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俺は立ち上がり、クーラーバッグを確認してから、隣で倒れている音星を起こそうとした。だけど、もう少し休ませてやってからの方がいいだろう。と、考えた。かなり焦熱地獄はきつかったからな。シロも起き上がる気配がないんだし。
それにしても、ここはどこなんだ?
地獄にもこんなところがあるんだ。
ほんと、涼しいなあー。
辺り一面が、小さな白い花しか咲いていない花畑だ。
ソワソワと東の方から心地よい風が吹いてくるぞ。
うん?
この花畑? 周囲が海で囲まれているぞ?
ここはきっと、焦熱地獄に浮かんでいる小島の一つなんだ!
地獄マニアの俺でも知らない場所だ!
さて、ここからはやっぱり別行動だ。
花畑はかなり安全なんだし。浄玻璃鏡を持つ音星とシロはここで休ませておいて、一人で弥生を見つけに行こう!
弥生は恐らく、この下層の大焦熱地獄に行ったんだ。
多分、生身の人間の俺は戻ってこれないだろう……。
じゃあ、元気でな……音星! シロ!
今まで、妹の弥生のために、一緒に地獄旅をしてくれて、ほんとにありがとな!
さて、どうやって、下層へ行こうか? また、洞窟を探さないといけないだろうな。
大焦熱地獄……。
一体、どんなところだろう?
本で読んだけど、ここよりも熱いところらしいんだけどな。
しばらく、一人で小さな白い花畑の右端へ海沿いまで歩いた。すると、波で削られた断崖に浮き出た窪みを見つけた。辺りはそよそよとした涼しい風が吹いているけど、そこへ近づくにつれ強風が襲いだしてきた。
「うん? 崖に穴が開いている……いや、違う! 洞穴だ!」
よく見ると崖の窪みに、ボッカリと大口を開けた洞穴があった。
あ、そうか!
ここは、焦熱地獄だった!
当然、下層へ行く道があるんだ!
よし! じゃあ、行ってみるか!
地面から洞穴まで、約1、2メートルくらいだ。俺はロッククライミングの経験はないが、高校生活の間は体育でバスケくらいはしているから、崖にできた洞穴までなら、楽にジャンプして入れるだろう。
「えい!」
助走してジャンプをすると、見事洞穴へ体を捻じ込めた。
真っ暗闇のはずの洞穴の中は、天井に浮いた無数の人魂で仄かに明るかった。潮の香りがして。強風が吹きすさび。苔がびっしりとした細い道になっていた。
進めば進むほど、ビュウビュウと、強い風が吹いていて、同時に潮の香りが強くなってくる。
小一時間ほど進むと、洞穴を出た。
外は……。
「空が焼けている?!」
そこは、真っ黒に焼けた大空が広がる。無限に広がる大地だった。
高温で真っ黒になった土が広がり。至る所に、大きな穴が開いていて、潮の香りがする水が張ってある以外は、全て猛火が生き物のように暴れている焦げた大地だった。
目の前で、炎が踊り狂い。
俺の前を通り過ぎていく。
すぐに迫り来る高熱を後ろに飛んで避けたが、大汗を掻いては、炎に触れてジュッと音を立てて汗が蒸発した。
「アッチーーー!! アチチチチッチ!!」
ここは、大焦熱地獄だ。
五戒を破って、浄戒(悪いことをしない清浄なもの)の尼を犯した者が落ちるといわれている。