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6 - 第6話 覚悟

♥

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2025年05月08日

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王の戯言を聞いてから、らっだぁの様子がおかしい。ジッと自分の手のひらを見つめて考え込んだり、何かをしている途中にピタリと動きを止めて物思いに耽ってしまうようになった。

そういう時は壊れたテレビを直す時と同じように軽く叩いてやれば再稼働するのだが、二十回を超えた辺りからだんだんと効き目が悪くなっている気がする。


「ねぇコンちゃん。長寿の薬って作れないのかなぁ…」

「…何を言うのかと思えばレウさんまでソレか……」

「俺までって事は、他にもおんなじ事を考えている人が?」

「…数分前にらっだぁが。そのまた数分前にはきょーさんが聞きにきたよ」


チャポンと目の前で揺れる液体をジッと眺める。


「できない事はないよ」

「本当!?」


パッと目を輝かせたレウさんの手に紙切れを乗せる。

不老長寿の秘薬に関するレシピが書いてあるその紙はみっどぉの部屋から発見した。


「みっどぉはきっと、俺達と一緒にいたいって願ってたはずなんだ……」

「…ねぇ、このバツ印は何かな?」

「現実的に用意不可能なものにバツがつけられてるみたいだよ。試しに別の似たような特徴を持つ素材で作ってみたけど……失敗だ…色が変わらない」


試験管に入った液体は黒い色のままで、メモにあるような無色透明への変化は起こらなかった。やっぱり素材は変えたらダメなのかもしれない。


・人間の血

・青鬼の心臓

・天使の羽

・ガストの涙

・クラーケンの瞳


どれも存在そのものに関わる貴重な物。

青鬼だって心臓は一つだし、抜き取ればいくら青鬼といえども命を落とすかもしれない。

天使の羽は繊細だから、無理に千切ればたちまち翼としての機能を失う。

ガストの涙は力の結晶体のようなものだから、熱への耐性を失う。

クラーケンの瞳は異界の者達を呼び出す為の器官なため、二度と交流ができなくなる。

俺のように異界とのつながりが深い場合、そちら側に引き摺り込まれて命を落とすやも…


「…と、まぁそんな感じで調達が難しいんだよね……って、レウさん?何してるの?」

「え、ガストの涙が要るんでしょう?」


こてんと首を傾げられて、一瞬自分が間違っているのかと錯覚を起こすほどレウさんはチラともリスクを恐れていなかった。

でも俺には止めざるを得ない理由がある。


「いや、あのねレウさん。たとえレウさんがガストの涙を提供してくれたとして、他の材料はどうするのさ」

「…みんなに頼んでみようと思う」


神妙な面持ちで告げられた言葉にがっくりと項垂れる。

それすなわち「死んでくれ」と言っているようなものだと気付いていないのだろうか?

いや、レウさんは分かってて言っているのだろう……それならば止めたところで無駄というもの。玉砕して帰ってくるのを大人しく待つしかないだろう。

そう考えて背もたれに背を預けて大きく息を吐いたところで、扉がノックされた。


「あぇ、どぉ…ぞっ!?!?」

「こ、れで…どう?」

「ははっ、持ってけドロボー」


胸部から青い血を流すらっだぁと、天使の羽を手に一杯に持つきょーさんが荒い息のまま俺に材料を提供していた。


「俺の分も、お願い」


ハッとして横を見れば、ガストの涙を手にしたレウさんがそっと笑っていた。

あまりに自分を顧みない全員に、あとでお説教のひとつやふたつでも垂れてやろうと考えながら俺は自分の右目に指を添えた。

材料を保管庫に保管して、らっだぁの傷を治療する。

半分無くなった視界にはまだ違和感があって慣れないものの、不思議と怖さは無かった。


「それにしても、よく死ななかったね」

「ちょーっとこねくり回したら擬似心臓作れたわ」

「…あぁ…深くは聞かないでおくよ」

「んはは、そうしときな」


……残す材料は、人間の血。


ー ー ー ー ー

next?→200♡


工場長!生産が追いつきません!

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コメント

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もう好きすぎて1000押しちゃいました……烏滸がましいですが、、10年かかってもいいので続き書いてくれると嬉しいです😭

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