コメント
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のーんさんんん、最高ですね、ほんとに最高です!!この作品でまた色々頑張れます、!
やっとここまでこれました!
亀更新でほんとごめんなさい。
佐野さんががんばってくれないので、吉田さんが痺れを切らしちゃいました。
テレビを見ても、漫画を読んでも、気持ちは動かない。
クラスの誰かがおもしろいことを言っても、出るのは乾いた笑いだけ。
彼と話さない日常に楽しさなんて微塵も見出せなくて、ただ淡々と日々が過ぎていく。
この世界の全ての色が彼に奪われてしまったみたいだ。
エンタメに関心がなくなって、現実逃避に彼の愛読書に手を出した。
練習に勉強に忙しいため進みは遅いが、少しでも読み進めようと休み時間も読書に耽ける。
でも実際、読みはじめてみると引き込まれてしまい、時間を溶かすとはこのことかと初めて実感した。
そして席に着くとすぐに本を開く習慣も板に付いてきた頃。
俺を文字の世界から引き上げたのはチャイムではなく、ずっと求めていた愛しい声だった。
「…佐野くん、」
両肩を掴まれるのと同時に静かに名前を呼ばれる。
その声は、どれだけ望んでももう聞けないんだと諦めていた声で。
頭で考えるより早く、反射的に振り返る。
「っじんと…?!」
驚いたように目を見開いたかと思えば、すぐに目 尻に皺を寄せて、困り眉のかわいい笑顔。
「それ、読んでくれたんだ」
はにかんだ声には安堵の色が伺える。
「嫌われたと思ってた、よかった…」
「っえ、なんで、」
「だって、あれから返信、来ないし…」
それを聞いてトークルームを確認すると、確かに、あの日のやりとりを俺は既読無視で終わらせていたらしい。
そうか、あの連絡が来たあと、俺はすぐに……。
「ご、めん……」
「あれから連絡ないし、会いにも来てくれないし、練習してる佐野くんのことどれだけ見ても、こっちなんて見向きもしないし。なんか、夢だったのかなって…」
何度もぱちぱちと瞬く度に長い睫毛は踊って、口付けたい衝動をぐっと堪える。
「ごめん、ほんっとうにごめん。俺の方こそ、勝手にじんとに嫌われたって勘違いして」
「佐野くんに嫌いになるところなんか…!」
「ちが、そうじゃなくて…。じんとの知らない、自分でもわかんない穢い自分が出てきて、こんなんじゃじんとに…」
どこまで正直に話すべきか、探りながら言葉を紡いでいると、かき消すように仁人が発した。
「いいよ。佐野くんがなにを思ってても。他人のことなんてわかんなくて当然でしょ」
「っでも、」
「俺は佐野くんのこと全然知らないし、佐野くんに話してないこともたくさんある。それが当たり前じゃん。でも、話したいことはたくさんあるよ………佐野くんが嫌じゃなければ」
「嫌じゃない!」
咄嗟に答えていた。
あんなに離れようとしていたのに、いざ一緒にいていいとなると必死だ。
他人任せな自分にうんざりする。
また自分は、柔太朗の言う“ダサい”ままだ。
「ふはっ、よかった。なんか…うわ、すごい安心したぁ」
かわいい笑顔にこちらも吊られて笑顔になって、胸が幸せに包まれる。
「じゃあ、また連絡してもいい、?」
「ん、まってる。あと、読み終わったら感想も」
「うん!遅いかもしれんけど……」
「ちゃんと、まってる。嫌いにならないし」
「ごめんって笑」
笑いながら教室を去っていった彼の姿が見えなくなると、途端にいつものグループの奴らが集まってきた。
「なになに、お前吹部の姫堕とした、?」
「さっすが〜、不動のエース様は違うわ」
揶揄うように絡んでくるのは、仲がいいとはいえうざいと思いつつも、この話題に触れられて満更でもない部分もある。
「まさか、まだだって。慎重に進んでんの」
「うーわ、嫌味かよ。はやとなら誰でも堕とせんだろ」
「もうこれ以上ミスりたくないんだよ。絶対俺のモンにしたいから」
「何気狙ってるヤツ多いからな、ちゃんと周り警戒しとけよ?姫ちゃんがあんなに懐いてんの初めてじゃん」
それを聞いて柔太朗の「脈アリでしょ」を思い出す。
さらにあの日仁人が“はやちゃん”と読んでくれたことも思い出して、みんながまだがやがやとうるさい中、1人赤面した。