僕は自分に興味がなく、いつも寝癖まみれの髪を兄は手ぐしで直してくれた。服のシワも、父や兄のものならばアイロンで伸ばすが自分の服ならばどうでもいい。めまいがして兄に学校に行くことを停められても向かい、道端で動けなくなったところを、先生の捜索により発見されることもあった。
僕は家族を否定されることだけに怒りを顕にするからとクラスメイトに遊ばれることがある。乱暴な口調で相手を罵倒して泣かせてしまったり、ある日の僕は怒りのパロメーターが強化されたためか暴力を奮ったりと問題行動にまで発展するようになった。もとより陰口や悪口はいけないことだと教えていた先生が特に僕の家族への言葉を慎むようにと言い聞かせるようになっていたようだ。
このような日々を送っていたために僕は周りから変だと言われるようになった。それ自体への不満だとか嫌悪だとかは一切ない。とはいえ、それが家族に悪影響を与えているのであれば改善する必要があるだろうと漠然と思っていた。
兄を呼びにご友人の部屋を訪ねようと扉の前に立つと僕の話をしていた。
「お前の弟、変だって言われてたぞ。」
「は?どこが?」
「不潔で傍迷惑な暴君なんだって。」
「あいつにとっちゃ、自分のことよりも周りのことの方が大切なんだよ。もっとあいつの話ちゃんと聞いてやれよ。」
「ふーん、お兄様が言うなら絶対だな。」
「お兄様って言うな、気持ちわりー。」
兄が僕のことをそういう風に捉えてくれていることがとても嬉しかった。気にも止めていなかった言葉が兄の気持ちを知らせてくれたようで僕を不潔だと言った人に感謝をしたいと思う。
僕が兄を大切に思う気持ちも周りという言葉に含んでくれているのだろうか。
兄こそが僕の最大の愛を受けるにふさわしい御仁なんだ。