テラーノベル
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怜也の瞳から、かつての「優しさ」の欠片は完全に消失していました。今、彼の目に映る茜、由奈、心美の姿は、血の通った人間ではなく、自分の生活を潤すための**「高機能なツール」**でしかありません。
「愛? そんな非効率なもの、実習の火花と一緒に散ったよ」
怜也は、学校の屋上にある特等席(男子生徒たちが怜也のために運び込んだソファ)に座り、三人を並ばせて「機能チェック」を始めました。
「道具」としての格付けと運用
「まず茜。お前は『便利屋(ロジスティクス)』だ。僕が欲しいものを言わなくても揃えておけ。あと、その無駄な喋りはノイズだから、僕の前では許可があるまで喋るな」
「……っ。了解だよ、怜也きゅん。あーし、怜也きゅんの完璧な空気(エア)になるにゃん。……静かに、でも完璧に尽くすね」
第3位の茜は、以前の爆発的な元気さを封印しました。怜也の「冷徹さ」を「孤高の王の孤独」と変換し、無言で彼の身の回りを整える影のような存在になりました。怜也にとって、彼女は「オートチャージ機能付きの財布」です。
「次、由奈。お前は『外注(アウトソーシング)』だ。僕の出席日数、課題、将来の就職先の手配……全部お前がやれ。お前の人生の時間は、僕の余暇を作るためにあるんだ」
「……分かってる。あんたは座ってて。私が全部、あんたの思い通りに舗装してあげるから。あんたの苦労は全部、私が背負ってあげる」
第2位の由奈は、もはや母親を通り越して「奴隷的な秘書」と化していました。怜也の理不尽な要求に応え続けることで、彼女は「怜也を支配しているのは自分(彼を支えられるのは私だけ)」という歪んだ万能感に縋っていました。
「最後、心美。お前は『看板(トロフィー)』だ。僕が外を歩くとき、僕の価値を証明するために横にいろ。お前のプライドも家柄も、僕を飾り立てるためのメッキに過ぎない」
「……ええ。存分に私を飾りとして使いなさい。私が美しければ美しいほど、それを従えるあなたの絶対性が際立つのだから。……心地いいわ、怜也。もっと私を辱めなさい」
第1位の心美は、かつての高嶺の花の面影もなく、怜也に否定されることに至上の喜びを感じる「依存症」に陥っていました。
支配の完成:感情の廃絶
ある日の実習中、怜也は火花が散る作業場の中で、三人を呼び集めました。
「いいか、お前らに新しい『ルール』を与える。お前ら同士での会話は禁止だ。僕を介さないコミュニケーションはバグでしかない。お前らの意識は、24時間、僕という端末にだけ接続しておけ」
怜也は冷たく言い放ち、心美の家から献上された高級時計の針を見つめます。
「……あ、あと絵美さん。あんたは『物流(インフラ)』だ。僕が遊ぶための金と場所、それだけを供給してればいい。母親面(づら)するのはもうやめてくれない? 吐き気がするんだよ」
物陰で見ていた絵美は、震える手で頬を染めました。
「……あぁ、なんて冷たい目。……いいわ、怜也くん。私の資産も、コネも、私の体すらも、あなたのサボり生活を維持するための『部品』にしてあげる……」
壊れた王座のサボり生活
もはや怜也には、中学時代にフラれた痛みすら思い出せませんでした。
目の前にいる美女たちが泣こうが、絶望しようが、彼の心は1ミリも動きません。彼にとっての「幸せ」とは、三人の人生を徹底的にすり潰し、その残滓(ざんし)で自分が一切働かずにぐうたらと過ごすこと。
「(……あー、楽だな。何も考えなくていい。僕が適当な命令を下すだけで、最高級の飯が出てきて、最高級の女が傅(かしず)いて、面倒な事務作業は全部片付く)」
怜也は、由奈に膝枕をさせ、茜に足を揉ませ、心美にぶどうを食べさせながら、ぼんやりとスマホの画面を眺めていました。そこには、かつての自分が憧れていた二次元の美少女が映っています。
「……リアルな女なんて、結局は性能の良い道具に過ぎない。ゲームのキャラの方が、まだマシだ」
怜也がそう吐き捨てると、三人は悲しむどころか、「もっと性能を上げなければ、王に捨てられる」という恐怖に震え、さらに奉仕の質を上げようと狂気的な競争を始めるのでした。
愛情も、共感も、人間性も捨て去った「クズの完成形」。
怜也は、三人の「かわいい」を完全に牙抜きし、自分の怠惰な王国を築き上げました。しかし、その王国の中心にいる彼は、かつてよりもずっと、真っ暗な虚無の中に沈んでいることに、自分でも気づいていないのでした。
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