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3 - 第3話 時の流れ

♥

222

2025年04月30日

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ー ー ー ー ー


捏造注意

rdmd.nmmn注意


ー ー ー ー ー 


あれから一年…いや、二、三年だったか。

初めの方こそ不慣れで踏んだり蹴ったりな日々が続いたものの、最近は少しずつ山暮らしの頃のような落ち着きを取り戻している。


「…ふわぁ……」


埃まみれの汚ったない館はちまちまと掃除して、それなりに綺麗になった。

それから、毎日のように侵入する暗殺者も、事あるごとに呼び出してくる国王も、度々館の周りを取り囲む兵も、一時的とは言え全てが大人しくなっている。

過去の盟約の破棄こそまだ行えていないものの、その日は着々と近付いているのだ。

くふくふと口元を抑えてニヤけていると、後ろから頬を摘まれた。


「みーどーりー、前回も野菜食べなかったからレウが怒ってるよ?」

「たぇなひよーぅ」

「このヤロォ…レウー!みどりが野菜食べないよー、だってさ〜!」


らだおくんが光の速さで俺の呟きをキッチンに立つレウさんにチクった。

そうすると予想通りお母さん、という言葉が似合いそうな母性増し増しのエプロン姿のレウさんがおたま片手にプンプンと頬を膨らませて怒っている。


「みどりくんは野菜食べないからそんなカリカリなんだよ!?ちゃんと食べなさい!」

「そーだぞみどり。きょーさんのでぶボディーを見習え?」


そう言ってらだおくんが指さした先で、夕飯のお手伝いをしていたきょーさんがススス…と残像を残しながら近付いてきた。

寒気を感じるほど恐ろしい黒い笑みがらだおくんに向けられている。


「らっだぁ?誰の、何が、何やって…?」

「ッスー…きょーさんの、ふつくしぃ、すてきなボディー、です」

「そうやんなぁ?はぁ〜、聞き間違いでよかったわぁ…!」


らだおくんが冷や汗を流して視線を彷徨わせながら真実(?)を述べると、きょーさんはにっこり、と効果音がつきそうなほど完璧な笑顔を向けた。


「……危うくらっだぁ殺すとこやったわ」


一瞬にして翳った瞳でボソリと物騒なことを呟いたきょーさんが手に持っていた包丁をスッと動かすと、もう片方の手に握られていた大根が音もなくスッと輪切りにされて、だるま落としのようにグラグラと揺れながらもバランス良く積み重なっていた。


らっだぁの視線もグラグラと揺れる大根の輪切りのように定まっていない。


「ふぅー…あぶねぇー……」

「……?」

「ん?何みどり」


きょーさんが去って九死に一生を得たと安心するらだおくんの頭の位置が高い気がして立ち上がると、やっぱりらだおくんの目元くらいに自分の頭のてっぺんがあった。

人外とはいえ彼らは長命種ではないのだから当たり前のことなんだけど、生きている時間の差がこの時ばかりは寂しく感じる。


「…今何歳だっけ?」

「みどりと初めて会ったのが十二だから、今年で俺ももう十五だね」

「……アッソ」

「なに!?ダメなの!?」

「…別に」


ふいっと顔を背けて部屋を出る。感じは悪いけど仕方ない。

これ以上あの場所で俺と皆んなの時の流れの違いを実感したくなかった。


出窓の近くにある私物のロッキングチェアにただ座って、ぼーっと何をするわけでもなく窓の外を見つめる。

空には砂浜の白い砂のように小さな光が幾千幾万にも広がっていた。


「俺より先に死んじゃうんだもんなぁ…」


出会いがあれば別れもやってくもの。その時は笑ってサヨナラをするべきだ、とか誰かが言っていた気がする。

それを口にしたのが物語に登場する人物だったか、はたまた実在する人物だったのかはすっかり忘れてしまって思い出せない。


「はぁぁ……」


秋の初めだからと侮ることなかれ、開け放たれた窓から流れ込む外の空気は冬の訪れを告げる、ツンと張り詰めて澄んだ空気で、吸い込むごとに体温がぐんぐん下がっていった。


『白い服だと雪の上に倒れてても分かんないね、そのまま雪と一緒に溶けちゃいそうでなんだか心配…』


昔、雪の上で転んで動けなくなった俺にそう言って笑ったのは確かコンちゃんだった気がする…あれ、レウさんだっけ……?


「わすれちゃった…」


朧げな記憶を悲しく思うくらいには彼らに絆されてしまったのかも。なんて女々しい自分に溜息をプレゼントしたところで返ってくるものは何も無い。


「みっどぉ、風邪ひいちゃうよ?」


いつの間に近くに来ていたのか、ロッキングチェアを指先でちょこんと少し揺らしながらコンタミが首を傾げた。


「コンちゃん。俺は魔女だからね、風邪なんてひかないんだよ」

「まぁたそんな言って〜…それでこの前風邪ひいたのはどちら様でしたっけ?」


みどりの言葉に呆れたように笑うコンタミ。すっかり立場が逆転してしまったと顔を見つめていると、コンタミは仕方ないなぁという風にロッキングチェアに手を置いてゆらゆらとあやすように揺らし始めた。


「みっどぉ、俺は…俺達はすごい感謝してるんだ。故郷から離されて辛かった俺達をここまで育ててくれたでしょ?」

「…俺はほとんど何もしてない」


そう、ここまで成長したのは彼ら自身の力。

みどりが一人でやったことと言えば、彼らへの先頭指導と忍び込んだ暗殺者達の始末くらいだろう。

それすらも今は彼ら自身で行えている上に、そもそも俺は彼らの目線で言えば、国王側の人間だ。嫌われることはあっても、好かれることなんてあり得ない。


「ふふ、みっどぉは分かってないなぁ?」

「?」

「俺達はね、みっどぉが大好きだよ」

「…フーン」


嘘だとわかっていても、彼らに大好きだと言われて嫌な気はしない。

少し緩む頬にハッと力を入れ直した。


「らっだぁは特にみっどぉのこと愛してるんだよ〜!そりゃ、もう…この館に閉じ込めちゃいたいって言いだすくらい…」


突然怪談話のように声を潜めて耳元で話したコンタミをゆっくりと振り返る。

形のいいアメジストの瞳が、猫のようにきゅっと細められた。


「ソ、レハ…ドウイウ……」

「そのまんまだよ〜!さ、ご飯にしよ?」


サラリと伸びっぱなしの前髪を撫でられて俯く、らっだぁの言う「愛してる」とは即ち家族愛のことだ。

そう、ただコンタミの言い方が悪かっただけで、みどりがほんの一瞬でも考えてしまったような深い意味はない。

意地悪なコンタミをジロリとひと睨みしてから二人一緒にリビングへと戻った。


「…ふふ」


笑ってサヨナラは難しいかもしれないけど、それまで楽しく過ごすくらいはイイかもしれない。考えたところでキリがない未来のことをうだうだ考えるのは性に合わないのだ。


ー ー ー ー ー

next?→100♡


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コメント

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愛が重いのは素敵ですねぇ……

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