れ半分、愛おしさ満点のため息をつくと、ないこの手から強引にスマホを奪い取ってローテーブルに放り投げた。
「あっ、おい」
「俺のために怒ってくれるのは嬉しいよ。ありがとう」
反論しようとしたないこの肩を抱き寄せて、耳元で呟くと、腕の中の身体がピクッと跳ねた。
「でもさ。そんな奴らに時間使うの、勿体なくない?」
「……っ、でも、俺許せないんだよ! まろが変な言われようすんの!」
「俺は平気。それに……アンチなんか見てるヒマあったら、俺だけ見ててほしいんやけど。俺も、ないこと過ごす時間の方が100万倍大事やし」
「……」
抱きしめる腕に少しだけ力を込めると、さっきまでプンプン怒っていたないこの体が、ゆっくりと力を抜いていくのが分かった。
胸元に顔を埋めてくる可愛いやつ。ガチギレっていうより、ただ俺が好きすぎて意固地になってただけなのが丸わかりで、愛おしさが爆発しそう
「……ないこ? まだ怒ってる?」
顔を覗き込みながら、優しく髪を撫でてやる。
「…当たり前だろ、活動すらまともにしてねぇやつらがぴーぴーぴーぴー言いやがって」
「ふふっ、まぁそれはそうやな」
胸元でくもった声を上げるないこの頭を、ぽんぽんと優しく撫でる。
いつもなら社長として、グループのリーダーとして、誰よりも大人な対応ができる男なのに。……ほんまに可愛すぎるやろ。
「まあ、何も生み出してない奴ほど声だけはでかいからな。気にしたら負けやって」
ないこの顎に指を引っかけて、少しだけ上を向かせる。
まだちょっと不満そうに唇を尖らせてるけど、さっきまでの尖った雰囲気はすっかり毒気が抜けて、俺に甘えたい顔になってる。
「…ほら、まだそんな顔すんの? 俺がどんだけ『ないこ不足』か、分かってて言ってる?」
わざとらしく溜め息をついて見せながら、尖らせたその唇に軽く自分の唇を重ねた。
ちゅ、と小さく音を立てて離れると、目の前でぱちぱちと瞬きをする恋人の頬に手を添える。
「アンチの愚痴言うてるないこも可愛いけど、俺は俺を好きって言ってくれるないこの方が好きやで。……もう、アンチの話はおしまい。な?」
「……はい」
「よし、えらいえらい」
素直に頷いた頭を、これでもかというくらいワシャワシャと撫で回す。髪がくしゃくしゃになっても気にせず、俺にすり寄ってくる。…大型犬か。
「……ん、ちゃんと俺のこと見てくれたな」
小さく笑いながら、もう一度深めに唇を重ねる。
さっきの軽いキスとは違って、俺を占領していたアンチの影を完全に上書きするみたいに、ゆっくりと熱を溶かしていくようなキス。
離れ際に吐息が触れ合うくらいの距離で、ないこの目を見つめた。
「……頼れるしゃっちょもカッコええけど、俺の前でだけそうやって嫉妬して甘えてくれるないこが、世界でいちばん可愛い」
そのまま抱きしめる腕の力を強めて、ソファの上にゴロンと二人で横倒しになる。
俺の胸の上にすっぽり収まったないこの背中をゆっくり撫でながら、耳元で低く囁いた。
「今日はもうスマホ禁止な。俺のことだけ考えて、俺の腕の中で甘えてて?」
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enfp
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あおば
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コメント
3件
みぅ🤍です。読ませてもらいました! TLだけど、心理描写の繊細さがすごく良かったです。まろが「アンチより俺だけ見てて」って言う独占欲と、ないこが恋人のために怒り狂うギャップ…どっちも愛おしくなる。普段は社長として大人なのに、まろのことになると冷静さを失うないこの姿、すごくリアルで刺さりました。 あと、まろの「ないこ不足」って言葉、めちゃくちゃグッときた。TLの良さって、感情の振れ幅にあると思うんですけど、この作品はまさにそれ。二人の温度が手に取るように伝わってきて、読み終わったあと心があったかくなりました。 だいすさん、続きも楽しみにしてますね🌙