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ミランに起こされた俺はマンションで準備を終え、ミランの元へ戻ってきていた。

「今日も変わらず店舗まわりか?」

「いえ。本日は支社へ向かいます。午後からはイベントに出席予定です」

イベント?何のことかわからんが、聞いてもわからんだろう。

「わかった。着いて行くよ」

「はいっ!お願いしますね!」

今日もミランが可愛い。

俺はそれだけわかっていればええんや。






そんな…馬鹿な……

「支社長!これもお願いします!」

「こちらの確認が先です!」

「待てよっ!俺は三日も待ってたんだぜ!?」

何だここは…ミランのファンクラブの集いか?

支社に入るや否や、ミランの元へ代わる代わる社員がやって来ている。

書類を片手に持っている者、タブレットを持っている者など様々だ。

だが一つ言えるのは、皆んなミランを見つめる目だけは一緒だということ。

「おいっ!お前近いぞ!!もっと離れろ!!」

一人の男がミランにめちゃくちゃ近づいて話し始めた。

それは彼氏彼女の距離だ!!許さんぞっ!!汚物めっ!!

俺は怒りを込めて怒鳴った。

「ミラ……支社長。新しいボディーガードですか?なんでこんな冴えない奴に…」

おいっ!絶対いまミランを名前で呼ぼうとしただろっ!!

ブルッ…また寒気が……

「貴方…なんて言いましたか?」

「えっ?今日の昼食をご一緒にって『違います。その後です』……」

おいっ!やっぱりただのナンパやないかいっ!!

クビだクビっ!!

「えっと…冴えないボディーガードですねって」

「お疲れ様でした。荷物を纏めて今日中に出て行ってください」

「は…?」

は?く、クビですか?ミランさん。

確かにこいつは多少の公私混同をしましたが…そこまで嫌でしたか?!

俺が驚くのも束の間。

「く、クビ…?」

「そうです。貴方は自分の会社の社長の顔も知らないようですね。

そして社長は私の恩人です」

男は俺のことだとは理解できていないだろうが、クビを宣告されたことにより青くなっていた。

「ミ、ミラン。待ってくれ。そんなことでクビにしなくてもいい」

俺の事でかよ…やだよ。

こんな奴のために、後ろめたくなってここで過ごすの……

「そんな事…?聖さんを馬鹿にしたのですよ?私の命よりも尊い人のことを…」

いや、それはない。

そんな人はこの世に存在せん。

「俺の為に怒ってくれたのは嬉しいよ。でも、俺はクビはやり過ぎだと思う。罰としてこの男にはミランに…社内で異性を誘うことを禁じることにしよう。

いいよな?」

「…聖さんがそういうなら。社長に従います」

うん。別に命令じゃないよ?

「そういうことだ。荷物は纏めなくていいが、これからは仕事中に女性のことを考えるのはやめような」

「は、はい…ありがとうございます…」

日本人なら『すみません』『申し訳ございません』と言うところを『ありがとう』か。

俺はこっちの方が言われて気持ちいいから好きだな。

男はスゴスゴと退散して行った。

(社長だって。見たことあるか?)(ないわよっ!ウチって確か借入なしのオーナー社長よね?…玉の輿にのれないかしら)(キャシーじゃ無理よ。私が行くわ)(両方無理なんじゃ…)((なんでよっ!?))(だ、だって、ミラン支社長がライバルだよ!)(それに美人と噂の副社長の愛人だって聞いたぞ?)

うるさい……

他の社員が俺のことを社長と認識するや否や、遠巻きからごちゃごちゃと噂話をしている。

一応何人かとはあった記憶があるんだがな……

まぁ俺の顔なんて覚えられないよな。

アジア人と、一括りにされているのだろう。

「はぁ…」

自社ビルのエントランスでこれだ……

支社長室に辿り着く前に日が暮れてしまいそうだな。

俺はため息を堪えられなかった。






「以上で報告を終わります」

最後の一人が支社長室から出て行った。

「終わったか?」

「はい。お待たせしました。お昼ですが…申し訳ないのですが、移動しながらのランチになります」

ランチね……

「問題ない。ミラン」

「はい?」

「働き過ぎじゃないか?」

社員からの報告は多岐に渡っていた。

普通社長が態々聞くような報告ではないモノまで混ざっていたぞ……

「いえ。恥ずかしながら…楽しいんです」

「…何も恥ずかしいことなんかじゃない。それを聞いて俺が恥ずかしくなったけどな。自分が幼稚すぎて……」

何だよ働き過ぎって……

肩書きだけの事実無職が言えることじゃないだろっ!!

