テラーノベル
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別に無理してキャラを作っているわけではないし、今更それが辛いなんてこともない。でも仕事とのオンオフというか、表向きでない顔というものはやはり存在して、素の俺をファンの子には見せたくないなって思う。
幻滅されるようなことはしてないつもりだけど、裏の自分は皆に望まれた存在ではないのが分かっているから。
体力はあっても疲れるし、心無いことを言われれば傷つくし、上手く行かないときは苛立つし、こんな言葉じゃ格好がつかないけど俺だって愛されたい。
アイドルという職業は特殊だ。生きる世界も、その生き方も。
バラエティに傾こうと、ニュース担当になろうと、根本の部分はいつも煌めいていて、その輝きで人々の心を掴んでいく。
グループの中に置かれた立ち位置で、俺達はそれぞれ花を咲かせ続けなければならない。枯れたとしたら、それが潮時なんだろう。
自ら望んでこの世界に足を踏みとどめたのだから当たり前といえばそうなんだけれど、俺はこの仕事が好きだし、辞めるつもりなんてさらさらない。
ただ時折、水平線に太陽が溶けていくように、本来の自分を見失いそうになる。もっと薄暗くて静かで灰色のような自分を。
いっそのこと完全に失ってしまえばなんの問題もないのかもしれない。いつか素の自分が表に溶け込み始めたらと思うと、怖い。
世間に本当の俺を知られたくない。素の姿を見られたくない。そう思うと同時に、素の自分を愛してほしいと、全部を抱きしめてほしいと願ってしまう。
そんなの我儘すぎるって理解してるけど、一度あいつの手によって与えられた甘さを知ってしまってから、ずっとやめられずにいる。
微かな足音が聞こえはじめた数秒後、ガチャリと音を立てて開かれた扉の向こうには天使のような悪魔のような、どこか人間らしくない微笑みを浮かべた佐久間がいた。ただ静かに佇んでいるその姿は普段とは似ても似つかない。
その表情に普段の宝石のような輝きは感じられなくて、その代わりに、真夜中に輝く月の光のような雰囲気をまとっていた。
佐「りょーた、おまたせ」
舘「別に、待ってないよ」
佐「んー、そう。……じゃ、しよ」
こいつの声で名前を呼ばれる度に、心があたたかくなる。求められてると錯覚した思考は、深い口付けとともに静かに蕩けていく。
ゆっくりと押し倒されてマットレスに沈んだ身体が、この先を期待するようにどんどん熱を持ちはじめ、体温が高まるにつれて欲は膨らんでいった。
媚びるような甘ったるい空気も愛の言葉もないけれど、確実にこの温度は互いの輪郭を曖昧に溶かしていく。
淫らな水音が静まりかえった夜にただ一つ存在する。首筋を撫でるように触れた佐久間の指先が、バスローブの襟元へ入り込んでいく。ある場所に辿り着いた指先が焦らすように円を描きはじめて、俺の身体はその刺激から逃げるように身勝手に動いた。
佐「にゃはっ、かわい。でも涼太だめだよ、逃げないで」
舘「っは、ぁ、やめっ、、っん、っふ、は」
佐「『やめろ』じゃなくて『はやく』でしょ。涼太ここ好きだもんねー」
そう言いながら弄ぶように先端に触れられて、焦らしに耐えていた身体は震え上がった。こいつが調子に乗って止まらなくなるから分かりやすい反応はしたくないのに、身体はどこまでも正直で、抗うにはもう遅く、佐久間に十分飼い慣らされてしまっていた。
だめだ、これやばい。少し前まではこんな身体じゃなかったはずなのに。
どんどん火照っていく身体が与えられる快感を全て拾ってしまうせいで、まだ触られてもいないのに自身のソレは熱を持って腹に触れそうなほど膨張しきっていた。
俺の視線をなぞるようにしてそんな状況に気が付いた佐久間の乾いた笑い声や、向けられた瞳にすら興奮してしまう。
一ヶ月ほど前から行為の度に佐久間は俺の胸を弄っていた。なんでそんなことをしてるのか疑問ではあったっものの、ちゃんと問いかけることはしなかった。
