テラーノベル
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朝になっても、トレーラーの中には緊張が残っていた。
昨夜、狐のお面を被った三人組に襲撃された。幸い、全員に大きなけがはなかったが、テントは焼け、キャンプ場には弾痕まで残っている。
マサカゲは、昨夜の出来事を整理していた。
「まず、キャンプ場の周囲を確認する。足跡や落とし物が残っているかもしれない。二人以上で行動しよう」
「俺、周囲を見てくる!」
カキが手を挙げた。
「カキ、単独行動はだめだよ」
メバルちゃんがすぐに注意する。
「分かってるって。すぐ近くを調べるだけだから!」
「その『すぐ近く』が信用できないんだよね」
マサカゲが腕を組む。
「でも、カキが見つけるものもあるかもしれない。俺が見張る」
俺が言うと、カキが振り返った。
「Kさんが一緒に来てくれるの?」
「俺はトレーラーの周囲を確認する。カキは西側を見ろ。遠くへ行くな」
「了解!」
カキは元気よく返事をし、森の西側へ向かった。
「カキちゃん、何かあったらすぐ戻ってきてね!」
メバルちゃんが声をかける。
「大丈夫!」
カキは手を振りながら、木々の間へ入っていった。
キャンプ場の西側には、昨夜の騒ぎで荒れた地面が広がっていた。
カキはしゃがみ込み、砂利の上に残った足跡を調べる。
「これは俺たちの靴跡。こっちは鹿の足跡。じゃあ、この細い靴跡は……」
木の根元には、人間のものと思われる足跡が残っていた。
足跡は森の奥へ続いている。
「狐のお面の連中かな」
カキが立ち上がったとき、背後から声がした。
「君、そこで何をしているんだ?」
カキが振り返る。
木々の間から、制服姿の男が歩いてきた。
警察官のように見えた。
腰には無線機があり、胸元には身分証のようなものがついている。少し離れた場所には、白と黒のパトカーらしき車両が停まっていた。
「えっと、昨夜ここで事件があって……その跡を調べてます」
「事件?」
警察官は笑った。
しかし、その表情にどこか違和感があった。
口元は笑っているのに、目がまったく笑っていない。
「昨夜、発砲音と火災があったと通報を受けた。君たちの仲間から事情を聞く必要がある」
「それなら、みんながいる場所へ戻りましょう」
「君だけでいい」
「え?」
警察官は、カキの肩へ手を置いた。
「署まで来てもらう。詳しい話を聞きたい」
「でも、仲間に連絡しないと」
#K-T
#異世界転生
#グループ
K-Takasaka
139
「すぐに終わる。パトカーに乗りなさい」
カキは男の顔を見つめた。
やはりおかしい。
警察官なら、普通は事件の内容や身分を説明するはずだ。だが、男は質問に答えず、同じ言葉を繰り返している。
「署まで……行く?」
「そうだ。署まで来てもらう」
男の声が、妙に一定だった。
カキの頭がぼんやりしてくる。
「仲間には……連絡……」
「必要ない。君は署へ行く」
カキはそう言われると、なぜか反論する気持ちが薄れていった。
ポケットの中で、スマートフォンが震える。
カキは画面を確認した。
マサカゲからのメッセージだった。
『足跡は見つかった?』
カキは返事を打とうとした。
しかし、警察官が横から画面をのぞき込む。
「携帯電話はしまいなさい」
「はい……」
カキは画面を消した。
それでも、完全にしまう前に、短いメッセージを送った。
『警察官? 変。車に乗せられる』
送信先はK-T。
文章を送った直後、警察官がカキのスマートフォンを取り上げた。
「連絡は必要ない」
男はスマートフォンの電源を切り、カキへ返す。
「さあ、乗りなさい」
カキはパトカーの後部座席へ乗せられた。
ドアが閉められる。
外からロックがかかる音がした。
運転席には別の警察官が座っていた。
その男も、表情が不自然だった。
「本当に警察官なのかな……」
カキが小さくつぶやく。
返事はない。
パトカーがゆっくりと動き出した。
一方、トレーラーでは、K-Tの端末にメッセージが届いていた。
