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朝キッチンに立つマイロの背中を、ルイは無言で見つめていた。
「ルイさん、どうかしましたか? ずっと見て……」
振り返ったマイロの首筋に、昨日まではなかった銀のチョーカーが嵌められている。
ルイが無理やり付けさせた、魔法を封じる装置。
「……いや。似合っていると思ってね。」
ルイの瞳は、笑っていない。
彼女はゆっくりと歩み寄り、逃げ場を塞ぐようにマイロを壁際に追い詰めた。
「あの……ルイさん? 少し、近すぎ……」
「怖い? ……私を、拒絶したいか?」
ルイの指先が、マイロの唇をなぞる。
記憶を失ったマイロにとって、今のルイは「命の恩人」のはずだ。
なのに、その瞳に宿る暗い熱が、彼女の本能を恐怖で支配していく。
「……っ、や、やめて……ください……!」
思わず顔を背け、涙を浮かべるマイロ。
その拒絶を見た瞬間、ルイの心の中で、何かが音を立てて壊れた。
…本当は、ダメだって、わかってる。
わかってても…それでも、
私が、マイロのことが好きなのは、もうやめられない。
「たとえ……君が泣き叫んだとしても、君のこと……私なりに愛したいのさ」
ルイの指先がマイロの頬に触れたとき、マイロは気づく。
自分を追い詰める騎士の瞳に宿っているのは、暗い熱ではなく、
「……ルイ……さん?」
今にも零れ落ちそうな、淡い水色の涙だった。
「……君が私を忘れても、嫌いになっても。この檻の中で、私だけを見て、死ぬまで笑って……」
ルイはそのまま、マイロの肩に額を預け、子供のように縋り付いた。
檻を作っているのは自分なのに。
閉じ込めているのは自分なのに。
誰よりもその檻の中で、孤独に震えているのもまた、ルイ自身だった。
「……行かないで、マイロ。……私を、一人にしないで」