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みら

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みら

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ライブが終わると。
目黒は、そのまま魔王城の一室へ連れて行かれた。
広いテーブル。
椅子が三つ。
その向かいには、一脚ずつ面接用の椅子が置かれている。
目黒は座る前から嫌な予感がしていた。
「……これ」
「面接会場」
魔王が楽しそうに答える。
「俺もやるの?」
「スカウトした人だからね」
「ライブしただけだけど」
「十分」
目黒がため息をついたところで。
いつの間にか。
隣の椅子に天使が座っていた。
「いたの?」
「ずっといたよ」
「どこに?」
「その辺」
相変わらずだった。
天使は目の前に積まれた履歴書を手に取る。
目黒が覗き込む。
名前。
年齢らしきもの。
種族。
得意なこと。
そして。
『現実でできそうな職種』
まで書いてある。
「ちゃんとしてる」
目黒が呟く。
魔王が胸を張る。
「でしょ?」
天使がすぐに言った。
「私が項目作った」
「魔王じゃないんだ」
「魔王に任せると家賃払えるかしか見ないから」
「大事でしょ」
「大事だけど、それだけじゃだめ」
天使は、一枚目の履歴書を見る。
「じゃあ始めよっか」
こうして。
異世界の魔物を現実へ送り込むための面接が始まった。
最初に来たのは大きな角を持った男だった。
人間の姿にはなっているけれど。
額から立派な角が二本。
天使が履歴書を見る。
「得意なこと、力仕事」
「はい」
「現実でやりたい仕事、引っ越し屋さん」
「はい!」
目黒が少し納得する。
「向いてそう」
天使が聞く。
「人間の家具、壊さず運べる?」
男が止まる。
「……たぶん」
「たぶんはだめ」
「練習します!」
「じゃあ研修必須」
天使は履歴書の端に何かを書き込む。
本当に現実的だった。
次。
小さな羽の生えた女性。
得意なこと。
空を飛ぶこと。
現実でやりたい仕事。
宅配。
「飛んだらだめだよ」
天使が即答する。
「え?」
「現実で普通に飛んだらニュースになる」
「じゃあ自転車?」
「免許取れるならバイクでもいいかも」
「免許?」
そこから、免許制度の説明が始まった。
目黒は少しずつ、この面接がかなり本気だと気づいていく。
魔王だけが、たまに。
「家賃払えそう?」
と聞いて天使に怒られていた。
何人目か分からなくなった頃。
目黒は完全に疲れていた。
「あと何人?」
「もう少し」
天使が答える。
「まだいるの?」
「ライブでいっぱい手挙がってたでしょ」
「そうだけど」
魔王は楽しそうに履歴書をめくっている。
「住人増えそう」
「それしか考えてないよね」
「あと旅行」
「やっぱり」
目黒は椅子にもたれた。
そして、ついに最後の履歴書が置かれる。
「最後」
天使が言う。
目黒が顔を上げる。
入ってきたのは人ではなかった。
犬、二匹。
「……」
目黒は思わず瞬きをする。
小さな体。
短い脚。
丸い目。
どことなく見覚えがある。
チワワっぽい。
一匹は白。
もう一匹はチョコタン。
二匹並んでとことこゆっくり歩いてくる。
目黒の頭に一匹の犬が浮かぶ。
「……クッキーに似てる」
白い方が首を傾げる。
「クッキーちゃん?」
喋り方まで似ていた。
ゆっくり少し伸ばすような声。
チョコタンの方も。
「知ってるぅ?」
と聞く。
目黒は思わず笑ってしまう。
「知ってるよ」
天使が履歴書を見る。
「白い方がココ」
「はぁい」
「チョコタンがモカ」
「そうだよぉ」
二匹は並んで座った。
魔王が、かなり嬉しそうに見る。
