テラーノベル
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更新頻度の酷さ、私じゃなきゃ見逃しちゃうね
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うちの料理、食べてく?」
“…へ?”
流石の俺でも、能の処理が追い付かない。
…というか、世界中の誰を探してもこの状況を理解できるやつなどいないだろう。
あのフランシスが?…俺に??
いや、違う。
俺は今、『ロージー・ホームズ』であり、『アーサー・カークランド』ではない。
行く宛のないレディ、それもあいつが好む偶然の出会いとやらで作られた奇妙な雰囲気に、あいつが乗らない筈はない。
女性であれば誰だって、家に招いてそのまま…
…あぁ、考えるだけで反吐が出そうだ。
俺だったら、きっとそんな事は起きないのに。
…いや、これはつまらない劣情なんかではない。あいつの紳士ならざる行動に、紳士として憤りを感じているだけだ。
…きっと、そうだ。
「…あー、嫌いなものとか…。
アレルギーとか、ある?
それと、好みも聞きたいかな」
髪を結いながら、背中越しに食の好みを把握しようとしてくる。
それはあいつのよくやる手法で、先ずは胃袋を掴んでしまおうという魂胆だ。
勿論俺はそんなクソ髭に騙されない。
“ そうね…、嫌いなものはないわ。
夕飯は、お任せしても良いかしら?
貴方が何をつくってくれるか、楽しみにしていたいの。 “
「お任せ、かぁ…。
お気に召すよう精一杯を尽くすけれど、もし気に入らなくても文句は言わないでくれよ、マドモアゼル?」
困ったように眉を下げ、少し笑みを含んだ声でそう告げた。
そう心配せずとも、目の前にいるのはお前の料理を何度も食べた只の野郎だ。
どうせ、これまで作ったことのある料理を適当に出すのだろう。
仕方がないから、最後まで食ってやるとするか…
「…はい、お待たせ」
” …、? “
なんだ、これは
いや、この料理は何度も目にしている。
ただ、こいつの作ったものを食ったことはない。
” …フィッシュ&チップス…? “
「 イギリスから来たレディーにこれを出すのは、中々奇抜じゃないか?
…大丈夫、何回か作ったことはあるから、味は確かだよ。
君のとこのとは、少し違うかもだけどね。」
「さぁ、Bon appétit.」
そんなはずはない。
そんなはずは…
俺に出したことのない料理を、他の奴に出した?
それも、何回も?
無駄に整えられた皿。
彩りが多すぎて、本場なら話にならないくらいだ。
…前から分かっている
何10年、何100年、この気持ちを抱えてきて、最期のけじめとしてこんな姿になっているんだろう
あぁ、そうさ!
こいつがこんなに女に目がない奴だって、改めて知ることができてよかった!
こんな奴のことを好きだったなんて、恥ずかしくて仕方がない!!
「…どうした?
…もしかして、もう見た目から駄目だったかな?
これでも結構自信あるんだ。
一口で良いから食べてみてよ。」
” あっ…、ごめんなさい…
ボーッとしてたわ、私…
…そうね、うちのは茶色だから、少し吃驚はしたけれど…
いただきます。”
” …! “
「どう?
結構いけるだろ?」
…あぁ、悔しい。
悔しくて仕方がない。
こんな奴の料理を美味いと思ってしまうなんて。
コメント
2件
ほんとにここまで全部見ましたが最高すぎて灰になりそうです!頑張ってぐださい!