『警察官? 変。車に乗せられる』
俺は画面を確認した。
「カキからだ」
「カキちゃんから?」
メバルちゃんが身を乗り出す。
俺は受信時刻と位置情報を確認した。
「キャンプ場の西側。パトカーで移動している」
「警察に連れて行かれたってこと?」
マサカゲが険しい顔をする。
「本物なら、身分証や事件番号を提示するはず。カキが一人で連れて行かれるのもおかしい」
アオノが端末を確認した。
「送信位置が数分前から不自然に変化している。通常の道路ではない方向へ移動している」
「追うよ!」
メバルちゃんが立ち上がる。
「メバル、ここにいろ」
「でも、カキちゃんが危ないかもしれない!」
「俺が行く。マサカゲ、アオノ、位置を追え。メバルはミステーとトレーラーを守れ」
「Kさん、気をつけて!」
俺はトンファーを防弾チョッキに仕込み、カキの位置へ向かった。
パトカーは、キャンプ場から少し離れた林道の奥に停まっていた。
俺は木の陰から様子を見る。
警察官の服を着た二人の男が、カキを車から降ろしていた。
目の前には、古い建物がある。
元は倉庫か事務所だったようだが、窓は板でふさがれている。
「ここが署なの?」
カキが尋ねた。
「そうだ」
男の返事は平坦だった。
「嘘だろ」
カキが後ずさる。
男が腕をつかんだ。
俺は建物の正面へ歩き出した。
「カキを放せ」
二人の男が振り返る。
「Kさん!」
カキが叫んだ。
「どうしてここが分かった?」
「カキが連絡した」
俺はトンファーを構えた。
男の一人が拳銃を抜く。
俺は横へ跳び、弾丸を避けた。続けてトンファーを扉の鍵部分へ叩き込む。
硬い音が響き、錠前が外れた。
扉が開く。
「カキ、走れ!」
カキは男の腕を振りほどき、俺のところへ走ってきた。
拳銃を持った男が再び狙いを定める。
俺はカキをかばいながら、トンファーで相手の手を打った。拳銃が地面へ落ちる。
もう一人の男が後ろから近づいてきたが、カキが叫んだ。
「Kさん、後ろ!」
俺は振り返り、男の腕をつかんで壁へ押しつけた。
「動くな」
男は抵抗したが、俺は力を込めて動きを封じた。
カキは震えながら、俺の背後に隠れる。
「Kさん……あの人たち、警察官じゃない。ずっと同じことを言ってた。署へ行く、署へ行くって……」
「分かっている」
建物の奥から、低い機械音が聞こえた。
俺はそちらへ視線を向ける。
部屋の中には、奇妙な機械とモニターが並んでいた。画面には、カキの顔と、いくつもの数字が表示されている。
アオノから通信が入る。
『Kさん、そこに何がある?』
「分からない。機械がある」
カキがモニターを見つめる。
「俺、さっきから頭がぼんやりしてた。あの声を聞いてると、言われたことに逆らえなくなって……」
マサカゲから通信が入った。
『Kさん、すぐに戻って。そこは危険だ』
「分かっている」
そのとき、床に倒れていた男が不気味に笑った。
「もう遅い。あの子には、命令が入っている」
「命令?」
カキの顔から血の気が引く。
「お前たちは、もうすぐ仲間同士で――」
男の言葉が途切れた。
建物の奥から、別の機械音が響く。
カキが頭を押さえた。
「うっ……頭が……」
「カキ!」
カキの目から、少しずつ光が消えていく。
そして、ゆっくりと顔を上げた。
「Kさん……?」
「カキ、俺を見ろ」
「……俺は、誰?」
その言葉に、俺はトンファーを握り直した。
警察官を装った者たち。
不自然な命令。
頭の中に残る機械音。
これは単なる誘拐ではない。
カキに何かを仕込み、操ろうとしている。
俺たちは、洗脳に関わる計画へ巻き込まれていた。
コメント
1件
おお、今回も緊張感がすごかった……! カキが警察官に連れて行かれるシーン、最初から「あれ? なんか変だな」って違和感がじわじわきて、Kさんのトンファーでの救出、そしてまさかの洗脳展開。特に「俺は、誰?」で終わるラストはゾッとしたわ。前回の襲撃から続いてる不気味な空気が、ただのトラブルじゃなくて大きな組織的な計画に繋がってる感じがめちゃくちゃ怖い。続きはよ!!