「かわいい」
「面接して」
天使がすぐに止める。
「はい」
天使は履歴書を読み上げる。
「得意なこと」
少し間。
「映画制作」
目黒が顔を上げる。
「映画?」
ココがしっぽを振る。
「作れるよぉ」
モカも。
「二匹でぇ」
「映画ぁ」
目黒の姿勢が少し変わる。
天使はそれに気づいたのか少しだけ笑う。
「詳しく聞いていい?」
「いいよぉ」
ココが答える。
モカが続ける。
「夢の中でぇ」
「映画作れるのぉ」
「夢の中?」
目黒が聞く。
「うん」
「場所もぉ」
「衣装もぉ」
「人もぉ」
「ぜんぶ作れるよぉ」
目黒が少しずつ身を乗り出す。
ココが嬉しそうに続ける。
「だからぁ」
「お金もかからないよぉ」
モカも。
「時間もぉ」
「ほとんどかからないよぉ」
目黒が完全に止まった。
魔王が目黒を見る。
天使も同じように見る。
三人とも。
何を考えたのか。
多分同じだった。
目黒がゆっくり聞く。
「それって」
「夢の中で撮った映画」
少し間。
「現実でも見れるの?」
ココとモカが顔を見合わせる。
「うーん」
「たぶん」
「できるよぉ」
モカが答える。
「ちゃんと作れたらぁ」
「現実でも上映できるかもぉ」
目黒の目が明らかに変わった。
天使が小さく笑う。
「強欲な目黒くん」
「……」
「願い叶いそうだね」
目黒は反論しなかった。
今はそれどころではない。
二匹を見る。
「ココ」
「なぁに?」
「モカ」
「なぁに?」
「お願いがあるんだけど」
二匹が。
同時に首を傾げる。
「映画」
目黒は少しだけ真面目な顔になる。
「作ってほしい」
ココがしっぽを振る。
「いいよぉ」
モカも。
「どんなのぉ?」
目黒は少しだけ迷った。
でも、すぐに眠る前に見ていた紙が浮かぶ。
『二人でキスシーンがたくさんある映画に出たい』
そしてその隣で眠っていた阿部。
目黒は少し笑う。
「恋愛映画」
ココが。
「きゃあ」
と小さく鳴く。
モカも嬉しそうにしっぽを振る。
「主演はぁ?」
「俺と」
少し間。
「あべちゃん」
天使がやっぱりという顔をする。
魔王も笑いを堪えている。
ココがさらに聞く。
「キスするぅ?」
目黒は一瞬も迷わなかった。
「いっぱい」
天使が吹き出した。
魔王はテーブルに突っ伏して笑っている。
「やっぱり強欲!」
「願いだから」
目黒は平然としている。
モカが嬉しそうに言う。
「じゃあぁ」
「あとで脚本ぉ」
ココも。
「一緒に考えようねぇ」
目黒が少し驚く。
「俺も考えていいの?」
「もちろんだよぉ」
「やりたいことぉ」
「いっぱい入れようねぇ」
目黒の口元がゆっくり緩む。
「……うん」
かなりやる気になっていた。
天使がその顔を見て小さく呟く。
「あべちゃん、大変そう」
魔王が頷く。
「絶対恥ずかしがる」
目黒が二人を見る。
「まだあべちゃんには言わないで」
天使が笑う。
「聞いたら断られそう?」
「多分」
「じゃあどうするの?」
目黒は少し考える。
それからココとモカを見る。
「脚本できてから考える」
二匹は嬉しそうに。
「はぁい」
と答えた。
その瞬間。
目黒の中ではもうただのスカウトではなくなっていた。
魔王の家賃収入を増やすために始まったはずなのに。
いつの間にか。
自分の願いを叶えるための。
映画制作が。
本当に始まろうとしていた。
コメント
2件
ココとモカは現実世界で💛💜夫婦のペットとして普通に暮らし始める様な気がする(^O^;)
わあ、面接がどんどん本格的になっていく感じが面白かったです!特にココとモカの登場から一気に色めき立つ目黒くんの様子が可愛くて、思わず笑ってしまいました。「恋愛映画」「キスいっぱい」「まだあべちゃんには言わないで」…強欲な願いが着実に形になっていくのがワクワクしますね。あべちゃんのリアクションが今から気になります!