最初はくすぐったさがあるだけでなんともなく、俺は油断していた。開発とか、架空の話だとしか思っていなかったから。
だんだんとその刺激が快感に変わっていって、気が付いた頃にはそこだけでドロドロに蕩けてしまうほどの立派な性感帯になってしまっていた。
佐久間の手で教え込まれて、変えられてしまったんだ。
舘「あっぁ、く、っあ、ん、っは、んっ、ん゛っぃ」
佐「もう先走りべちゃべちゃだ。ここ気持ちいいでしょ」
舘「ん゛っ、ぁっあ、きもち、くっ、っない゛」
佐「なーに考えてるのかわかんないけど、こんなんじゃ説得力ないよ、りょーた」
わざとらしく指摘するように反り立ったソコに触れられて、多方向からやってくる快楽に藻掻き苦しむことしかできなくなった。同性だからこそ理解しているであろう気持ちいいポイントを執拗に責め立てられて、やがて抵抗も出来ないほど思考を溶かされてしまった。
このままの勢いで喰われたら、多分途中でで意識がトぶ。一旦落ち着かせないと、明日の腰も終わる。
そう理性が警告を促しても、欲に溺れてしまった思考はまともに回らず、どうしようもなく佐久間を求めた。
もっと名前を呼んで、離れられなくなるくらいに抱きしめて、俺の存在を求めて、はやく全部を埋めてくれ。
舘「さく、まぁ」
佐「なーに涼太」
そう優しくも影のある表情のまま微笑む男に、どんどん酔い痴れていく。貫かれてしまいそうな黒く大きい瞳に見つめられて、俺は目を逸らせなくなった。
髪をふわりと撫でる手のひらは温かく、俺の中で佐久間の存在がどんどん大きく、核的なものになっていく。
それが危険だと知っていながらも、止められない。
舘「はやく、したい」
佐「ん、りょーかい。涼太のためなら、なんだってしてあげる」
どろりと溶けたチョコのように目を細めて笑った男の熱が、ゆっくりと体内に入り込んできて俺は意識的に息を吐いてそれを受け止めた。この一つになっていく感覚が、愛おしくて仕方がない。
舘「あっ、ん、っあ、、さ、くま、ぁっ゛」
佐「かわいい。いつもより身体びくびくしてんね」
舘「は、あっ、ぅあ゛っっは、ぁ、っい゛ぁ、さっく、まぁ゛、きす、したっ、い」
佐「ん、いーよ。しよっか」
テンションが低いからなのか普段より幾分か低い素の佐久間の声が、脳に響いて浸透していく。触れ合った唇は柔らかな体温を灯していて、夢現としていた意識がその温度に引き寄せられるように輪郭を持った。
時間を気にすることなく眠気に身を委ねて布団に沈み込むような心地よさに似た感情が、穏やかな波のように心の中を往来している。
佐「ん、きもちい?」
舘「っは、あ゛、んっ、ぅ、きもち、い、、っふ、んぁっ゛」
佐「おれやっぱり普段の舘様も好きだけど、今のふわふわしたりょーたのが好きだよ」
舘「あっ、ぅ゛、っあ、ん、さくっま、おれ、すき、?」
佐「うん。どっちの涼太も、だいすき」
好き。それだけの言葉で、過剰なくらいに身体が満たされていくのを肌で感じた。ありがたいことに、同じ言葉をかけられる機会は数多いというのに、今この瞬間だけの言葉は特別なもののように感じた。
それの理由は明白で、俺に覆いかぶさるように両手をついたこの男が、何も着飾っていない俺自身を見ているからだ。「嘘ではない」と言っているような真っ直ぐな眼光が全身に降り注がれる。
俺が素直に感情や言葉を吐くのが苦手なことを知っている佐久間は、俺のことも好きかなんて問いかけてこなかった。ただ黙々と、互いに求めてあっている存在を確かめるような行為に耽っていた。そういう気遣い屋なところ、俺も気に入ってるよ。
言葉の代わりに男の細い腰に足を絡めると、佐久間は「ふはっ」と花が咲くように笑みをこぼして、スパンをじんわりと速めていった。
素のまんまの佐久間が俺も好きだって、いつか言える日までどうか傍にいてほしい。
全てを脱いだ俺の隣に。
コメント
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主様の作品好きっす!!!しょっぴーと舘様のやつみたいです!!! リクエストオッケーなら、リクエストしたいです!!!