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東京ジェノサイドを起こしたのは、桂木前内閣と中国政府の国家保障局で、強大過ぎる方舟の威力に、日本国は自らも巻き添えになったのだという。それ故に、方舟を奪還し、日本国の再建を目指し、世界から核を廃絶するという理念は、ケイにとっては生きる大義であり、自己への名分でもあった。
そう云った、崇高な革命に参加している事実も、半年前では想像もつかなかった。
自分は式根島の中で、誰にも気付かれずにひっそりと息絶えるのがお似合いだと思っていたからだ。
安座間の、
「ちょっと寄り道しましょっか」
の言葉は、さらなるドラマを感じた。
車列を離れた赤い軽自動車は、渋谷の街へと入って行く。
交通規制は行われておらず、渋谷道玄坂一帯は人っ子ひとり見当たらなかった。
それでもネオンサインは疎らに街を彩っていて、 これ見よがしにゴミをあさるネズミと、街路樹から聞こえるカラスの鳴き声は、自由を享受された弱者の象徴と言えよう。
夜空に揺れる白死のオーロラ。
防災無線から響く国民保護サイレン。
車は東京ジェノサイドで陥没した、駅前の通りを避けて、ケイが以前勤めていた渋谷アカリエの裏手搬入口の前で停車した。
安座間が悪戯っぽい笑みを浮かべながら、
「ケイさん、仕返ししてやりましょ」
「え?」
「辛かったでしょ?」
「何で知ってるの?」
ケイの目頭が熱くなった。
急に現実世界に引きづり落とされた気持ちがした。
それを見抜いてか、安座間がケイを力強く抱き締めて、
「僕がちゃんとついてるから、行きましょ。誰もいないし」
安座間の指がケイの涙の跡を追いかける。
頬から唇、顎先を撫でる指はあたたかい。
安座間はにっこりと満面の笑みを浮かべて、自動小銃を抱えながらケイの腕を掴んだ。
外は心地良い夜風が吹いていた。