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築留工業の廊下は、もはや怜也にとっての「凱旋通路」でした。かつては壁際を這うように歩いていた少年は、今や両脇にトップクラスの女子を引き連れ、まるで獲物を見るような冷酷な視線で、周囲の男子生徒たちを眺めています。
そこには、以前の「お人好しな怜也」を心配していたかつての友人たちの姿もありましたが、今の怜也にとって彼らは「劣等種」という名の背景に過ぎませんでした。
「非効率な群れ」への嘲笑
昼休みの学食。圧倒的な「王の席」を陣取った怜也は、自分のために茜が並んで買ってきた豪華な食事を前に、周囲の男子たちを値踏みするように見回しました。
「……ねぇ、見てて哀れにならない?」
怜也は、隣で甲斐甲斐しくエプロンをかけてくれる心美に、わざと聞こえるような声で言いました。
「あそこで一握りの女子の気を引こうとして、必死にギャグを飛ばしてる奴ら。あんなにエネルギーを無駄にして、得られるのは冷笑だけ。……コスパ悪すぎでしょ」
食堂の一角では、男子たちが数少ない女子生徒を囲んで騒いでいました。かつての怜也も、あの中に混じろうと必死だった側です。しかし、今の彼は、自分のために由奈が書いてきた完璧なレポートをパラパラと捲りながら、鼻で笑いました。
「由奈、あそこの奴らに教えてあげなよ。女っていうのは、媚びるんじゃなくて『機能』として管理するものだってさ。……あぁ、無理か。あんな底辺のスペックじゃ、理解すらできないだろうし」
「……そうね。怜也の足元にも及ばない連中だわ。あんなの見なくていいから、早く私の作ったスープを飲んで」
由奈の冷たい肯定に、近くにいた男子たちが怒りと悔しさで顔を歪めます。
絶望の格差:公開処刑
我慢できなくなった一人の男子生徒が、怜也のテーブルを叩きました。
「おい、長島! さっきから聞いてりゃ調子に乗りやがって! お前だって、ちょっと前までは俺たちと同じ……」
「『同じ』?」
怜也は食事を止め、冷え切った瞳で男を見上げました。その視線には、怒りすらありません。ただ、不快な虫を見るような、圧倒的な「格差」が宿っていました。
「勘違いしないで。僕はあの日、気づいただけだ。お前らが必死に追いかけてる『恋愛』なんていう茶番の正体にね。お前らは選ばれるのを待つだけの家畜。僕は、彼女たちを自分の部品として選別した支配者。……どこが同じなの?」
怜也は懐から、絵美から「小遣い」として渡された札束の束を無造作に取り出し、男の足元に数枚放り投げました。
「ほら、それ。お前ら、そのはした金のためにバイトしてるんだろ? それで適当なプレゼントでも買って、女子に媚びてきなよ。……あ、でも無駄かな。今の築留の女子は、みんな『僕の一部』になりたがってるから」
「て、てめぇ……!」
男が殴りかかろうとした瞬間、茜が静かに立ち塞がりました。その目は以前の元気なギャルのものではなく、主を守る狂犬の鋭さでした。
「怜也きゅんの時間をノイズで汚さないで。消えて。……じゃないと、あーしの『力』、全部使ってあんたの居場所、学校中から消しちゃうよ?」
第3位から第1位、さらには絵美という経済力まで手にした怜也の前では、一般の男子生徒など、一捻りで社会的に抹殺できる存在になっていたのです。
孤独な支配者のサボり生活
男子生徒たちが震えながら去っていくのを見送り、怜也は深く溜息をつきました。
「……はぁ、退屈だ。どいつもこいつも、レベルが低すぎて話にならない。ねぇ、心美。今から僕、昼寝するから。……あいつらの顔が見えないように、カーテン代わりにそこに立ってて」
「ええ、喜んで。あなたの視界に、ゴミが入らないようにしてあげる」
心美は優雅に立ち上がり、怜也を世俗の視線から遮る盾となりました。
怜也はソファに横たわり、由奈の太ももを枕にしながら、茜に咥えてもらいながら心の中で嘲笑を続けます。
(……モテない奴ら。あいつらが一生懸命『青春』なんていうゴミを追いかけてる間に、僕はこうして、世界で一番贅沢なサボりを楽しんでる。……女なんて道具、男なんてゴミ。……あぁ、これこそが僕が求めていた、究極の『平和』だ)
かつての「優しさ」を捨てたことで手に入れた、最強の怠惰。
しかし、自分を見下す視線を向ける怜也の瞳の奥には、もはや何の色も宿っていませんでした。彼は、自分以外の人間をすべて「モノ」として定義することで、自分自身をも、感情のない「ガラクタの王」へと作り変えてしまったのでした。