「セイさんが幼稚なら私が保護者に立候補しますね!お世話頑張りますっ!」

そう言ったミランの表情は凄く嬉しそうだった。

だが…二つ物申したい。

まずここではセイじゃなく聖だ。

次に、酔っ払いの世話はそんなに喜んでするものじゃない!

頭の病気を疑われるぞっ!

そんなことを言えるはずもなく。

現実では……

「すでにお世話になっています…」

朝、起こしてもらってるしな!!






「そういえば、どこに向かっているんだ?」

ここは社用車の後部座席。

ミランと俺は車でも食べやすい軽食を摘んでいる。

「公園です。そこでイベントがあり、テレビ局から呼ばれているんですよ」

「テレビ局?またテレビに出るのか?」

「違います。テレビ局から出演依頼はきていますがテレビではないです。交流イベントだと伺っています」

交流?何の交流があるんだ?

まぁ行けばわかるか。

目的地までは車で30分程の距離と聞いた。

俺はミランにご飯を食べさせてもらいながら到着を待った。

世話するって…これは最早介護ですよ?






「凄い人だな…」

公園と聞いていたが、広場に特設ステージがあるだけで他は何も見当たらない。

俺は関係者の関係者ということでステージ袖に許可を得て入り、前方を見渡した。

「1000人くらいと聞いていましたが…2000人はいそうですね」

俺の横からミランが補足してくれた。

「交流って、ファン交流イベントだったんだな」

「はい。私はセーナさんが言うアイドルではないのですが、良いのでしょうか?」

「ミランは俺達のアイドルだからな…まぁ他の人にお裾分けしないのは器が小さ過ぎるよな」

独占禁止法があるからな!

「よくわかりませんが……一時間程で終わる予定なので、申し訳ないですが休んでいてください」

「休む?俺にはカメラを回す仕事があるから気にしなくて良いぞ」

この機会を逃すと聖奈に怒られるからな。

「は、はぃ。あまり見つめないで下さいね?緊張しちゃいますから」

ミランは頬を染め可愛らしくそう告げると、呼ばれたのでスタッフの元へと向かって行った。

「不安にさせるわけにはいかないから言わなかったが…この中にストーカーがいるのだろうな」

俺はミランのファンを見渡すが…流石に2000人の中から顔も知らない奴を見つけることは不可能な為、カメラで撮影するに留めた。





「ではミランちゃんへの質問を終わりにしたいと思います。

皆様名残惜しいと思いますが、最後にミランちゃんへエールを送って終わりにします」

司会進行役の人がそう告げると、これまで黙ってミランの話を聞いていたファン達は声を張り上げて思い思いにエールを贈っていた。



「お疲れ様。上手く喋るじゃないか!流石支社長だなっ!」

ステージ裏に引き上げてきたミランを労う。

「ありがとうございます。そうですか?質問に答えていただけなので。それよりもお待たせしてしまいすみません」

「仕事なんだから気にするなよ。それに良い休憩になったよ」

ミランへの質問は・・・

『彼氏がいるのか?』『好きなタイプは?』

とかの、どうでもいい事ばかりだった。

申し訳程度に5分程会社の宣伝時間をくれただけで、ミランも次はないと言っていた。






「尾けられているな」

帰りの車の中、俺はミランにそう伝えた。

「…わかりやすい人達ですね」

「そだね」

俺が急に人の気配を察知できるようになったわけではない。

同じバイク2台が30分近くもバックミラーに映っていれば、誰でも気付くだろう。

「どうする?運転手がいるからアレは使えないし」

アレとは転移魔法のことだ。

流石に尾けてきているだけで銃を使うことはない。

そもそも俺にはいらんし。

「普段は駅で降りて撒くのですが…」

「普段からこんなことが頻繁にあったのか?」

「は、はぃ」

ミランがしょげたのは俺の顔が怒っていたからだろう。

だが。ここは心を鬼にして伝えなくてはならない。

「何故俺に伝えなかった?俺じゃあ当てにならないか?」

「そ、そんなことはありませんっ!!セーナさんには都度伝えています……

言い訳にしかなりませんが、聖さんに心配をお掛けしたくなかったのです……

それに…こっちの生活が楽しかったのもあります…」

「そうか。聖奈に伝えていたのならいい。怒って済まなかった。

だが。心配はさせて欲しい。仲間だからな?ミランも除け者は嫌だろ?」

俺に伝えなかった理由は曖昧だが、これ以上追い詰めてはダメだ。

それが目的じゃないしな。

再び俯いていたミランが顔を上げると・・・

「嫌ですっ!私も心配したいですっ!」

「ははっ。同じだな!あ。後一つ。ミランのやりたいことを取り上げることはしないからな。

余りにも身体的に危険を伴うなら話は別だが、今回の件は対策のしようもあるしな」


そう。俺は解決策(名案)を思いついていた。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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