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夜の森は、村の喧騒とは違う静けさに包まれていた。月明かりが木々の間からこぼれ、2人の影を長く引き伸ばす。
健は紗羅の手をしっかり握り、息を切らしながらも走り続けた。
『もう少しや……この先抜けたら、川沿いに出る』
彼の声に希望が灯る。
しかし……
足元で”カチリ”と金属音が響いた。
次の瞬間、健の足に太い縄が絡みつき、体が宙に持ち上がった。
「健っ!」
紗羅が叫ぶ間もなく、健は木の枝から吊るされる形になり、ゆっくりと揺れた。
獣捕りの罠……
村人たちが森の中に仕掛けていたものだ。
紗羅は必死に縄を引き剥がそうとするが、硬く締まってびくともしない。
『……くそっ、こんなもん……!』
健は腕力で縄を引き千切ろうとするが、足に食い込む痛みで顔を歪めた。
遠くで犬の吠える声が聞こえ始める。
追手が迫っている。
焦る紗羅の耳元で、健が低く囁いた。
『……俺のこと置いて逃げろ』
「そんなの……できないよ!」
その瞬間、草むらが大きく揺れ、複数の松明の光が森を照らした。