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うさぎもち
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fu 悪魔
rm 大天使
第一章 不夜城の傲慢な支配者
魔界の最下層にある、廃墟を改造した酒場『リリスの吐息』。
そこは、暴力と色欲が渦巻く、fuにとっての「日常」だった。
「――で、その大天使様は、俺がちょっと涙を浮かべて見せただけで、本気で心配そうな顔をするんだ。傑作だろ?」
fu は、毒蛇の血で割った安酒を喉に流し込み、周囲に並ぶ下級悪魔たちを見下ろして不敵に笑った。
fu の黒い翼は、ここでは「強者の証」として誇らしげに広げられている。彼は誘惑のスペシャリストだ。人間の聖職者を狂わせ、修道女を堕落させ、その魂を魔王に献上することで今の地位を築いてきた。
「へえ、あの『神の右腕』に近いrmをねぇ。でもよ、fu。天使ってのは執着すると悪魔より質《たち》 が悪いって聞くぜ?」
仲間の悪魔がニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながら茶化す。fuはそれを鼻で笑い、テーブルの上に足を投げ出した。
「ハッ、あんな潔癖な連中に何ができる。あいつらは『愛』なんていう実体のない言葉に縛られてる、ただの哀れな人形だよ。今に見てろ、あの綺麗な羽を俺がむしり取って、地べたを這いずらせてやるから」
周囲から下品な歓声が上がる。fuはそれを心地よく聞きながら、ふと、喉元に手をやった。
服の下に隠された、あの白いチョーカー。
仲間の前では「こいつで天使を騙してるんだ」と豪語しているが、実は魔界にいる間、fuはこのチョーカーが放つ微かな熱がなくては、落ち着かなくなっていた。
魔界の風は、常に誰かの死や裏切りの匂いがして、ひどく冷たい。
誰一人として信じられず、常に牙を剥いていなければ喰われてしまうこの世界。
(……あーあ。早く、あいつのいる場所《ところ》に行きたいな)
rmの住む、あの静かで、花の香りがして、自分を全肯定してくれる「聖域」。
fuは、自分が「天使を狩りに行く」のではなく、「安らぎを求めて帰りたがっている」ことに、まだ気づいていなかった。
「……じゃあな。次に来る時は、rmの首でも持ってきてやるよ」
fuは乱暴に席を立ち、仲間たちの羨望の 眼差しを背に浴びながら、光の差さない魔界の路地へと消えていった。
コメント
2件
始まりからもう好きです!!