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最初は、ただの好意だと思っていた。
Snow Manとして活動する中で、
メンバーをよく見るのは当たり前で、
隣にいる時間が長くなるのも、特別じゃない。
そう、思い込もうとしていた。
蓮が笑えば、少しだけ嬉しくなる。
蓮が黙れば、何を考えているのか知りたくなる。
それだけのことだ、と。
けれど、いつからだろう。
楽屋で蓮がスマホを見ていると、
「誰と?」と聞きたくなる自分がいた。
共演者と話していれば、
胸の奥がひりっと痛む。
その感情に名前をつけるのが、怖かった。
⸻
ある日、リハ終わりの廊下で、
蓮がスタッフと並んで歩いている後ろ姿を見た。
ただ、それだけの光景。
なのに、胸の奥がざわついた。
――俺の知らないところで、
――俺の知らない顔を見せてる。
その事実が、ひどく耐え難かった。
(……はは、重症だな)
小さく笑って誤魔化す。
独占欲だなんて、
そんな重たい言葉で呼ぶほどのものじゃない。
……そのはずだった。
⸻
夜が近づくにつれて、
仕事終わりのスタジオは静かになっていく。
機材の片付けの音。
遠くで響くスタッフの声。
メンバーが一人、また一人と帰っていく中、
佐久間はなぜか、その場を離れられなかった。
理由は、わかっている。
蓮が、まだ残っているからだ。
⸻
照明が落とされ、
スタジオの隅だけが薄暗く光る。
鏡に映る自分の顔は、
いつもの明るい佐久間じゃない。
蓮がバッグを肩にかけ、
出口へ向かおうとした、その瞬間。
足が、勝手に前に出た。
「……れん」
呼んだ声は、
自分でも驚くほど低く、静かだった。
蓮が振り返る。
「どうしたの?」
無防備なその表情に、
胸の奥がきゅっと締めつけられる。
こいつは、何も知らない。
俺がどんな目で見ているかも、
どんな気持ちで名前を呼んでいるかも。
⸻
スタジオには、もう二人しかいない。
暗さが、距離を曖昧にする。
ここで一線を越えたら、
戻れないことくらい、わかっていた。
それでも――
「少し、話さない?」
そう言った自分の声は、
どこか決意めいていた。
蓮は少しだけ迷ったあと、
小さく頷いた。
その瞬間、
胸の奥で何かが、静かに壊れる音がした。
⸻
――そして、深夜のスタジオ。
誰もいない空間で、
佐久間は初めて、自分の本音を隠すのをやめる。
それが、
あの夜へと繋がっていく。